あめつちのかひにかくれし白玉のごとき月夜のあかきかげかな

あめつちのかひにかくれし白玉のごとき月夜のあかきかげかな　　　　揺之

忘れたき昔のことをくりかへし思ひ出しては悔しさに泣く

忘れたき昔のことをくりかへし思ひ出しては悔しさに泣く　　　　揺之

あをぞらに心を投げてかへりくるくすしきものの聞こえざる声

あをぞらに心を投げてかへりくるくすしきものの聞こえざる声　　　　揺之

雲わきてとほきに神の声を聞きおのれの道を正さむとする

雲わきてとほきに神の声を聞きおのれの道を正さむとする　　　　揺之

とほき夢わらはのころに君を見てあはき思ひに胸をしぼりき

とほき夢わらはのころに君を見てあはき思ひに胸をしぼりき　　　　揺之

むらきもの心にかかる薄雲をはらひのけてはおのれを立てり

むらきもの心にかかる薄雲をはらひのけてはおのれを立てり　　　　揺之

ふたたびとかへらぬ人の思ひ出を小箱にとぢて枕にそへぬ

ふたたびとかへらぬ人の思ひ出を小箱にとぢて枕にそへぬ　　　　揺之

ひさかたの月の光を身に浴びて心に痛き昔を思ふ

ひさかたの月の光を身に浴びて心に痛き昔を思ふ　　　　揺之

とほき日に君のうたひしことのはのあかき心を今更にこふ

とほき日に君のうたひしことのはのあかき心を今更にこふ　　　　揺之

面影を月に描きて幻の君を見上ぐる夜半のひととき

面影を月に描きて幻の君を見上ぐる夜半のひととき　　　　揺之