心臓手術で最も頻度の高いこの手術に関しては、日本は先進的な国だと思う。
ヨーロッパ諸国では心臓を止めて吻合することが多いが、日本では心臓を動かしたまま吻合するオフポンプバイパスが施行される率が非常に高い。
ウィーンに来た当初はかなりの差にとまどった。グラフトの選択方法もかなり異なる。東京など心臓外科医過剰の地域では皆競って動脈グラフトを使って完全血行再建を目指す。75歳以上の高齢者にも同様である。オフポンプも宣伝に使われたり、さらに手術ビデオまで提供したり。とにかく日本は凄い。
ウィーン医科大学では通常、心臓を止めて普通に吻合する。希にある1本バイパスの場合はオフポンプとなるが、それ以外でオフポンプが選択されるのはよほどの理由がない限りあり得ない。
グラフト選択の基本は左内胸動脈と残りは大伏在静脈と非常にシンプルだ。日本ならばこれは少数派になるだろう。50歳代などの若年者には両側内胸動脈もしくは橈骨動脈も選択されるが、全体に占める割合は非常に低い。
グラフト種類によらずsequential吻合はほとんどされない。個人的には静脈グラフトでのsequential吻合は技術的にもそれほど高度ではないし、グラフト流量を増加させる良い方法だと思うが。よって、ほとんどの手術はいつも3本バイパスとなる。
もちろんウィーン医科大学の教授陣の技術が低い訳ではない。小切開での手術もあるし、高度なロボット手術もやっている。しかしここでオフポンプの3本バイパスをするとしたら、相当難しいそうに思える。つまり、皆ここのやり方が染みついているから、それと違うことはなかなか受け入れがたいのだと感じる。まず皮切から異なるし。
日本でも初期はかなり皆苦労したと思うが、施設間の競争も激しくいつの間にかそれに慣れてしまった。慣れるとオフポンプは面白いし患者さんにいいと思える。慣れないと何故こんな大変なことをするのかと思うのだろう。ここでは今のところ無理のようだ。普段安定した吻合をする先生でもオフポンプだとかなり緊張しているのが分かる。
話はそれて、今日の手術では内胸動脈を採取した。なかなか教授が現れなかったので取らしてもらった。これも日本ではskeletonizeされる頻度が高いがここではそれは禁忌に近いかもしれない。
先日、非常に珍しく橈骨動脈の採取をG教授から頼まれた。日本では当然のように採取していたし、全く問題のないはずであったが、突然その教授が怒り出した。Skeletonizeは絶対にするなと。結局彼は僕からその仕事を取り上げ自分で採取していた。理由はスパズムの予防だと思うが、僕に言ったことはpedicelの方が技術的に優しく、、云々、、良いのだと。
「日本でほぼ全ての症例にSkeletonizeされた橈骨動脈を使用し、術後血管造影も施行し確認しているが、まず問題ない。採取された前腕も伴走静脈が温存されて好ましいはずだ」と反論したかったが、ぐっとこらえた。
今日は自分の指導教授の手術であったが、しっかりpedicelでごっそり内胸動脈を剥離してみた。日本ではほとんど剥離するチャンスがなかったので何ともいえないが、確かにpedicelはグラフトの機能温存面ではいいかもしれないと直感で思う。理論的には採取に伴う損傷は少ないだろうから。
こんな訳で、ところ変われば価値も変わる。まあ日本は凄いと思う。確かにより高い技術が要求される。
ヨーロッパ諸国では心臓を止めて吻合することが多いが、日本では心臓を動かしたまま吻合するオフポンプバイパスが施行される率が非常に高い。
ウィーンに来た当初はかなりの差にとまどった。グラフトの選択方法もかなり異なる。東京など心臓外科医過剰の地域では皆競って動脈グラフトを使って完全血行再建を目指す。75歳以上の高齢者にも同様である。オフポンプも宣伝に使われたり、さらに手術ビデオまで提供したり。とにかく日本は凄い。
ウィーン医科大学では通常、心臓を止めて普通に吻合する。希にある1本バイパスの場合はオフポンプとなるが、それ以外でオフポンプが選択されるのはよほどの理由がない限りあり得ない。
グラフト選択の基本は左内胸動脈と残りは大伏在静脈と非常にシンプルだ。日本ならばこれは少数派になるだろう。50歳代などの若年者には両側内胸動脈もしくは橈骨動脈も選択されるが、全体に占める割合は非常に低い。
グラフト種類によらずsequential吻合はほとんどされない。個人的には静脈グラフトでのsequential吻合は技術的にもそれほど高度ではないし、グラフト流量を増加させる良い方法だと思うが。よって、ほとんどの手術はいつも3本バイパスとなる。
もちろんウィーン医科大学の教授陣の技術が低い訳ではない。小切開での手術もあるし、高度なロボット手術もやっている。しかしここでオフポンプの3本バイパスをするとしたら、相当難しいそうに思える。つまり、皆ここのやり方が染みついているから、それと違うことはなかなか受け入れがたいのだと感じる。まず皮切から異なるし。
日本でも初期はかなり皆苦労したと思うが、施設間の競争も激しくいつの間にかそれに慣れてしまった。慣れるとオフポンプは面白いし患者さんにいいと思える。慣れないと何故こんな大変なことをするのかと思うのだろう。ここでは今のところ無理のようだ。普段安定した吻合をする先生でもオフポンプだとかなり緊張しているのが分かる。
