毎年、寒くなってくるこの時期にあちこちで訃報が聞こえてくる。今年もここへきて、三遊亭円丈師に続き、漫画家の古谷三敏氏が亡くなった。
ともに小生が学生のときに強烈な思い出として残っている。はじめて円丈師を見た時は、まだ二ツ目で「ぬう生」と名乗っていた。
浅草演芸ホールに行くと、「早く脱げ」と言われる。なぜだと思ったら、めくりを見て「ヌードショー」と間違えられていた・・・なんてやっていた。
独特の空気感がまことにおかしい。笑わずにはいられない雰囲気だったが、当時は寄席では古典をやっていた。
そもそもかの名人円生の弟子だから、そこは当然だったかも・・・だが、彼が真打になってからは新作でグイグイときた。
その意味では同じく先日没した川柳とともに円生の弟子では異端だったのだが、白鳥など着実に弟子も育っている。
さて、そのぬう生を聞いていた頃、ビッグコミックに「寄席芸人伝」を連載していたのが古谷三敏氏だ。
以前記事にしたこともあるが、毎回一話完結の人情噺のような仕立てで、おもしろかっただけでなく、彼の落語に対する造詣の深さや、鑑賞眼の確かさも感じさせてくれるものだった。
個人的には自分の落語の稽古にも大きく影響を与えてくれたと言える。
古谷氏の作品は、うんちくを語るものが多いが、シンプルな画風の中にどこかペーソスを感じさせてくれることと併せて、読みやすいイメージがあった。
ダメオヤジあたりが代表作かも知れないが、個人的には寄席芸人伝とともに減点パパも記憶に残っている。
興味深いことに、東京新聞の記事「筆洗」でも寄席芸人伝が取り上げられている。このコーナーの筆者は落語に相当な造詣のあることがわかっているが、噺家ではなく古谷三敏氏の話で書かれていることが象徴的だ。
古典を取り上げてコミック作品としてまとめあげた古谷氏、逆に古典の大家の弟子でありながら、新作に取り組んだ円丈師。
この二人が同じ頃に亡くなったのは、偶然とは思えない小生である。合掌・・・
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