![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/89/4be922bfb89246cbd76806f6236f4e3b.jpg)
「日本のもの」をきちんと知りたかった
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/16/d3a08248eda012a240a951c8488124eb.jpg)
――本連載が始まったのは三浦さんが20代半ばのころですが、
何かきっかけのようなものがあったのでしょうか?
この連載のお話があがったのが、僕が24、5歳のころだった
と思います。当時から仕事で各都道府県に行く機会はあって、
その土地のB級グルメや美味しいものに触れてはいたけど、
その背景を何も知らないなと思ったんです。
そんな頃に、1、2カ月間、海外の語学学校に通っていました。
クラスメイトはみんな年齢層が違うんですけど、
どの国の出身の人たちも自分の住んでいる国やエリアに対して、
すごく熱心に目をキラキラさせながら
「自分の国にはこんなに素晴らしいものがあるんだ!」
と話すんですよ。
僕はそれに対して「日本は自然が豊かで」とか「
和食っていうのがあって」くらいしか言えなかったことが
恥ずかしかったんです。
どんなプロダクトがあって、とか、どんな歴史や
人々の思いがあって、ということが
思い浮かばなかったんですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/fd/b34539aad9b566c403258084902c8e05.jpg)
これから5年や10年先もこの仕事をしていくとして、
もし英語が堪能であったとしても、自分の国である日本の魅力を
世界に届けられない、語れないなと痛感したんです。
自分が知らなかったら人に話せないし、伝えられないと
思ったので、これを機に「日本のもの」をきちんと知りたいなと
思ったのがきっかけでした。
――秋田県の日本酒や、千葉県のしょうゆ、
鳥取県のらっきょうなど、日本の伝統的な食品や食材を
取材されることも多かったようですが、
実際に作っている方々に会って話を聞き、
時にはご自身で作ってみたり、匂いを嗅いでみたりと、
現場を体感してみていかがでしたか?
どの都道府県も、プロダクトとして素晴らしいのはもちろんのこと
素晴らしい製品には作り手の素晴らしい思いが
しっかり付随しているんだなということを感じました。
それが、その方の顔や手に表れているんだろうなと思います。
文字で見た時に想像する素晴らしさもあると思うんですけど、
そのものに触れてみて、その人に会って生で聞いて、
見てみないと分からないことってたくさんあるんだなって
すごく感じました。
実際に取材でうかがった中で、自分が何を掴み、
何を感じるのかを、毎回楽しみながら
感じさせてもらっていましたね。
30歳を迎える2020年初頭までの約1年間を追った
ドキュメンタリー写真集付きの特装版
『日本製+Documentary PHOTO BOOK 2019-2020』(
撮影:京介、ワニブックス刊)も同時発売
――各都道府県の伝統文化や産業などを取り上げる中で、
広島県では原爆を体験した「ヒロシマを語り継ぐ教師の会」
の事務局長・梶矢文昭さんと対話されていましたね。
被爆国である日本の辛く悲しい過去も、これからの日本が
継承していくことの一つとして取り上げられていたのが
印象的でした。
「永遠の0」という映画に出演した時に、
戦争体験者の方にお話を聞いたことは何回かあったのですが、
被爆経験者の方に実際にお話をうかがうのは初めてだったんです。
小説で読んだこと、学校の教育で教えられたことはあったけど、
実際にその現場を目の当たりにした方が、どうやって逃げたのか、
どんな思いだったのかということを聞いた時は、
やはり胸が苦しくなりました。
取材をさせていただいた梶矢さんが、日頃どういう活動をしているか、
また、その活動の重要性や意味も考えさせられました。
歴史に触れる機会はあまりないですけど、
生きている人から直接お話を聞けるということは、
直に歴史に触れているのと同じことですよね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/0b/22d808319dc8951d408b06c9b1581032.jpg)
実は後日、この連載を一緒にやっているスタッフが、
梶矢さんに改めてお礼を伝えてくれたところ
「今回の東京オリンピックで聖火ランナーに決まった」と
教えてくれたそうなんです。
「同じ火でも、あの時は原爆の火から逃れて走ったけど、
今回は“未来を繋げる”という意味で聖火を持って走れるから、
とても嬉しいんだ」とおっしゃっていたと聞き、
僕もすごく嬉しかったです。
それはやっぱり、この取材で実際に梶矢さんに
お話をうかがったという事実と、
あの時間の繋がりがなければ、こんな風に血の通った何か、
みたいな思いを感じ取れなかった気がします。
どの都道府県の方々も、お話をうかがえたのは
ほんの1日だったけど、色々な職人さんやそのご家族の思いの
軌跡みたいなものに触れさせていただけたことが
何よりも自分の財産になったなと思っています。
*****************
★日本文化の強みは「発酵の精神」
――47の「メイド・イン・ジャパン」と出会ってきて、
三浦さんが今「自国・日本」に対して
芽生えた思いはありますか?
