興味のある本は新品も中古もよく購入します。
ただ、ほとんどの本は最後まで読んでいなかったり、気になる一部分だけ読んで終わっています。
そこで、最初から最後まで読もうとするから、続かないんだなと思いましたので、気になるところだけを読むチョイ読み感想文を始めます。
『森の動物・昆虫学のすすめ』西口親雄・著
著者の西口親雄さんは東京大学・東北大学の先生で、東京大学時代は伊豆・北海道で、東北大学時代は宮城県鳴子にある東北大学農学部付属演習林で研究をされていました。
西口さんの本は、どれも面白いです。この本は2冊目です。
1冊目に読んだのは『森のなんでも研究』でした。
本文も読みやすくて面白いですが、スケッチや図説も興味深いです。
では、『森林インストラクター 森の動物・昆虫学のすすめ』のチョイ読み感想です。
チョイ読みのつもりですが、結局全部読んでしまいました。
面白い所はたくさんありましたが、一つだけ挙げます。
「松くい虫」に関するところです。
「松枯れ」は松が突然枯れてしまう被害で昭和に多発するようになり問題となりました。
松につく害虫は色々いるのですが、マツノキクイムシやマツノマダラカミキリなどの甲虫を松くい虫と言います。
これらの幼虫は孵化したあと木の内部を食べて成長しますが、樹木自体を枯らすほどの力はなく、樹木自体にも抵抗力があり枯れることは基本ありません。
では木が枯れてしまう本当の原因は何か。
この松枯れの原因となるのは、「マツノザイセンチュウ」という体長1㎜弱の線虫であることが昭和46年に分かりました。
マツノザイセンチュウは木から木へと自力で移動することができないため、マツノマダラカミキリに潜り込んで健康な松に次から次へと広がっていき多くの松を枯らしました。
杉やヒノキにも害虫が発生して商品価値を著しく下げてしまいます。
では広葉樹はどうかというと、様々な昆虫が寄生して被害を与えますが、松くい虫のように枯らしてしまうことはないそうです。
松や杉の針葉樹は傷がつくと殺菌・殺虫作用のあるテルペンを含む樹脂で防衛する。それに対して虫の方も毒性の微生物をともなってアタックしてくる。
コナラやヤマハンノキなどの広葉樹は虫に傷つけられてもカルスを形成して傷を治癒していく。
広葉樹は虫を殺すのではなく、虫に耐えて共存していくという作戦のようです。
これを読んで感じたことは、人間も一緒なのではないかと思いました。
コロナウィルスもワクチンで徹底的に抑えるのではなく、熱や痛みに耐えてやり過ごし共存していく方が賢明なのではないかと思いました。
ガンの治療もです。ガン細胞はもともと自分の細胞が肥大するなどして、悪さをするものです。
ガンも抗がん剤で徹底的にやっつけようとすると、その強力な作用で人体にも悪影響が出ます。
程度にもよりますが、どこかで落としどころを見つけてガンも自分の一部と認識して共存していくしかないのだなと思いました。
やはり大自然は多くのことを教えてくれます。
異物を徹底的に取り除くのではなく、お互いに歩みよる多様性のある社会構造が長く続く秘訣なのかもしれません。