ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

ながめわびぬ秋より外の宿もがな野にも山にも月やすむらむ

2018-01-21 03:05:45 | 古今抜粋

ながめわびぬ秋より外の宿もがな野にも山にも月やすむらむ    式子内親王


新古今からもってきた。式子内親王は感性の優れたかなりの詠み手である。

物思いに凝りてさみしくてたまらない。秋のほかのやどが欲しい。空の月が野にも山にも安らいでいる。

昔も今も、秋というものは人の思いを誘うものらしい。月のように澄み渡った心でいればこんなに思い悩むこともなかろうということだろう。


月影の野にたゆたひてたまゆらのやすらひをこふ寂静の夜    揺之






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命にも勝りて惜しくあるものは見果てぬ夢の覚むるなりけり

2018-01-10 03:05:43 | 古今抜粋

命にも勝りて惜しくあるものは見果てぬ夢の覚むるなりけり    壬生忠岑


これは痛い歌である。
作者は自分のことを詠っているわけではない。
人間を見ながら詠んでいるのだ。

見果てぬ夢から覚めてしまったら、生きていても意味のない人生が広がるのである。
ではその夢とは何だというのか。

金か権力か女か、はたまたそれ以外の物か。自分がいいと思っているものを一生追いかけるのが人間だが。


こひせどもかひなき花を恨みつつ花なき里に落つる人はも    揺之






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いづれをか花とは分かむふるさとの春日の原にまだ消えぬ雪

2018-01-07 03:05:57 | 古今抜粋

いづれをか花とは分かむふるさとの春日の原にまだ消えぬ雪    凡河内躬恒


新古今からとった。

なんでも次に出るものは前のものよりは発展している。

古今の気分の上澄みをとって発展させたかのような歌である。

躬恒はこきみよい作家だ。

うまい。


雪と見て花を踏まむもかたなきと風もはばみし春の野をゆく    揺之





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いとせめて恋しき時はむば玉の夜の衣をかへしてぞ着る

2017-12-25 03:06:33 | 古今抜粋

いとせめて恋しき時はむば玉の夜の衣をかへしてぞ着る    小野小町


小町の歌はすべて他の歌人の代作だが、その歌人はなかなかのものだ。

夜着を裏返して着て寝ると、夢で恋しい人に会えるという俗信があった。

そういう子供のようなことにさえすがりたい女の気持ちに自分もなって詠んでいる。

小町がかわいかったのだろう。

なぜ代作をしたのかと、想像をしたくなるような作である。


とほかりて聖夜にねぶるその人の夢にいらむと窓にほほよす    揺之




コメント (4)
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小山田の庵ちかく鳴く鹿の音におどろかされて驚かすかな

2017-12-21 03:06:29 | 古今抜粋

小山田の庵ちかく鳴く鹿の音におどろかされて驚かすかな    西行


新古今の歌だが、こちらのカテゴリでいいだろうと思う。

西行は孤高の歌人である。こういう繰り返しは、ほかに和泉式部の歌が思い浮かぶが、なかなかこなれていないとできるものではない。

山田の中の庵の近くで鳴いた鹿に驚かされてしまったので、こちらも驚かしてやるとするか。

たまたま里近くおりてきたものだろう。そういう鹿への驚きとともに、情愛をも感じさせるものである。田を荒されてはかなわないと驚かしてやろうとするのだが、その心にも、歌人の鹿への暖かな心があるのだ。


奥山にたづねてきかむ鹿の音を夢にも聞きしかたいほの床    揺之






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つつめども袖にたまらぬ白玉は人を見ぬ目の涙なりけり

2017-12-14 03:06:27 | 古今抜粋

つつめども袖にたまらぬ白玉は人を見ぬ目の涙なりけり    安倍清行


小町に贈った歌だとされるが、実情は違うだろう。

小野小町の歌はすべてが他の歌人の代作だ。
それは当時ではかなり知れていたことなのである。

あなたのために影で泣いていますよ、などという歌も、なんとなくリップサービスくさい。
相手を馬鹿にしている風がある。
恋しての涙なら、もっと強い情感が漂うはずだ。



こひうらみかわく間もなき袖の露おちては君ののきをながるる    揺之






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我が恋は人知るらめや敷妙の枕のみこそ知らば知るらめ

2017-11-18 03:05:52 | 古今抜粋

我が恋は人知るらめや敷妙の枕のみこそ知らば知るらめ    よみ人しらず


「敷妙の」は「枕」にかかる枕詞である。
枕詞は定型詩の中で重要な役割をする。
長い時の中で自然に凝りかたまってきた露玉のように美しい。

だれかわたしの恋を知っているか。知りはすまい。枕などのみが、知っているなら、知っていることだろう。

忍び隠している恋は苦しい。たれを思っているのか。思うことすら許されない人かもしれない。


敷妙の床に伏しつつかの人を夢に見む門くぐるもあへず    揺之





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敷島の大和にはあらぬ唐衣ころも経ずして逢ふよしもがな

2017-10-15 03:06:55 | 古今抜粋

敷島の大和にはあらぬ唐衣ころも経ずして逢ふよしもがな    紀貫之



序詞の作例である。「敷島の大和にはあらぬ唐衣」までが「ころも」を呼ぶ序詞になっている。

時がかかることもなく、早く会いたいという心を、序詞を用いてうまく言うことによって、女心に訴えるのである。


この上は我が身も見えず春霞かすみゆくかなわがふるさとは    揺之






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今来んといひしばかりに長月の有明の月をまちいでつるかな

2017-10-14 03:07:06 | 古今抜粋

今来んといひしばかりに長月の有明の月をまちいでつるかな    素性


今すぐに来るよと言ったあなたの言葉を頼ったばかりに、長月の有明の月が出るまで、待ってしまったよ。

字余りの語句が続くことに、じっと長く待っていた心が偲ばれる。

字足らずは好きではないが、字余りには心がこめられると思う。



ゆふづきの細くかかるに手をのべて君の窓にもとりてゆかむぞ    揺之






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儚くて夢にも人を見つる夜は朝の床ぞおき憂かりける

2017-09-29 03:12:16 | 古今抜粋

儚くて夢にも人を見つる夜は朝の床ぞおき憂かりける    素性


昨日と似たようなテーマを選んでみた。

比べてみたらわかる。これは自分で自分の感慨を詠んだものだろう。

実際これと似た経験をしたのだ。



朝ぼらけ夢の名残をとらへむとまだ出でられぬ薄き床かな    揺之




コメント (10)
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