今回はオールディーズです。
心に伝わるback Musicとして
記事を書いてます。
7作目は
ジョーコッカーとジェニファーウォーンズのUp where we belongです。
1982年 リチャード・ギア主演 アメリカ映画
「愛と青春の旅だち」の主題歌です。
♪~ 愛と青春の旅だち ~♪
(パソコンの方はCtrlキーを押しながら下記画像をクリックして下さい。曲が流れます)

(映画 愛と青春の旅立ち 編)

(ジョー·コッカーとジェニファーウォーンズ 編)
Y美さんと僕は、同じS蘭高校を受験した。
僕たちは、中学3年のときの学年トップの
成績で競っていた。
僕が1番の時は、Y美さんが2番。
Y美さんが1番の時は僕が2番。
卒業式の日、Y美さんが僕に言った。
「6対4」
「はっ?」
「1位を取った数。あたしが6回で、K次が4回」
「へえ…」
「あたしの勝ちよ」
Y美さんは、それだけ言って背を向けた。
「高校受験頑張ろうね」と僕が言うと、Vサインを返した。
Y美さんのスカートは、他の女子より少し長い。
勝気なうしろ姿に、春の埃が舞いあがった。
僕たちの受験は、明暗を分けた。
僕が合格して、Y美さんが不合格だった。
信じられないのは僕だけではなく、学校の先生も驚いていた。
彼女の統計によると、僕より頭がいいはずなのに。
その日の体調や運もあるかもしれない。本番に弱いタイプなのかもしれない。
Y美さんがどれだけ落ち込んでいるか、想像すると僕も辛かった。
そんな中学最後の春休み、Y美さんが突然訪ねてきた。
「あたしコーヒーダメだから、紅茶かホットミルクにして」
と言いながら、上り込んできた。
「あたし、M高に行くことにしたの」
「へえ」
「別に落ち込んでないよ。M高、学費免除だし、制服も可愛いし。高校生になったらスカート短くするんだ。あたし、けっこう足細いよ」
「それを言いに来たの?わざわざ家まで」
「ちがうよ。バレンタインのお返しもらいに来たの。今日はホワイトデーでしょ」
「え?Y美さん、チョコくれたっけ?」
「あげたじゃん。塾の帰りにチロルチョコ1個」
「ええ~!あれって、ただのおやつじゃないの?お返しって言われても…煎餅でいい?」
「お煎餅なんかいらない」
「じゃあ、買ってこようか、コンビニで」
「いらない」
「じゃあ…どうしよう…」
「いっしょにプリクラ撮って」
「プリクラ?」
「高校別になっちゃったし、もう会うこともないかもしれないでしょ」
よく見ると、Y美さんはちょっとおしゃれをしていた。
僕たちは、駅前のゲームセンターへ行った。
ふたりとも、こういう場所は慣れていなくてプリクラも初めてだったから、ずいぶんと失敗した。
かなり引きつった顔だったけど、Y美さんは満足そうにそれを持って帰った。
「ありがと。K次のおかげで楽しい3年間だったよ」
初めて見るような、Y美さんの笑顔だった。
何か言おうと思ったけど、言えなかった。
Y美さんと別れた後、胸が締め付けられるように痛かった。
その気持ちが「恋」であることを、僕は3年後に知ることになる。
同じ大学のキャンパスで再開したY美さんは、ちっとも変っていなかった。
「M高、1番で卒業したよ」
「さすがY美さんだね。やっぱりすごいや」
Y美さんは、手帳からあの日撮ったプリクラを取り出した。
「これのおかげで頑張れた」
そう言ったY美さんの笑顔は、また僕の胸を締め付けた。
「また撮ろうね、プリクラ」
そう言って手を振った彼女のスカートは、やっぱり他の女子たちよりも長かった。
あの頃より少し成長した僕は、Y美の手を掴んで思わず抱き寄せた。
「これからは一緒に頑張ろう」
Y美は、目を丸くしながら頷いた。
「よ…よろしくお願いします」
新しい季節が、また始まった。
心に伝わるback Musicとして
記事を書いてます。
7作目は
ジョーコッカーとジェニファーウォーンズのUp where we belongです。
1982年 リチャード・ギア主演 アメリカ映画
「愛と青春の旅だち」の主題歌です。
♪~ 愛と青春の旅だち ~♪
(パソコンの方はCtrlキーを押しながら下記画像をクリックして下さい。曲が流れます)

