今年は5月半ばから梅雨に入り長梅雨の影響か、
湿度が影響する皮膚炎や外耳炎のワンちゃんが
例年よりも多く来られています。
今回は飼い主さんにおける耳の扱い方の留意点を書きます。
正常な耳のワンちゃんの飼い主さんからもよく、
「耳掃除はどうしたらいいですか？」
と聞かれますし、
「耳掃除してるんですけど汚れてて」
「耳掃除嫌がるんですけどどうすればいいですか？」
と、痒がってたり外耳炎の状態で来院されます。
当院の基本的な考え方は、
「自己判断で耳掃除はしないでください。」
の一言に尽きます。
正常な耳の場合、付着している少量の脂分はあえて除去する
必要はありません。
また、飼い主さんが耳を処置する際に痛がらせてしまったり、
綿棒などを用いてる時に犬が首を振ったりすると耳道を
突いてしまったりアクシデントが起こり、
「耳を触られるのを嫌がるようになる。」ワンちゃんが
発生してしまうことが最大のデメリットです。
汚れている耳や痒がっている、赤くなっている耳は
さらに大変です。治療が必要な状態にも関わらず
「耳掃除が必要」と思い込み、自宅で痛がる状態の
「耳掃除」を続けていると・・・・
ご来院された時にはすでに
「耳を触ろうとしたらうなる、咬んでこようとする。」
ワンちゃんになってしまっていることは珍しく
ありません。
咬んでくるようになってしまった外耳炎のワンちゃんは、
治療しようにも治療できないこともあります。
どうしても処置が必要な症状の場合、鎮静処置や全身麻酔が
必要なことまで起こり得ます。
外耳炎の原因要因は非常に複雑です。
感染の問題（酵母、細菌、耳疥癬など）、
毛が密などで湿気や脂分が多いなどの構造の問題、
食事による脂分の問題、
アレルギーやアトピー性皮膚炎などの部分的症状の場合、
甲状腺機能低下症などの要因がある場合、
犬種として発生しやすい場合、
耳にデキモノができている場合、
奥に毛が入り込んでたり草のノギなどの異物がある場合、
その他の要因を考慮しますし、
経過が長引いたり、難治性となり完治が難しい場合など、
同じ外耳炎でも症状や程度が非常に多彩です。
耳を扱う基本の原則は「苦痛を与えない」ことです。
苦痛を伴う処置はその後同じ処置をしようとしても
許容できないと思います。
どうしても苦痛を伴う処置が避けられない場合は、
できるだけサッと終わるようにする、痛み止めを使用する、
などの配慮も重要です。
当院は治療にあたる際、苦痛を伴う症状か、耳の処置は
どのくらい受け入れることが可能か、完治は可能か、
完治が難しい場合どの程度を治療目標にできるか、
などを随時考慮しています。
ですので、「自宅での耳掃除」というのは安易には
すすめられず、またすべきことでもありません。
当院では自宅での「耳掃除」は全く推奨していないので、
そういったご質問があった際は、
「まず耳掃除、ではなく、まず受診。」
でお願いしています。
治療が必要な症状かどうかを飼い主さんが判断することは
不可能です。治療が必要でない症状であれば良いこと
ですのでまず受診され状態の確認をさせて頂くことが先決です。
当院でも、自宅での「外耳道洗浄」を許可するケースは
あります。これは、長引く外耳炎で定期的な洗浄が
必要なケースで、飼い主さんが苦痛を与えることなく
ワンちゃんも許容できる場合です。
あくまで治療として「外耳道洗浄」が必要なケースなので、
「耳掃除」の話ではありません。
耳に限らず、爪切り、肛門腺処置、デンタルケアなど、
「自宅でもできそうだ」と感じられるものもあるかも
しれませんが・・・・
基本的にワンちゃんが嫌がる場合は長い目で見ると飼い主さんと
ペットさんの関係性にも影響が出ることがあります。
（なにかケアを始めようとしたら逃げる、怒る、など。）
ですので、自宅でのケアをお考えの際は、まず始めてみる
よりも、まず御相談頂いたほうが賢明だと思います。
そもそもその子に必要なケアかどうかの判断も必要です。
性格、体格、状況、状態、飼い主さんの感覚などにより、
その子が許容できるかどうかは本当にケースバイケース
だと感じますので。
高知 きたむら動物病院犬と猫の一般診療・内科・皮膚科・内分泌・理学療法
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