高知 きたむら動物病院blog

四国高知にて2009年1月に開院いたしました動物病院のブログです。

べべとしま子の生涯

2020-10-20 23:09:37 | 日記
今年はうちの猫と、母親の犬が亡くなりました。

待合室にもたまにいたパグの「べべ」は母親の犬で、
子犬の頃から非常に呼吸器が弱く気管が細く、何度も
気管支炎を起こしました。

実は6才くらいからいろいろな病気を抱えてました。
気管支炎、短頭腫気道症候群、子宮蓄膿症、尿石症、
甲状腺機能低下症、肥満細胞腫、外耳炎、ドライアイ
による乾性角結膜炎などなど。母親が飼っておりました
ので母親が治療や投薬をしておりましたが大変でした。

子宮蓄膿症と肥満細胞腫は私が手術しました。
わが子ならぬわが犬の手術というのはなかなか説明
しづらい独特の感情が湧きました。

4月にまた気管支炎を起こしたんですが、症状がどんどん
重くなり治療の甲斐なく亡くなりました。
11歳目前でした。もともと長生きはできないだろうと
思っていたので、10歳越えてくれただけでも頑張った
と思いました。

決して長生きとは言えない犬生だったかもですが、
ほとんどの時間母親とずっと過ごし、
母親も「相棒」と言っていたほど濃密だったので、
良い犬生だったんだろうと思っています。




しま子は自分が20代後半、勤務医の頃飼い始めた猫でした。
実は当時仕事で担当していたペットショップで、

「ウイルス持ちで1年持たないかもしれないと他の病院で
診断された猫なんですけど・・・・先生飼いません?」

と言われ・・・見たら、

「飼、飼いたい・・・・」

と思ったんですが、1度は保留しました。

その翌週に、また仕事でそのペットショップに行ったところ、
その猫はまるで自分が迎えに来たように感じられまして。

飼うことにしました。

(生後5カ月くらいの画像です)


しま子は成猫になると非常に物静かな猫だったんですが、
自分が20代おわりの頃、精神不安定になった時期には、
朝起きたら横で自分の顔を覗き込んでいたり、面倒見の
良い性格のように感じられ、しま子の生涯を通じて自分が
精神的に見守られていたようにすら感じた猫でした。



しま子も尿石持ちで、「シュウ酸カルシウム」というなかなか
食事管理しても再発しやすい尿石でしたので、一度は結石の
摘出手術をしたのですが、再発後は手術しませんでした。

10歳を越えてから、腎機能低下も見らたんですが、
その時期に共立製薬さんから発売された動物用医薬品
「ラプロス」(薬剤名ベラプロスト)をずっと飲ませて
いました。

何もしないと血尿も出るようになったんですが、
日本全薬工業さんの尿用サプリメント「ウロアクト」を
飲ませ始めたら、血尿の症状はかなり改善されました。

亡くなる3週間前くらいまで、ラプロスとウロアクトは
何年もずっと飲んでくれて、ラプロスは腎機能低下が発症
してからも進行がかなり抑制された実感があり、定期的な
皮下補液を開始しないといけないレベルに進行するまでの
時間がかなり伸びたように感じました。

ウロアクトは尿石があったとしても症状の緩和には有効
であったという実感がありました。

6キロ弱あった体重も3キロくらいになり、亡くなる
2週間ちょっと前から、尿毒症の症状になり、だんだんと
食べなくなり・・・といった典型的な腎臓病の経過だった
んですが、まったく食べなくなってからも、つらそうと
言うほどの表情ではなく、喉をなでるとゴロゴロ言い、
亡くなる前日までそうやってなでて、できるだけ一緒に
過ごし、亡くなる当日は仕事中に亡くなりましたが、
午前仕事中空き時間にさいさい様子を見に行き、ひきつけの
症状が出たな・・・と確認しながらまた仕事に戻ったり
しました。

自分の価値観では、こういった病状で安楽死という選択は
ありません。食べなくなっても、なでてあげると心地よさ
そうにしている時間があるのであれば、そっと過ごさせて
天命を待つもの選択肢のひとつです。もちろん、動物が
苦しみや苦痛しかない状況であれば安楽死の考慮も
すべきだと思いますが、ケースバイケースですし、
急がなくてもやがてやってくるのであれば、適切な
緩和治療を行って、精いっぱい命を全うさせるのも
ひとつの価値観です。

しま子は14歳8カ月で命を全うしましたが、ちょっと
短かったのかな、と思いきや、アメショーとしては
短いというわけでもなかったので、1歳持たないかも
だった子猫が精いっぱい生きてくれたと感謝しています。



自分の診療方針の原則に、できるだけ動物にストレスを
かけないことと、出来るだけ自宅でお迎えが来るような
形が望ましいのではないかと考えてまして、しま子に
関しては、自分が考えるできる最善の「ちょうど」の
治療をしてあげられたのかな、とやっと思えました。

当院は獣医1人に看護師5人の、小規模の「動物診療所」
です。獣医や看護師が多数いることにより実現できる、
チーム医療ができるわけでも目指しているわけでもありません。

チーム医療はチーム医療で良さと強みがあり、個人病院
では到底できないレベルの医療が可能です。

ですが、当院のような個人病院には個人病院の良さと
役割があり、自分の価値観と力量で提供できる獣医療を
良いと感じて頂ける飼い主さんに支えられて毎日仕事
させて頂いていると感じます。

もちろん、動物にストレスをかけないように仕事したいと
常に思っていてもうまくいかないこともありますし、
かなり忙しいときなどはどうしても余裕が無かったり
しますし、そもそもうちのような個人病院で出来ること
には限りがあるので力不足を感じた時には他の動物病院
さんをご紹介することはよくあります。

それでも、当院の診療を希望される飼い主さんには
精いっぱい仕事させて頂いていて、

自分の飼っていた動物に自分が行ったことと基本的に
同じ考え方で治療にあたっています。

自分が小学5年生のときに、獣医師になろうと決めた
ときから、あまり根本的な感覚や考え方は変わっておらず、
その時の価値観をずっと持ち続けられてもう30年
経ちました。

大人になると、純粋さを保ち続けることは難しくなりますが、
純粋さを保つ意思を持つことと、純粋さを保ちながらも
社会の中でどう振る舞い行動するかを考えていくことが
必要だと思います。

これからも、保つべき純粋さを再確認させてくれた、
べべとしま子の生涯でした。

高知 きたむら動物病院
犬と猫の一般診療・内科・皮膚科・内分泌・理学療法
高知県高知市北川添24-27 088-880-5123
休診日 水曜日 日曜日 祝日
受付時間 
月・火・木  9:00-11:45 15:00-18:45
金      9:00-11:45 17:00-18:45
土      9:00-11:45 14:00-17:45

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1 コメント

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Unknown (畠中)
2020-10-21 17:38:26
先生お久しぶりです。
べべちゃんの名前をみて思わずコメントを..
初めて会ったときはまだ子犬だったべべちゃんが、会うたびにぽっちゃりしていって笑
お母さまと一緒にお散歩にフゴフゴいいながら出かけていく姿が思い出されます。
とても良い犬生だったんだろうなーと思います。

またお会いしましょう。
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