雪ではなく雨が降る。
新橋から銀座の資生堂ギャラリーへ。



18th shiseido art egg 開催中。
シセイドウアートエッグは、2006年に始まった公募プログラム。
新進アーティストによる「新しい美の発見と創造」を応援する。
18回目の今回は、応募総数291の中から、大東忍・すずえり・平田尚也の三名が選ばれた。
3月5日~4月6日は大東忍展。
「不寝の夜(ねずのよる)」。



大東忍(1993~)は愛知県生まれ。秋田県在住。愛知県立芸術大学美術研究科博士前期課程油画・版画領域修了。
大東は秋田の新屋地域の風景を主な題材にして木炭画を描いている。
大東は見知らぬ過疎地や住宅地を歩き、先祖を供養する行事でもある「盆踊り」を踊ることで、そこに佇む気配を読み取り、風景の中に残る人々の営みや在処を探求してきたという。







通り過ぎてきた野暮ったい風景に、わたしたちや死者の営みの痕跡を置き去りにしてきた。
それらは眠ることもなくその場に佇んだままだ。
そんな痕跡たちを名付けないまま漠然と読み、どうにか語ること。
それは供養のかたちのひとつだといえる。
私は風景を供養する。
と、大東は語る。
作品のタイトル「不寝の夜(ねずのよる)」は「寝ずの番」からとったという。
寝ずの番では夜通し蝋燭の火を絶やさず故人のあの世への道を照らす。
こことここではない場所を行き来するように、普段は触れることができない境界に接近する。
そういったあわいでの往来がおこなわれるのは夜だ。
夜にはあらゆるものが影に包まれて匿名化され、形が曖昧になることで物事の存在が直観的に感じられるようになる。
それらに耳や体を澄ませば、夜の影がはらんでいた多くの痕跡、予感が声として語り出す。
わたしたちが寝ている間、「夜」が眠ることはない。彼らはそこに佇み、語り続ける。
「不寝の夜」を架け橋に、風景を渡る。
と、大東は結ぶ。

最近の大東は、木炭画と映像と写真をゆるやかに接続しているようだ。
私のコンデジでは捉えることのできないモノクロームの空間がそこにある。

