![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/b2/4abfc56ee8c0ebbea723e7b745fe2258.jpg)
十年近く前、将来の予定をワイドショーで
答えた 三浦春馬氏。
「40歳になったら農業する!!」には、
仰天しました。
そこから妄想して書いた短編小説です。
第 一 章 (全十一章)
音もなく降り続く雪……
今年はなんという冷え込みだろう。
藁の雪ぐつを履いて進める足がこんなに重いのは初めてじゃ。
行きたくねえ、行きたくねえ……
大好きなばあちゃんを山に捨てになんぞ。
時は明治時代。
ある山に囲まれた地方の貧村。
この村では 年寄は山の中へ捨てに行かなければならない。
すでにご一新を過ぎているのに、まだ江戸時代の
風習が固く残っているのだった。
「馬作、ワシを負ぶって さぞ重いじゃろう。ワシは歩けるぞ」
「バカ、言うでねえ、ばあちゃん!!
姥捨山へ 自分で 歩いていく年寄がいるか!!
負ぶって連れていくのがオラの役目。
父ちゃんが死んじまったからマゴのオラの役目じゃ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/35/4b76e20f253e068738c9900e285b9ff8.jpg)
そこまで言って、馬作は口をつぐんだ。
<なんでこんな慣わしの村に生まれちまっただろう>
ばあちゃんは着の身着のままだが、腐りかけの林檎を
大切に胸に抱いている。
「なんだ、そのリンゴ」
「お前がくれたじゃないか、馬作。食べるのが
もったいないからずっと持っているだよ」
そういえば、その林檎は、前に馬作が山深く迷い込んだ時、
拾ったみっつの林檎のうちのひとつだった。
. ***********************************************
第 二 章
やがて長い冬がやっと終わろうとしていた。
もちろん、馬作は村の衆の目を盗んで冬中、
ばあちゃんに食糧を運び続け、ばあちゃんは元気でいる。
やがて小川の氷も溶け、幾度かの嵐も過ぎ去り
花々も咲き始めた頃、村を治める領主のひとり娘、
姫りんご姫が病で伏せっているという噂が流れてきた。
八方からたくさんの薬師が呼ばれたが容態は一向によくならない。
幼い姫は高熱で苦しみ続けているということだ。
村の者たちはウワサした。
「オラのじいちゃん、ばあちゃんたちを山に捨てろという
慣わしはご一新前からの古い風習だ。
もう新しいご時世だというのに」
「きっと、天罰が下ったに違いねえ」
それを聞いた馬作は村の衆に
「じゃが、ちっこい姫さまは何も悪くねえ。可哀想でねえだか」
と言うと、 村の衆は
「おめえ、領主が憎くねえだか」
「そりゃ、憎いけど…… 慣わしが憎いんだよ」
ある日、山へ向かう道を登っていると、松の木の根元から
何やら種類の違う若木がにょっきり伸びているではないか。
「あ、もしかして、あのリンゴの??」
ばあちゃんが持ってたリンゴを捨てた場所だ。
そこから種が根を張り、若木が伸びたんだろうか!?
近寄ってみると、確かに林檎の樹の葉っぱだ。
その林檎の樹は急速に成長して馬作の背を、たちまち越え、
翌年には白い花をたくさん咲かせた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/b2/4abfc56ee8c0ebbea723e7b745fe2258.jpg)
「もしかして!!」
馬作は何者かに突き動かされるように、
花に受粉の作業をした。
綿で作った丸いものを棒をつけ、その先に花粉をつけ、
雄蕊にくっつけてやる。
林檎の樹の世話なんぞしたことがないが、山を越え、
林檎作りしている農家にまで行って、教えてもらってきたのだ。
<どうか、秋にはたくさんの実が成りますように>
ことの一部始終は、山にいるばあちゃんにも報告していた。
「なんでまたお前、そこまで……」
「リンゴの実が成ったらばあちゃんに食わしてやるからな。
そしたら精力つけてもっと長生きしてくれろ!!」
ばあちゃんは逞しく、裏山で畑を耕し、姥捨て山に
捨てられた老人たちと作物を作っていた。
まだまだ働ける年寄を捨てろなんて領主がザンコクなのだ。
「しかし、お前の言う通り、姫さまには
何の罪もないのじゃから気の毒じゃのう。
まだ病で苦しんでおられるのか?」
「そうみてえだ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/2e/7ab80c7c4189bd27ac1f2387ef8f6815.png)
★第三章に続く
答えた 三浦春馬氏。
「40歳になったら農業する!!」には、
仰天しました。
そこから妄想して書いた短編小説です。
第 一 章 (全十一章)
音もなく降り続く雪……
今年はなんという冷え込みだろう。
藁の雪ぐつを履いて進める足がこんなに重いのは初めてじゃ。
行きたくねえ、行きたくねえ……
大好きなばあちゃんを山に捨てになんぞ。
時は明治時代。
ある山に囲まれた地方の貧村。
この村では 年寄は山の中へ捨てに行かなければならない。
すでにご一新を過ぎているのに、まだ江戸時代の
風習が固く残っているのだった。
「馬作、ワシを負ぶって さぞ重いじゃろう。ワシは歩けるぞ」
「バカ、言うでねえ、ばあちゃん!!