日本は他の大陸と比べてしまうと、
もしかしたら歴史が浅いかもしれないですが、
大陸から伝わった製品や作物、そういったものを
自分たちなりに工夫をして加工をして、
そしてまた大陸に戻すことも本当に素晴らしいことだなと
思っています。
僕自身は、日本に根付く技術として
「発酵」というものがすごく大きく取り上げられるんじゃないかと
思っているんです。
日本人は古くから目に見えない菌を使ってたくさんの
発酵食品をつくってきましたが、
千葉県でしょうゆ工場を取材した際に、発酵する過程で、
乳酸菌や酵母菌、麹菌、一つでも欠けるとうまく出来ないと
いうことを教えていただきました。
そして、いくつもの工程を経て手塩にかけたものが、
ずっと継承されているんですよね。
この連載を通して改めて47都道府県を見るに、
その土地で試行錯誤を繰り返して、
自分たちの技術として培ってきたものというのは、
発酵と同じようなことが言えるんじゃないかと思っています。
日本における素晴らしい技術や、繊細な思いやりは、
その製品がより洗練されるための栄養素になっていて、
「日本の伝統工芸や文化ってどういう強みがありますか?」と
聞かれた時に、声を大きくして「発酵の精神」というものがある
と言えるし、そのことに気づかせてもらったと思っています。
三浦春馬『日本製+Documentary PHOTO BOOK 2019-2020』
(撮影:京介、ワニブックス刊)より
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/89/4be922bfb89246cbd76806f6236f4e3b.jpg)
――発酵することで栄養価や保存性が高まったりと、
いいことずくめの発酵食品って素晴らしいですよね!
あはは(笑)。そう、素晴らしいです。
発酵は悪さしないですからね! 腐敗ではないですから。
熟成した菌が体にいい作用を及ぼすんです。
――「好書好日」はブックサイトなのですが、今、
三浦さんが「本」に関わることで、気になることや
知りたいことはありますか?
例えば、作家さんが物語を考えている裏側を知りたい、とか。
確かに、名だたる作家さんたちが、
どうしてあんなに早いスパンでストーリーを作っていけるのかは
知りたいですよね。
実体験とか、何かにインスピレーションをもらっているんだろうなと
いうことは、ちょっとは想像できるんですけど。
でも、果たしてあんなに緻密にストーリーを
紡げるのって、なにか秘訣があるのかなって。
僕の知り合いに作家さんがいないので、
そういうのを聞いてみたいです。
*****************
――最後に、三浦さんの読書ライフについて教えてください。
読書は、ハマる期間があったら「クッ」とハマります。
昨年の秋ごろに、ある歴史的人物を演じる機会があったのですが、
その方が学んだであろう『論語』を読んだんです。
でも、初めにそちらを読むのは中々難しいなと思ったので、
まずは渋沢栄一さんの『論語と算盤(そろばん)』を読みました。
役作りにおけるヒントが色々と散りばめられていた気がして、
すごく参考にさせてもらいました。
そこから、何かものを考える時は
『論語と算盤』の「論語的考え方」を持ち合わせられたら
いいなと思えるようになり、とても影響を受けましたね。
素晴らしい本です。
「なんか調子悪いな」っていう時に読んでもいいんだろうなと思います。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/16/d3a08248eda012a240a951c8488124eb.jpg)
――本連載が始まったのは三浦さんが20代半ばのころですが、
何かきっかけのようなものがあったのでしょうか?
