こひにやみ人を恨みてなす歌を破り捨てては闇夜に泣けり

こひにやみ人を恨みてなす歌を破り捨てては闇夜に泣けり　　　　揺之

この空は神のすみかか雲なびき透くほど白きことばを放つ

この空は神のすみかか雲なびき透くほど白きことばを放つ　　　　揺之

この世をばあさき夢とぞいひつつもこの世の花のげに美しき

この世をばあさき夢とぞいひつつもこの世の花のげに美しき　　　　揺之

あかしあの花をちぎりてかたこひの恨みに泣きしとほき思ひ出

あかしあの花をちぎりてかたこひの恨みに泣きしとほき思ひ出　　　　揺之

おのが身のあやまちおほき世をせめて時雨降る野に濡れそぼち立つ

おのが身のあやまちおほき世をせめて時雨降る野に濡れそぼち立つ　　　　揺之

打ち出でて野の風をすひむらきもの心の憂さをあらはむとしき

打ち出でて野の風をすひむらきもの心の憂さをあらはむとしき　　　　揺之

秋の夜に鳴くこほろぎの声を聞き寂しさの増すひとりの窓辺

秋の夜に鳴くこほろぎの声を聞き寂しさの増すひとりの窓辺　　　　揺之

野葡萄の色づく秋に恋は散りすくはれぬ身を風にゆらしき

野葡萄の色づく秋に恋は散りすくはれぬ身を風にゆらしき　　　　揺之

はかなきといはるる花の来る年も来る年も咲くその強さかな

はかなきといはるる花の来る年も来る年も咲くその強さかな　　　　揺之

野を歩き夜明けの月をながめては去りし人をぞ思ふ秋かな

野を歩き夜明けの月をながめては去りし人をぞ思ふ秋かな　　　　揺之