姥捨山へ 自分で 歩いていく年寄がいるか!!
負ぶって連れていくのがオラの役目。
父ちゃんが死んじまったからマゴのオラの役目じゃ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/35/4b76e20f253e068738c9900e285b9ff8.jpg)
そこまで言って、馬作は口をつぐんだ。
<なんでこんな慣わしの村に生まれちまっただろう>
ばあちゃんは着の身着のままだが、腐りかけの林檎を
大切に胸に抱いている。
「なんだ、そのリンゴ」
「お前がくれたじゃないか、馬作。食べるのが
もったいないからずっと持っているだよ」
そういえば、その林檎は、前に馬作が山深く迷い込んだ時、
拾ったみっつの林檎のうちのひとつだった。
. ***********************************************
第 二 章
やがて長い冬がやっと終わろうとしていた。
もちろん、馬作は村の衆の目を盗んで冬中、
ばあちゃんに食糧を運び続け、ばあちゃんは元気でいる。
やがて小川の氷も溶け、幾度かの嵐も過ぎ去り
花々も咲き始めた頃、村を治める領主のひとり娘、
姫りんご姫が病で伏せっているという噂が流れてきた。
八方からたくさんの薬師が呼ばれたが容態は一向によくならない。
幼い姫は高熱で苦しみ続けているということだ。
村の者たちはウワサした。
「オラのじいちゃん、ばあちゃんたちを山に捨てろという
慣わしはご一新前からの古い風習だ。
もう新しいご時世だというのに」
「きっと、天罰が下ったに違いねえ」
それを聞いた馬作は村の衆に
「じゃが、ちっこい姫さまは何も悪くねえ。可哀想でねえだか」
と言うと、 村の衆は
「おめえ、領主が憎くねえだか」
「そりゃ、憎いけど…… 慣わしが憎いんだよ」
ある日、山へ向かう道を登っていると、松の木の根元から
何やら種類の違う若木がにょっきり伸びているではないか。
「あ、もしかして、あのリンゴの??」
ばあちゃんが持ってたリンゴを捨てた場所だ。
そこから種が根を張り、若木が伸びたんだろうか!?
近寄ってみると、確かに林檎の樹の葉っぱだ。
その林檎の樹は急速に成長して馬作の背を、たちまち越え、
翌年には白い花をたくさん咲かせた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/b2/4abfc56ee8c0ebbea723e7b745fe2258.jpg)
「もしかして!!」
馬作は何者かに突き動かされるように、
花に受粉の作業をした。
綿で作った丸いものを棒をつけ、その先に花粉をつけ、
雄蕊にくっつけてやる。
林檎の樹の世話なんぞしたことがないが、山を越え、
林檎作りしている農家にまで行って、教えてもらってきたのだ。
<どうか、秋にはたくさんの実が成りますように>
ことの一部始終は、山にいるばあちゃんにも報告していた。
「なんでまたお前、そこまで……」
「リンゴの実が成ったらばあちゃんに食わしてやるからな。
そしたら精力つけてもっと長生きしてくれろ!!」
ばあちゃんは逞しく、裏山で畑を耕し、姥捨て山に
捨てられた老人たちと作物を作っていた。
まだまだ働ける年寄を捨てろなんて領主がザンコクなのだ。
「しかし、お前の言う通り、姫さまには
何の罪もないのじゃから気の毒じゃのう。
まだ病で苦しんでおられるのか?」
「そうみてえだ」
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★第三章に続く