この連載のお話があがったのが、僕が24、5歳のころだった
と思います。当時から仕事で各都道府県に行く機会はあって、
その土地のB級グルメや美味しいものに触れてはいたけど、
その背景を何も知らないなと思ったんです。
そんな頃に、1、2カ月間、海外の語学学校に通っていました。
クラスメイトはみんな年齢層が違うんですけど、
どの国の出身の人たちも自分の住んでいる国やエリアに対して、
すごく熱心に目をキラキラさせながら
「自分の国にはこんなに素晴らしいものがあるんだ!」
と話すんですよ。
僕はそれに対して「日本は自然が豊かで」とか「
和食っていうのがあって」くらいしか言えなかったことが
恥ずかしかったんです。
どんなプロダクトがあって、とか、どんな歴史や
人々の思いがあって、ということが
思い浮かばなかったんですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/fd/b34539aad9b566c403258084902c8e05.jpg)
これから5年や10年先もこの仕事をしていくとして、
もし英語が堪能であったとしても、自分の国である日本の魅力を
世界に届けられない、語れないなと痛感したんです。
自分が知らなかったら人に話せないし、伝えられないと
思ったので、これを機に「日本のもの」をきちんと知りたいなと
思ったのがきっかけでした。
――秋田県の日本酒や、千葉県のしょうゆ、
鳥取県のらっきょうなど、日本の伝統的な食品や食材を
取材されることも多かったようですが、
実際に作っている方々に会って話を聞き、
時にはご自身で作ってみたり、匂いを嗅いでみたりと、
現場を体感してみていかがでしたか?
どの都道府県も、プロダクトとして素晴らしいのはもちろんのこと
素晴らしい製品には作り手の素晴らしい思いが
しっかり付随しているんだなということを感じました。
それが、その方の顔や手に表れているんだろうなと思います。
文字で見た時に想像する素晴らしさもあると思うんですけど、
そのものに触れてみて、その人に会って生で聞いて、
見てみないと分からないことってたくさんあるんだなって
すごく感じました。
実際に取材でうかがった中で、自分が何を掴み、
何を感じるのかを、毎回楽しみながら
感じさせてもらっていましたね。
30歳を迎える2020年初頭までの約1年間を追った
ドキュメンタリー写真集付きの特装版
『日本製+Documentary PHOTO BOOK 2019-2020』(
撮影:京介、ワニブックス刊)も同時発売
――各都道府県の伝統文化や産業などを取り上げる中で、
広島県では原爆を体験した「ヒロシマを語り継ぐ教師の会」
の事務局長・梶矢文昭さんと対話されていましたね。
被爆国である日本の辛く悲しい過去も、これからの日本が
継承していくことの一つとして取り上げられていたのが
印象的でした。
「永遠の0」という映画に出演した時に、
戦争体験者の方にお話を聞いたことは何回かあったのですが、
被爆経験者の方に実際にお話をうかがうのは初めてだったんです。
小説で読んだこと、学校の教育で教えられたことはあったけど、
実際にその現場を目の当たりにした方が、どうやって逃げたのか、
どんな思いだったのかということを聞いた時は、
やはり胸が苦しくなりました。
取材をさせていただいた梶矢さんが、日頃どういう活動をしているか、
また、その活動の重要性や意味も考えさせられました。
歴史に触れる機会はあまりないですけど、
生きている人から直接お話を聞けるということは、
直に歴史に触れているのと同じことですよね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/0b/22d808319dc8951d408b06c9b1581032.jpg)
実は後日、この連載を一緒にやっているスタッフが、
梶矢さんに改めてお礼を伝えてくれたところ
「今回の東京オリンピックで聖火ランナーに決まった」と
教えてくれたそうなんです。
「同じ火でも、あの時は原爆の火から逃れて走ったけど、
今回は“未来を繋げる”という意味で聖火を持って走れるから、
とても嬉しいんだ」とおっしゃっていたと聞き、
僕もすごく嬉しかったです。
それはやっぱり、この取材で実際に梶矢さんに
お話をうかがったという事実と、
あの時間の繋がりがなければ、こんな風に血の通った何か、
みたいな思いを感じ取れなかった気がします。
どの都道府県の方々も、お話をうかがえたのは
ほんの1日だったけど、色々な職人さんやそのご家族の思いの
軌跡みたいなものに触れさせていただけたことが
何よりも自分の財産になったなと思っています。
*****************
★日本文化の強みは「発酵の精神」
――47の「メイド・イン・ジャパン」と出会ってきて、
三浦さんが今「自国・日本」に対して
芽生えた思いはありますか?
