なんとなく曇りの上野恩賜公園。
お!
雪竹太郎さんだ。
上野の森美術館「石川九楊大全」。
前期【古典篇】の会期は6月8日~30日。
後期【状況篇】の会期は7月3日~28日。
会場内は入口も含めてすべて撮影禁止。
書を世界的大スケールの表現に深化させた石川九楊(1945~)の大個展。
石川は福井県生まれ。京都大学法学部卒業。京都精華大学名誉教授。
5歳から書塾に通い、大学在学中は学生書壇で活躍。1978年に書に専念するために石川九楊研究室を設立した。
前期【古典篇】遠くまで行くんだ。
既成の書的情緒を否定・拒絶してきた九楊が、なぜ古典に挑んだのか。
第一室:天は暗黒。地は黄色。宇宙は広く茫漠である(千字文)
第ニ室:長安に男児あり。二十にして心すでに朽ちたり(李賀)
第三室:たとへば人を千人殺してんや、しからば往生は一定すべし(親鸞)
第四室:世の末なれど、仮名のみならん今の世はいと際なくなりたる(源氏物語)
第五室:そこはかとなく書きつくればあやしうこそものくるほしけれ(徒然草)
これら古典の世界を書であらわす。
いわゆる書とはかけ離れている。
甲骨文字のようにもみえるし、ヒエログリフのようにもみえるし、現代美術のようにもみえるし、楽譜のようにも設計図のようにもみえる。
しかしグッと伝わってくる。
石川九楊は書に通じるための法則を九つにまとめる。
「書通九則」。
第一則:文字の点画は、〈形〉ではない〈触覚〉のかたまり
第ニ則:文字は、点画〈ベクトル〉の集合体
第三則:文字と行は〈重量〉のかたまり
第四則:文字の形象は関係の総和―同じ文字は二つとない
第五則:文字を書くのではない。新しい余白〈世界〉をつくる
第六則:起筆(始まり)と終筆(終わり)に注力せよ
第七則:つくる送筆とできる送筆の違いを知れ
第ハ則:一字が万字—最初の文字の第一画の起筆がすべてを決定する
第九則:一人称臨書で書をつかまえよ
書も、やがては様々な分野の芸術と融合していくのであろう。
と、私はざっくりと考えていた。
しかし、どうもそれは安直な考え方だったのではないかと思ったのであった。
明日の月は上弦。