すぎな之助の工作室

すぎな之助(旧:歌帖楓月)が作品の更新お知らせやその他もろもろを書きます。

美人対決 男女の争い。

2005-07-02 21:46:11 | こばなし。。
いらっしゃいませこんばんは。
小説更新はまだなのですが。す、すみません。

きれーなおねえさんとか、きれーなおにいさん。なかなか、そのお顔には共通項が多うございます。
まあ「きれい」が共通項なんですけどね。

で、ちょっと小話を。お笑い方向、です。

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■ 美人対決 ■ ~きれいなお兄さんとお姉さんとの仁義無き争い

 今日の俺も、頭の先から足の先まで決まっている。
 どうだこの美貌。涼やかな目元、さらさらの黒髪、すっと端整に高い鼻梁に、きりりとした唇。
 待ち行く男女が振り返るなんて日常茶飯事。
 職場でも必ず一人や二人や三人や四人、女の子が外見で落ちて近寄ってくるのさ何もしなくても。
 フフ、罪だな。美しいって。
「おはようございます」
 今日も俺は、美しさと共に出社する。
 そこに応じる声があった。
「おはよう森下君」
 お?
 同僚で同期の孝子だった。
 誰かと思った。ロングヘアをいさぎよくショートに切っていたからだ。
 そして服装も昨日までとは違う。
 ドレッシーな装いの美女だったが、なんてマニッシュな。
 白い開襟シャツから覗く白い肌には大ぶりのシルバー(訂正:ホワイトゴールドよ森下君)のアクセサリーがクールに輝いている。昨日まで拝めた脚線美は明るい灰色のスラックスの中に納められてかなり残ね……いやいや。
 化粧も控えめだし。口紅なんか、無いような(訂正:ベージュよ森下君)
 と、ここまで思って気付いた。

 俺と同じ格好じゃないか。俺はアクセサリー抜きだが同じだ。まあ凹凸も違うが。

 へえカッコイイじゃないか。と、その時は思ったのだが。

「おはようございますう孝子先輩!!」
 新人の真弓がやってきた。
 いつもは、朝一のあいさつはかならず、この俺に対してするものだったが。
 ……なんだと? と、俺は、心中で首を傾げた。
「? おはよう? 真弓ちゃん」
 孝子も、いつもと違う後輩の行動に内心で首をかしげているらしい、反応を見せていたが。
「孝子先輩、孝子先輩、あのう、イメチェンしたんですかー?」
「そうよ? 似合う?」
 孝子がお決まりの返事をした途端、想定外の反応が返った。

「ていうかもう、モロ好みですよう!!!!」

「ハア!?」
 この声は、俺と孝子が同時に出したもので。
「真弓ちゃんまさかそっちのヒト?」
 これは孝子の当たり前な反応。
「そんなわきゃないじゃないですか!! きちっと男のヒトが好きですよ!? でもお、
孝子先輩のその姿見たらッ『イヤー!! こんなキレイな男のヒトって、初めて見たーー!!!』って、感激っていうか、ときめきっていうか!? あっ違うんですよ?! けして男らしいんじゃなくって、キレイなんですよ?」
「……」
 孝子は、とりあえず返す言葉がなかったらしく、
 苦笑して、顔にかかる長い前髪をかきあげた。
「キャアアア!!! イヤ素敵!!」
 それに、真弓のなかの何かが反応して、嬌声を上げた。おそらくそれは、美形な男のしぐさを見てまいってしまう回路なのだと思う。
 俺と孝子は、呆れた。
 少なくともその時は二人とも。

 なんと、同様の反応が、始業時間までの15分間の間に3件発生し。
 業務時間中にオバサン若い子含めて、十時までにさらに4件発生してしまった。
「弱ったわねえ」
 そろそろ黄色い反応に慣れてきた孝子は、肩をすくめて笑顔を浮かべる余裕が出てきた。
「なんか、森下君が困る気持ち、わかっちゃった」
 通りかかった俺を呼び止めて、そう言う。
 いや俺はお前と違って男だから嬉しいが、と言いたい所を我慢して、こう返した。
「何言ってんだよ大もてじゃないか? よかったな」
「あー。いや、女の人にもてても」
 とこぼしての苦笑いも、いかんせんきれいで。
 俺の横を「チョットとおしてくだサイねー?」とすり抜けていったバイトの女の子もしばし見とれてたし。
「やあね?」
 それも目に入ったのか、孝子は、しかし、だんだんとまんざらでもなさそうに笑った。
「……でも、なんか、森下君の言うように、大もてで面白いね。これは」
 ちょっとオトコラシクふるまってみようかしら、などと、言うではないか。

 止してくれと思った。
 ……真剣に。

「孝子さんと森下さん、そうして見ると、きっれいな男の人同士みたいで、すごく素敵」
 里香課長がクスクス笑いながら近づいてきた。

 ちょっと待て、と思った。
 ……真剣に。

「いや、森下君にはかないませんよ。私」
 ちょっと息を吐いて、首を振る仕草もまたなんとも「キレイな男」に相応しく。
「いえね、悪いけれど冗談じゃなくって」
 つい素になって返した里香課長も、……頬を赤らめている。

 コラ!? ちょっとお前ら(女性たち)おかしくないか!? と思った。
 孝子は女だぞ?!

「ホラ、自分たちの姿見て? そう思うから」
 課長が鏡を差し出した。
 冗談にはのらなければと思い、二人して鏡をのぞく。
 そこにはきれいな男が二名。
「……」
「……」
 俺と孝子は言葉を失った。
 たしかに。

 たしかに孝子はきれいだ。それは認める。
 が、
 俺は内心で穏やかならぬものを感じていた。
 このままでは俺の株が奪われると。

 終業時刻。
 会社から出る孝子と俺は、出口のところで一緒になった。
「なんか今日は面白かったー」
「そうか? 疲れなかったか?」
「んー?」
 孝子は、ニヤリと笑った。
「面白かったよ?」
 そして、聞いてはならない言葉を、聞いてしまった。
「森下君が、だんだん焦っていくのがわかったし」

 ―――こいつ確信犯!?

「いっぺんやってみたかったんだよねえ。予想以上の好反応に驚いたけど」
 夏はこれで女の子の視線をアタシに向けさせるよ? と言う鮮やかな笑顔はあきらかに俺への挑戦。
「ふうん。受けて立とうじゃないか?」
 俺も冗談めかしてこう返す。お互いに真剣であることはわかった上で。
 お前なんかメじゃない。自分の方がきれいだと。

 ということで、
 その会社では夏の間中、きれいなお兄さんとお姉さんとの美人対決が続きましたとさ。
 暑気払いの酒盛りでは、きれいなお兄さんが浴衣美女に化けて、男の子とオジサンのハートを釘付けにしましたとさ。

 秋になり、孝子さんが再び普通のきれいなお姉さんに戻ると。
 森下君はその脚線美と愁いのある秋色メイクに降参して投降したとかしないとか。。

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