がん検診で「要精密検査」と判定される人で実際にがんが見つかる人は数%。
多くが健康にもかかわらず、一時期「がんの疑い」という不安にさらされる。がんのタイプによってはまれに過剰な治療も強いられる。
数ミリの小さながんが見つかるようになって、過度な検診の「不利益問題」が浮上してきた。
国内で早くからがん検診の不利益問題を指摘してきた、国立がん研究センターの斎藤博・検診研究部長は「画像の解像度がよくなるなど検診機器が進歩して、がんを発見する力は上がった。ただ、小さながんや前がん病変がたくさん見つかるようになったといっても、検診の有効性がよくなったとはいえない。むしろ過剰診断の温床になっている」と語る。
5年生存率が20%前後とがんの中でもとくに恐れられている肺がんでも事情は同じ。個人型検診ではあるが日本独自のコンピューター断層撮影装置(CT)検診が普及、数ミリレベルのがんや、がんかどうか判別しづらい「がんもどき」がよく見つかる。
すぐに切除せず、定期的にCT検査を受け経過観察するが、その都度、エックス線による被曝(ひばく)の心配もある。
国のがん検診に関する検討会は約3年前、「肺がんのCT検診は過剰診断による受診者の不利益が大きい」との見解をまとめた。
これまでの医療保険制度の弊害もあり、日本の医療現場は検査が好きだ。どこの病院もCTや磁気共鳴画像装置(MRI)を備え、検査至上主義がはびこる。
がん克服へ早期発見は近道だが、陽電子放射断層撮影装置(PET)のようなハイテク機器を使った検診は日本や韓国などにしかない。欧米でがん検診といえば、乳がん、子宮頸(けい)がん、大腸がんぐらいだ。
この10年で、患者の納得を得るまで医師が治療法などを説明する「インフォームド・コンセント」が根付いた。
国立がん研究センターの森山紀之がん予防・検診研究センター長は「がんごとにどんな検診も必ずメリットとデメリットとがある。受診者にこの両方をきちんと伝え、理解してもらわなければならない」と話す。
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