「冷血」カポーティ、
「犯罪」フェルディナント・フォン・シーラッハ、
「ブラッド・メリディアン」コーマック・マッカーシー
モ~ン。
この三冊で、何か見出せるかと期待。
う~ん。
見出すとか甘かったわ。
むしろ陥った。。。
混乱と当惑に。
まんまとルツボに嵌った。
凶暴なのと、残虐なのは別もの。
残虐性とだらしなさは最悪の相性。
気まぐれに繰出される暴力的な残虐さは。。。
もう、ダメ。
耐えられんて。
「冷血」
1959年にアメリカの農村で起こった一家四人惨殺事件を描くノンフィクション・ノベル。
「犯罪」
弁護士である作者が実際に遭遇した事件の数々をヒントとして執筆したフィクション。
「ブラッド・メリディアン」
十九世紀半ば、アメリカ南西部とメキシコで行われたインディアン虐殺を、部分的に史実に基づき描く。
「冷血」
殺人罪で絞首刑となった二人の犯人、犠牲者、村の人々などの生活、性格などが丹念に描かれる。
情景描写や心理描写など、文学的に完成度の高い作品。
なので、暗雲たれこめる内容にも関わらず読み進めやすく読み応えあり。
一家が選ばれた経緯に愕然。
事件の成り行きにボーぜん。
最後の一歩を超えた理由が、相棒になめられないようにって?
この取り返しのつかない愚かしさ。
殺人を計画する事と、実行する事の間には確かにラインが。
でも、この場合なんか違うぞ。
縛られて抵抗出来ない人を撃つという行為の卑劣さが置いてきぼり。
殺すか殺さないかだけを問題にする若者ふたり。
お互いに後に引けなくなるお粗末さ。
だらしなさと悪知恵、無関心と弱さ、見栄と傲慢さと自意識過剰。
それぞれふたり分、悪い方向にミックスされ助長され辿り着いた先は絞首台。
暴力に日常的に接していると、暴力行為を自分と切り離し、俯瞰してみるようになる──。
実際に手を下したペリーは、育った環境に恵まれず、
劣等感と妬みに苛まれ、世界を憎みつつも自分を理解してもらいたいと渇望する日々。
たいていの若者は、思春期に似たような感覚に陥ると思うんだけど。。。
まるで処刑のような殺害方法が、
世間に対する復讐のようで、
暴力そのものの恐ろしさよりも、殺意の強さが恐ろしい。
「犯罪」
いつ犯罪に巻き込まれるかなんて分からない。
加害者なのか、被害者なのか?
─それが問題だ。
けどぉ~、それこそ誰にも分からない訳で…
短編のミステリーとなると、やはりネタ勝負になる為。
どーも、作家の性格の悪さが前面に押し出される気がする。
たいてい読んでて、そんなぁ~という思いをする事が多い。
その点、本書はバランスが良いので偏った印象は受けず。
で~も~。
文章が簡潔なせいもあると思うが、
登場人物に対する距離感が感じられるのが、どうも、、、
どの話もギュッと凝縮されてるのは分かるが。
(というか逆に長編にもなりそう。)
あまりにも無駄が無さ過ぎて、居心地が悪い。
ま、優等生的な息苦しさだけども。
「ブラッド・メリディアン」
んむ。
ページをめくれどもめくれども暗い。
充満する陰気な雰囲気に、読み進む気が失せ、いったん挫折。
ひたすら体温が、人肌が、恋しくなるも。
気を取り直して、再チャレンジ。
作者の落ち着いた筆の進め方が─
作家の冷静さが、恐ろしさを倍増させてるとしか思えん。。
そして。
判事と呼ばれる巨漢の男が、悪魔にしか見えん。
『D.N.A』でのマーロン・ブランド(ドクター・モロー役)の姿がちらつく。
さらにジャバ・ザ・ハットがサブリミナル効果で邪魔してくる。
‘頭皮狩り隊’が名前そのものズバリの凄惨さ。
徐々に、相手構わずの血みどろヴァイオレンスに。
行き当たりばったりの残虐行為、
敵も味方もあったもんじゃない野蛮さに
げんなり、げっそり。
読み終わったあとに、自分はやつれたんじゃないかという錯覚に陥る。
酷いけど、スゴい本。
あとがきには、ニーチェだの『白鯨』『闇の奥』だのが引き合いに出されてますが。
個人的にはエドガー・アラン・ポーとか『ファウスト』をピカレスク仕立てにした感じに思える。
自らの命を賭け、命をもてあそぶという究極の魔にとりつかれ、
他人を信用しない人物が、生き残ろうとすると、こうなるんか?
必要無い殺しはしない主義の主人公には、優しさよりも、生命に対する憐れみを感じる。
確かに戦争において、誰が死に誰が生き残るかなんて誰にも予想も約束も出来ない。
戦争は究極の賭けであり、勝ち負け、生き死には運命によって導かれる。
故に、戦争は神である─。
命を奪うか生き残るかの道を与えることになるのだから、、、
身も蓋も無いがな~。
繰り返される戦争に対して、人類に疑問を持つ必要もないってか。
学ばないんじゃなくて、学べないって?
だって、賭けだもの。
相手を出し抜く方法は学べても、回避する道なんて無い?
んな、殺生な~。
運命という大きなうねりの中で、魔が導く小さなうねりを目撃する羽目になる一冊。