日本は他の大陸と比べてしまうと、
もしかしたら歴史が浅いかもしれないですが、
大陸から伝わった製品や作物、そういったものを
自分たちなりに工夫をして加工をして、
そしてまた大陸に戻すことも本当に素晴らしいことだなと
思っています。
僕自身は、日本に根付く技術として
「発酵」というものがすごく大きく取り上げられるんじゃないかと
思っているんです。
日本人は古くから目に見えない菌を使ってたくさんの
発酵食品をつくってきましたが、
千葉県でしょうゆ工場を取材した際に、発酵する過程で、
乳酸菌や酵母菌、麹菌、一つでも欠けるとうまく出来ないと
いうことを教えていただきました。
そして、いくつもの工程を経て手塩にかけたものが、
ずっと継承されているんですよね。
この連載を通して改めて47都道府県を見るに、
その土地で試行錯誤を繰り返して、
自分たちの技術として培ってきたものというのは、
発酵と同じようなことが言えるんじゃないかと思っています。
日本における素晴らしい技術や、繊細な思いやりは、
その製品がより洗練されるための栄養素になっていて、
「日本の伝統工芸や文化ってどういう強みがありますか?」と
聞かれた時に、声を大きくして「発酵の精神」というものがある
と言えるし、そのことに気づかせてもらったと思っています。
三浦春馬『日本製+Documentary PHOTO BOOK 2019-2020』
(撮影:京介、ワニブックス刊)より
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/89/4be922bfb89246cbd76806f6236f4e3b.jpg)
――発酵することで栄養価や保存性が高まったりと、
いいことずくめの発酵食品って素晴らしいですよね!
あはは(笑)。そう、素晴らしいです。
発酵は悪さしないですからね! 腐敗ではないですから。
熟成した菌が体にいい作用を及ぼすんです。
――「好書好日」はブックサイトなのですが、今、
三浦さんが「本」に関わることで、気になることや
知りたいことはありますか?
例えば、作家さんが物語を考えている裏側を知りたい、とか。
確かに、名だたる作家さんたちが、
どうしてあんなに早いスパンでストーリーを作っていけるのかは
知りたいですよね。
実体験とか、何かにインスピレーションをもらっているんだろうなと
いうことは、ちょっとは想像できるんですけど。
でも、果たしてあんなに緻密にストーリーを
紡げるのって、なにか秘訣があるのかなって。
僕の知り合いに作家さんがいないので、
そういうのを聞いてみたいです。
*****************
――最後に、三浦さんの読書ライフについて教えてください。
読書は、ハマる期間があったら「クッ」とハマります。
昨年の秋ごろに、ある歴史的人物を演じる機会があったのですが、
その方が学んだであろう『論語』を読んだんです。
でも、初めにそちらを読むのは中々難しいなと思ったので、
まずは渋沢栄一さんの『論語と算盤(そろばん)』を読みました。
役作りにおけるヒントが色々と散りばめられていた気がして、
すごく参考にさせてもらいました。
そこから、何かものを考える時は
『論語と算盤』の「論語的考え方」を持ち合わせられたら
いいなと思えるようになり、とても影響を受けましたね。
素晴らしい本です。
「なんか調子悪いな」っていう時に読んでもいいんだろうなと思います。