
恵比寿映像祭では、第1回以来、「映像とは何か?」という問いに対し考えうる答えを、毎回ひとつのテーマとして掲げ、企画の出発点としてきました。しかし、日本社会そのものをも揺るがす大災害に見舞われてまだ一年足らずしかたたないうちに、どのような祝祭の場を創出するかを思い描くことは、容易な作業ではありませんでした。人々の感情や精神をおきざりにするほど圧倒的な映像、そして、映像を成り立たせている物理的な基盤の脆(もろ)さの露呈――、そうした現状に直面するなかから、ようやくたどり着いた唯一の手がかりが、「映像はフィジカルなもので(も)ある」という、考えてみればあたりまえの答えでした。今だからこそ、シンプルすぎるほどの原点に立ち返ることからはじめたい。そしてそこからなら、逆にもう一度、映像の持つ複雑で多様な可能性に目を向けなおすことができるのではないかと考えました。
第4回 恵比寿映像祭では、総合テーマ「映像のフィジカル」のもと、映像を成り立たせている物質性(フィジカリティ)に光をあて、あえて映像の即物的な面を入り口に、具体的な作品を通じて、映像の豊かさと奥行きにあらためて迫ります。映像で「何が」描き出されているかではなく、映像そのものが「いかに」作られているか――、主題や文学的なメッセージ性を問う前に、まず映像を成り立たせている技術や技能、道具や動力、流通の仕組みといった側面に目を向けます。同時に、映像の中でしかありえない空間・時間の認識や、映像が身体へ及ぼす作用といった、映像ならではの特質を生かした表現を深く味わう手がかりを提示します。また、映像をいかにして遺し継承するかという今日的な課題について、抽象的な問題だけでなく、物理的な作業や設備、技術、あるいは経済性といった現実的な諸問題を含め議論し、あり得べき方向性を探る機会にもしたいと思います。
恵比寿映像祭のフェスティヴァルとしての場の広がりを活かして、作り手、つなぎ手、受け手が 、ともに集い楽しみながら、過去から現在における映像のフィジカル面を、さまざまな角度から検証し、未来の映像表現にむけた総合的な「体力作り」をする機会となればと願っています。

あまりにたくさんの映像作品があって ちょっと疲れた。 また、行きたい。