諸先輩方を差し置いて若くして総務人事部長を務め、出世街道まっしぐらあとちょっとで役員に手が届く、というところで社長と対立した結果、体よく子会社の取締役に飛ばされた後輩が飲みの席に誘ってくれたので、湯島のタイ料理屋まで赴く。
「何人か呼びましょう」というので言ってみると、彼の同期が二人。うち一人は入社時に私のいた部署に配属されて私が教育係を務めたものの大変ぎくしゃくしてさっぱり教育できず、その後の詳細は省くが、ある日「私とあなたは合いませんから、もう話しかけないでください」というメールがきてそれっきりになった後輩(♀)であった。
名目は、私の還暦定年祝いということで、彼らの入社当時の話しや、私の入社の話し、あっちこっち行った部署でのトホホな話しなど色々。
宴もたけなわ、そろそろ帰ろうか、というところで、ホストの彼とその奥さんから、そしてぎくしゃくしていた後輩からそれぞれプレゼントをもらう。
ぎくしゃくしていた後輩は、今頃になって、当時の私の苦労がわかったといい、愚痴を言わなかったことを感謝してくれた。
自分としては、愚痴を周囲に言ったところで本人の態度が変化するわけでなし、ぎくしゃくしていたのは一重に私の力量不足だとは自覚していたのでこれまた周囲にもらしたところで「それはお前の力不足だ」といわれるのが目に見えていたので言わなかったのだが。
その後輩も、数年前に課長になり、今は部下を何人も従えてバリバリと働き、今春入社した新入社員も「配属になったという。
こちらの力量不足というか、本人のやる気と能力をうまいことコントロールできなかったということで、いずれにせよまさに私の不徳のいたすところである。
長年ぎくしゃくとしており、挨拶以外には、いや挨拶もかなり儀礼的で,「しないと角が立つからしておく」くらいの感じだった。
この日は、20年以上の月日を埋めるがごとく、当時の話しをいろいろして、向こうからわだかまりをなくそうと話しかけてくれたので、こちらも気持ちがすっとした。
考えたら、私がきちんとまともに新入社員の教育係を任されたのは彼女が最初で最後だった。長年の胸のつかえ、心の奥のわだかまりがほぐれて、この日以来気分が良い。
あと1年あるか2年あるかわからない、この会社での会社員生活だが、彼女とは仲良く、はむつかしいかもしれないが、のんびりとやっていきたいと思う。
そう、この会社から離れたら、私の生活と態度上、殆ど全ての人とはそれっきりになるのである。
ちなみに、「もう話しかけないでください」というメール、20年以上前の、今使っているものよりも3代くらい前のパソコンで受信したものだが、hotmailに転送して取っておいてある。
帰宅して呼び出してみた。彼女の言うことはもっともであり、耳が痛いことこのうえない。
今思うと、こちらも本当に稚拙だったなぁと反省する。