行きつけのバイクショップはホンダの看板を出していた。
XL125Sに乗ってる時からずっとお世話になっていたんだけど、
オヤジさんが亡くなって息子さんが継がれた。
そのうちホンダの看板はハーレーダビッドソンの看板に替わった。
ハーレーダビッドソンなんて高価な外車には一生縁は無いものだと思っていたのだけれども、
見慣れるというのは恐ろしいもので、ショップに通っているうちに高価だと思っていた金額も案外普通に思えてきた。
そしてある日、ハーレーダビッドソンを注文してしまった。
ハーレーダビッドソン・スポーツスター883ハガー
ハーレーダビッドソンのラインナップの中でスポーツスターはその名の通りスポーティーなシリーズなんだけど、このハガーはローダウンした車高とアップハンドルによるホースバックライディングスタイルでツアラーのエントリーモデル的な位置だったのだろうか。
短足君にも手が出せそうな低いシートのモデルだったのは此奴を選んだポイントだった。
ショップから納車されてすぐに高岡まで駆った。
メチャクチャ重いクラッチは握力をあっという間に奪っていき、
入らないニュートラルギアは信号待ちの間ずっとその重いクラッチを握っているしか無く、更に握力を奪い左手はパンパンになった。
国道高架橋の路面のわずかな継ぎ目の段差で派手にお尻がジャンプするリアショックはただのバネにしか思えなかった。
往復僅か60㎞程度の走行だったけど、往路の途中で「なんてバイクを買っちゃったんだ!!」って唖然とした事を覚えている。
それでも1000㎞ほど走行するとそんな荒い作動系も少しづつこなれて来て段々に乗り易くはなった?(慣れただけかも知れないけど)
忘れちゃったけど、何か初期不良があってクレームで修理してもらったり、
最初のオイル交換では砂鉄みたいな金属のカスがいっぱいドレンボルトの磁石に付いていてビックリした。当時のアメリカの金属加工精度なんてそんな程度だったんだろう。
とかくいろいろと世話のやける奴だった。
とはいえ883㏄って排気量はやっぱり250㏄とは比較にならない。
よくスポスタ1200㏄の加速を表現して「ドッカン加速」って言うけど、此奴もエンジンの爆発一発一発のエネルギーがそのままタイヤの回転につながって地面を蹴りながら加速していく感じがあって、883でも十分に「ドッカン加速」に思えた。
エンジンの鼓動感は最高で、走っていてもアイドリングしていても気持ちよかった。
どちらかと云えば短所の数が多いバイクだけど、それらの短所をカバーして余りあるテイスト(味わい)は間違いなくある。
それらは、カタログでは解からないし、国産車の多くが忘れてしまったモノだった。
このバイクには結局一年しか乗らなかった。
理由は次のバイクの項で書こうと思うけど、結果的にいうと此奴はとてもイイ奴だった。
還暦を過ぎた今、改めてまた乗ってもイイなぁって思えるバイクだった。