苦き実をかみておのれのたかを知り骨のゆがみをなほす秋かな

苦き実をかみておのれのたかを知り骨のゆがみをなほす秋かな　　　　揺之

花を見る人は心を花に染めしばしこの世のうれひをわする

花を見る人は心を花に染めしばしこの世のうれひをわする　　　　揺之

すみそめのゆふべに光るひとつ星ながめては知るおのれの道を

すみそめのゆふべに光るひとつ星ながめては知るおのれの道を　　　　揺之

ふたつなき富士のたかねに降る雪の白きに神の御心を見る

ふたつなき富士のたかねに降る雪の白きに神の御心を見る　　　　揺之

とほやまにしづむ夕月ながめつつこひのゆくへを頼む秋かな

とほやまにしづむ夕月ながめつつこひのゆくへを頼む秋かな　　　　揺之

しらたまの君を思ひてとく髪の長きにそひてながるる心

しらたまの君を思ひてとく髪の長きにそひてながるる心　　　　揺之

来ぬ人を待ちて窓辺にかほをよせ悲しくあふぐ有明の月

来ぬ人を待ちて窓辺にかほをよせ悲しくあふぐ有明の月　　　　揺之

うたかたの憂き世を夢とさだめては何せぬもののうたての世かな

うたかたの憂き世を夢とさだめては何せぬもののうたての世かな　　　　揺之

野いちごの赤き光をいとしみてくちびるによす君のいとしさ

野いちごの赤き光をいとしみてくちびるによす君のいとしさ　　　　揺之

野に出でて秋の花をぞたしかめてとほくきこゆるひぐらしの声

野に出でて秋の花をぞたしかめてとほくきこゆるひぐらしの声　　　　揺之