(映画 愛と青春の旅立ち 編)

(ジョー·コッカーとジェニファーウォーンズ 編)
Y美さんと僕は、同じS蘭高校を受験した。
僕たちは、中学3年のときの学年トップの
成績で競っていた。
僕が1番の時は、Y美さんが2番。
Y美さんが1番の時は僕が2番。
卒業式の日、Y美さんが僕に言った。
「6対4」
「はっ?」
「1位を取った数。あたしが6回で、K次が4回」
「へえ…」
「あたしの勝ちよ」
Y美さんは、それだけ言って背を向けた。
「高校受験頑張ろうね」と僕が言うと、Vサインを返した。
Y美さんのスカートは、他の女子より少し長い。
勝気なうしろ姿に、春の埃が舞いあがった。
僕たちの受験は、明暗を分けた。
僕が合格して、Y美さんが不合格だった。
信じられないのは僕だけではなく、学校の先生も驚いていた。
彼女の統計によると、僕より頭がいいはずなのに。
その日の体調や運もあるかもしれない。本番に弱いタイプなのかもしれない。
Y美さんがどれだけ落ち込んでいるか、想像すると僕も辛かった。
そんな中学最後の春休み、Y美さんが突然訪ねてきた。
「あたしコーヒーダメだから、紅茶かホットミルクにして」
と言いながら、上り込んできた。
「あたし、M高に行くことにしたの」
「へえ」
「別に落ち込んでないよ。M高、学費免除だし、制服も可愛いし。高校生になったらスカート短くするんだ。あたし、けっこう足細いよ」
「それを言いに来たの?わざわざ家まで」
「ちがうよ。バレンタインのお返しもらいに来たの。今日はホワイトデーでしょ」
「え?Y美さん、チョコくれたっけ?」
「あげたじゃん。塾の帰りにチロルチョコ1個」
「ええ~!あれって、ただのおやつじゃないの?お返しって言われても…煎餅でいい?」
「お煎餅なんかいらない」
「じゃあ、買ってこようか、コンビニで」
「いらない」
「じゃあ…どうしよう…」
「いっしょにプリクラ撮って」
「プリクラ?」
「高校別になっちゃったし、もう会うこともないかもしれないでしょ」
よく見ると、Y美さんはちょっとおしゃれをしていた。
僕たちは、駅前のゲームセンターへ行った。
ふたりとも、こういう場所は慣れていなくてプリクラも初めてだったから、ずいぶんと失敗した。
かなり引きつった顔だったけど、Y美さんは満足そうにそれを持って帰った。
「ありがと。K次のおかげで楽しい3年間だったよ」
初めて見るような、Y美さんの笑顔だった。
何か言おうと思ったけど、言えなかった。
Y美さんと別れた後、胸が締め付けられるように痛かった。
その気持ちが「恋」であることを、僕は3年後に知ることになる。
同じ大学のキャンパスで再開したY美さんは、ちっとも変っていなかった。
「M高、1番で卒業したよ」
「さすがY美さんだね。やっぱりすごいや」
Y美さんは、手帳からあの日撮ったプリクラを取り出した。
「これのおかげで頑張れた」
そう言ったY美さんの笑顔は、また僕の胸を締め付けた。
「また撮ろうね、プリクラ」
そう言って手を振った彼女のスカートは、やっぱり他の女子たちよりも長かった。
あの頃より少し成長した僕は、Y美の手を掴んで思わず抱き寄せた。
「これからは一緒に頑張ろう」
Y美は、目を丸くしながら頷いた。
「よ…よろしくお願いします」
新しい季節が、また始まった。