「カウガール・ブルース」トム・ロビンズ
ハウデイ(やあ)!
アメーバ→ダコタで一番素敵な屋外便所→親指。
引用はウィリアム・ブレイクからロイ・ロジャーズまで。
88章:ピアノの鍵盤と同じ数になったと報告。
104章:脳と親指の対話。
100章:とりあえず乾杯。。。
自由な書きっぷりに感服。
そこここに流れる哲学に感涙。
思わず興奮のロデオな文章でお送りする哲学ヒッチハイク。
“もし一羽半の雌鳥が一日半に一個半の卵を産むとすれば、
木製の義足をもつ猿がキュウリのピクルスから種を蹴り出すのに、
何日かかるでしょうか?”
全体重の四パーセントを占めている親指を持つシシー。
そう──ヒッチハイクは彼女の天職であった。。。
そんなシシーに夢中なイェール大卒のモホーク・インディアンのジュリアン。
男の行動と女の匂いを軽蔑している伯爵夫人(カウンテス)の依頼で、
ブギが終わり、ウギが始まるラバーローズ牧場へ向かうシシー。
そこでは、個性的なカウガール達が好き放題に振舞っていた。。。
カウガールになりたい子供がいたら、それは実現されなくちゃいけない、
という信念を持つボナンザ・ジェリービーン。
男性を敵視する好戦的な鞭使いデロレス・デル・ルビー。
女性が再び主導権を握る為に、女性的なやり方を理想とするデビー。
牧場を見下ろすサイウォシュ山の洞窟に住む老隠者チンク。
‘時計仕掛け’を中心に営まれる‘時計の民’の考える世界とは?
卵が先か?鶏が先か?
世界が先か?自分が先か?
親指が先か?ヒッチハイクが先か?
時間と移動。
他者と自分。
生まれと価値観。
ホラ話的空間に流れる鋭い指摘と冷静な感覚。
偏狭な登場人物達が闊歩する中、
全編に散りばめられたメッセージ。
クレイジーな文章で煙に巻かれつつ味わう世界観。
高尚さとは無縁の、下品さが心強い思想書。
時に淫らにお届けする通俗哲学ファンタジー。
(人間なんて、所詮、大便をしSEXを楽しむ考える猿でしかないってね。
って、それボノボ~!!)
現実とジレンマ。
答えは無くとも、真実は在るのさ。
親指を取り巻く肯定と否定。
アイデンティティ、生き方に及ぼす肯定と否定。
‘あるべき’ではなく、‘そうある’そのままを受け入れる──。
‘始まり’のものがたり。
ハッハッ、ホーホー、ヒーヒー!
「百年の孤独」に「アメリカの鱒釣り」が寄り添うと、
カウガールのブルースが聴こえてくる♪
“病気だから休むという電話をする人のことなら、
きみは聞いたことがあるだろう。きみ自身、病気だから休む
という電話をしたことが何度かあるだろう。しかし健康だから
休むという電話をすることを、きみは考えたことがあるだろうか?
それはこんな具合だ。きみはボスを呼び出して、こう言う、
「ねえ、ぼくはここで働き始めてからずっと病気だったんだけど、
今日は健康になったんで、もう働くのはやめるよ。」これが健康
だから休むという電話である。”
名訳だと思うんですけど?
なぜなら、どんな文明も自然に暴力を加えずには成立しないこと、
文明が地球全体をしだいにセメントとブリキ造りの味気ない血の通っていない施設に
変化させていること、最初はひじょうによい理想主義的な動機で始まったことでも、
ことごとく暴力や、戦争や、人間を苦しめるものに必然的に変わってしまうこと、
さらに、平均的な人間は天才たちの助けなしには生活を持ちこたえることが
できないこと、それにもかかわらず平均的な人間は天才の不倶戴天の敵であり、
いつもそうならざるをえないこと、そのほか、上に述べたようなこと以外に何であれ
宿命的に解決不可能なこの世界のいろいろな矛盾を、私たちは日常、眼にしている
からである。 「地獄は克服できる」ヘルマン・ヘッセ
われわれは堕ちた天使ではなく進化した猿である。
猿は武器を使って殺しをする。してみれば何を驚くことがあろう?
殺人や、虐殺や、ミサイルや、和解を知らない敵軍同士のことで。
一方、効果のほどはともかく、われわれは条約を結ぶ。まれであるにしても
調和の賛歌を歌う。しばしば戦場に変わるとしても穏やかな田畑を持つ。
めったに実現しないけれども夢を抱く。人間が奇跡であるのは深く堕ちたからではなく、
高くのぼってきたからだ。われわれが星々のあいだで知られるのは屍によってではなく、
詩によってである。 byロバート・アードリー 「驚異の百科事典男」A・J・ジェイコブズ