一条きらら 近況

【 近況&身辺雑記 】

『黙秘』 (サスペンス特別企画・TBS)

2011年11月18日 | テレビ番組
 たまに、気が向くと、テレビ・ドラマを録画する。番組情報を見て選ぶのは、タイトル、ストーリー、キャスト、90分以上の単発ドラマが条件。年に3本ぐらい録画するが、ファーストシーンを見て、消去することが多い。最後まで見るのは、年に1本あるかないかという感じ。昨年は1本もなかった。今年は、このドラマ『黙秘』だけ、最後まで面白く見た。2時間足らずのサスペンス・ドラマだが、5年前の再放送である。
 演出は長谷川康。脚本は安井国穂。キャストは、渡部篤郎、佐久間良子、他。
 主人公は、横浜地裁の矢沢判事。東京高裁判事の娘との見合い話が進み、肉体関係のある書記官の美里に手切れ金を渡して別れる。
 3年前に矢沢判事が、強制わいせつ罪の判決を言い渡した男から、美里との関係をネタに強請られる。
 越後湯沢の旅館で働く美しい仲居の広恵が、深夜、ブルーシートに包んだ死体を川へ投げ込む。その後、広恵は同棲していた中嶋の殺害容疑者となり、警察で完全黙秘を続ける。
 新潟地裁へ異動になった矢沢判事は、広恵の事件を担当する。裁判の日、黙秘を続けていた広恵が、中嶋の殺害を証言。矢沢判事は冷静な口調で、審理の中止と裁判の無効を宣言。被告人の広恵は、昔、父の教え子と駆け落ちした、自分の母親だった。職務上、肉親を審理担当することはできないと法律で定められている。
 矢沢判事を強請っていた男が、書記官の美里に近づき、共に矢沢を苦しめようという話をする。美里は、別れても愛している矢沢判事のために、男を殺害しようとして未遂に。やがて矢沢判事は、美里の愛の一途さ、母が夢中で男を愛した心情をようやく理解し、判事の職を捨てて美里の弁護と彼女との結婚を決意する。
 ──というようなストーリーで、テレビ・ドラマの脚本と演出の素晴らしさに、これほど感動したのは久しぶりだった。判事役の渡部篤郎も良かったし、夫の教え子である男との不倫に走り、愛を貫き通した広恵役の佐久間良子が、とても素晴らしかった。見終わった後、再び番組情報を表示させて、脚本、演出などスタッフの名前をもう一度見たほどだった。
 そのテレビ・ドラマを見ながら、何度か、瞬間的にかすめたのが、友人の息子さんの○○ちゃん。ドラマの主人公と同じ判事、と言っても、まだ若いから判事補である。民事裁判の見学のため、傍聴に行った日のことを思い出した。裁判はすでに始められていて、法廷に入ると、○○ちゃんの姿が、すぐ眼に入った。中央の裁判長席の右陪席にベテラン判事補、左陪席に新人判事補と知っていた。黒い法服に身を包んだ○○ちゃん。何て素敵な美青年に成長したのだろうと、感激のあまり、私は一瞬、胸が詰まった。電話で初めて声を聞いたのが、○○ちゃん5歳の幼稚園児の時。2度目が小学6年生の時。30年近くの友人との付き合いで、私のほうから急用で連絡したのは、その2度だけ。電話に出た○○ちゃんの「はいっ、◇◇です!」と名乗った元気いっぱいの可愛い可愛い声が、今でも耳に焼きついている。○○ちゃんが司法試験を受けると聞いた時から、毎晩、就寝前に、
(どうか○○ちゃんが司法試験に受かりますように)
 と、心の中で呟き、手を合わせてお祈りした。3年目に合格した時、本当にうれしくてたまらなかった。もう、ずっと以前から、友人と○○ちゃんの話をし、ふとした時に○○ちゃんのことを考えると、まるで友人の息子さんではなく、自分の息子みたいな錯覚に陥ってしまうことがあった。その後、○○ちゃんがアメリカへ国費留学したころも、友人から○○ちゃんの様子を聞くのが楽しかった。そんな話を聞いた後は、また、○○ちゃんが息子みたいに感じられ、ふと我に返る。
(私の息子じゃなかった。☆☆さんの息子さんだった)
 友人の息子さんを、自分の息子みたいに錯覚するなんて、私って、どうかしてると思った。
 見学に行った民事裁判傍聴の日、しばらくして、○○ちゃんが名前を告げてから、被告に意見聴取を始めた。判事補に任官されてまだ1年ぐらいなのに、その声も話し方もベテランのように落ち着いていて、見ている私をさらに感激させた。けれど、喜びと同時に、
(あの可愛い可愛い○○ちゃんは、もう、大人の男性……)
 歳月の流れを感じて、一瞬、胸が熱くなってしまった。



                              


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