話はそれて、今日の手術では内胸動脈を採取した。なかなか教授が現れなかったので取らしてもらった。これも日本ではskeletonizeされる頻度が高いがここではそれは禁忌に近いかもしれない。
先日、非常に珍しく橈骨動脈の採取をG教授から頼まれた。日本では当然のように採取していたし、全く問題のないはずであったが、突然その教授が怒り出した。Skeletonizeは絶対にするなと。結局彼は僕からその仕事を取り上げ自分で採取していた。理由はスパズムの予防だと思うが、僕に言ったことはpedicelの方が技術的に優しく、、云々、、良いのだと。
「日本でほぼ全ての症例にSkeletonizeされた橈骨動脈を使用し、術後血管造影も施行し確認しているが、まず問題ない。採取された前腕も伴走静脈が温存されて好ましいはずだ」と反論したかったが、ぐっとこらえた。
今日は自分の指導教授の手術であったが、しっかりpedicelでごっそり内胸動脈を剥離してみた。日本ではほとんど剥離するチャンスがなかったので何ともいえないが、確かにpedicelはグラフトの機能温存面ではいいかもしれないと直感で思う。理論的には採取に伴う損傷は少ないだろうから。
こんな訳で、ところ変われば価値も変わる。まあ日本は凄いと思う。確かにより高い技術が要求される。
そちらは、こんばんはでしょうか?
新着ブログから来ました。
専門用語が多いので、ちょっと解らないのですが、要するに医学会においても、日本人は器用だということでしょうか?
それとも、なんというか、物事の考え方が違うということでしょうか?
おもしろそうなブログなので、過去ログ拝見させてください。
私の「昭和めもりーず」で、日本を懐かしんでいただけたら幸いです。
私のクラスの子どもがつらい思いを抱えていたら、私は、悲しい。
その子と一緒に手をぎゅーと、つないで話を聞きます。。こどものしあわせが私のしあわせでした。
お医者さまの一番大切なものは、何なのかなあ。。と読みながらみつけようと。。思ったけれど、寂しい気持ちが残っています。
人間の器用さは人種によって異なる、ということはないと思います。このバイパス術のみならず、ほかの大動脈手術においても日本(先進病院のですが)の方法は、欧州の一般と比べると手間がかかる手の込んだものが採用されています。手間はかかりますが、患者さんには理論的に優れた方法です。
こちらで開催された学会に出席したとき、世界的に有名なアメリカの教授が日本の理由を「考えからの違い」と発言していました。
実際の医療にはお金が絡んできます。同じ病気に対する治療でも値段がかなり違ってきます。国による保険制度、欧米ではプライベート保険の質、つまりこの人が幾らの支払い能力があるかも、治療選択の重要な要素になってきます。
このような医療経済や医療の効率を考慮にいれて手術をするのが欧米風の考え方だとすうると、それは国民性の違いとなるのでしょうか?
その会場に日本人は自分しかいませんでした。もし日本でそう発現したら反論がくるでしょう。
基本的に患者さんを診察する立場にはないのですが、担当した手術の患者さんの術後の状態を把握したいので病棟を訪ねます。期せずして、ほとんど言葉は通じなくても患者さんから本当に感謝されることがあります。
小生はこちらではいわゆる外人ですし、しかもこちらの感覚ですと実際の年齢より10歳以上若く見られてしまいますが。
なのに本当に感謝して頂くと、言葉では言えない思いがこみ上げてきます。手術をより安全に施行するために、現在自分ができることを常に最大限、実際の現場で維持することが大切と感じています。
やっぱりすばらしいお医者さまなのですね。素敵です。患者さんとの光景。。 私の知らない世界の勉強になります。ありがとうございます。
お身体、お疲れにならないように。。失礼をどうかお許しください。
日本の大学病院は、一昨日も四時間待ちでした。お元気にご帰国できますように。。
外科医は不器用な人はできないと、以前聞いた覚えがあったからです。
日本では現在、国民皆保険制度ですが、所得格差が広がって、そのうち、お金がなくて診療を受けられない人が出てくるのではないかと不安に思っています。
欧米のような保険制度の時代が来るかもしれませんね。
それにしても、今回、私とひだまりさんの2人からコメントが入って、驚かれていらっしゃるのではないでしょうか?
普段お付き合いもすることもないお医者様の、一般人と変わらない感情や本音が伺えて、楽しく拝見させていただきました。
貴方はウィーンに医学留学されるくらいなのですから、将来有望な心臓外科医なのでしょう。
ご活躍をお祈りいたします。
そして、お忙しい事とは思いますが、ブログも続けていただければうれしく思います。
はじめは日記を書こうと思い、次に英語力を向上させるため日記は英語で書こうと考えました。どちらも長続きしないのでブログで始めようなどと考えたのが小生のきっかけでした。
ここにいる間は続けようと思っております。暖かいご声援、ありがとうございました。