ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

ノルマンディの風景

2018-06-07 03:27:04 | 絵画


チャールズ・ハリー・イートン(1850-1901)、アメリカ。


木々に囲まれた田舎家がある。空には雲が渡り、手前の池にそれが映っている。

三羽のがちょうが描かれていることがほほえましい。

なつかしい風景だ。

人間はいつもこういう風景の中に生きていたのだ。それがまるで当然のように。


みづに映るあかるきひかりふるさとの古屋にいこふかぞいろの声    揺之






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月の出

2018-06-03 03:20:30 | 絵画


グランヴィル・レッドモンド(1871-1935)、アメリカ。


実際の風景は、こんなに明るくはない。

しかし人の目にはこんな風に見えるのだと言う風景である。

月の光は、人の心の中で、暗い影の中にも忍び込むのだ。

そして夜を明るくする。

人間の心が、月の光を闇にも流すのである。


影を出て月をあふげば身の内のくらき肝さへとほるかと見ゆ    揺之





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静寂

2018-05-29 04:40:14 | 絵画


ローウェル・バージ・ハリソン(1854-1929)、アメリカ。


黄昏だろうか。いや、暁であるに違いない。

夜明け前の静けさに木が立っている。画面の半分を領する水にそれが映っている。

リフレクションはいつも、こことは違う異界を感じさせる。

それは決定的に違う世界でありながら、いつもここによりそっているのだ。

暁の静寂はそれを強く感じさせる。

注意していないと、引き込まれそうになる。


まだ聞かぬしじまの声を空耳の玉にこめつつあかつきを見る    揺之






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アマチュア

2018-05-24 03:34:23 | 絵画


トーマス・アレクサンダー・ハリソン(1853-1930)、アメリカ。


沈みそうな舟に二人の男女が乗って、釣りをしている。

恋も釣りもアマチュアだということだろう。

もちろん、初めから上手に恋ができるやつなどいない。

若いうちは馬鹿なことをしてしまうものだ。

大人の失笑を買うようなことをしてしまっても、若いうちならまだ許される。

冒険はしたほうがいい。


さをぶねをかりてみなもをまよひつつゆくへもしらぬこひを知りけり    揺之






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黒と赤

2018-05-23 03:30:01 | 絵画


ジェームス・マクニール・ホイッスラー(1834-1903)、アメリカ。


女が大変なことになっている。

この時代、多くの女性があまりに汚いことをしすぎて、女性が著しく汚れてしまったらしい。

すべてではないが、見るだけで男がぞっとするほど、女性がいやなものになっているのだ。

女に黒くて汚いものがしみついている。

これは一大危機である。女性は一念発起して、なんとかせねばならない。


みつかひの玉を盗みて身を飾る鵺のあそびのくるしかりけれ    揺之






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コローへのオマージュ

2018-05-20 03:23:39 | 絵画


ヘンリー・ウォード・レンジャー(1858-1916)、アメリカ。


これはカミーユ・コローの「モルトフォンテーヌの思い出」に寄せて描かれたものだろう。

タッチや絵の具の薄さを真似して描かれている。

オマージュというものについて考えてみたい。

芸術家はよくほかの芸術家の作品に刺激されて自分の作品を作ることがある。
それは悪いことではない。
他者の作った作品に感動して学ぶのはよいことだ。

だがそれが時に愚に落ちるのは、馬鹿な作家がたくみに盗んで自分のものにすることがあるからだ。

その境界というのがかなり難しい。

オマージュ作品は、原作者の作品を越えてはならない。勉強させてもらうものとして、腰を低くせねばならない。

そういう態度を明確に表しながら、決して引けを取らない自分の力をも示さねばならない。


人はいさこころにもなくいはやどの月をむかしの野にもとめけむ    揺之






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日没の時間

2018-05-18 03:31:32 | 絵画


アレクサンダー・ヘルウィグ・ワイアント(1836-1892)、アメリカ。


立木の向こうに日が沈もうとしている。

夜のきざしが漂う中、昼の勢力がまだ空を領している。

一日の終わりが安らぎに収束される中で、人々はいつも夕日に見とれるのだ。

この世界はなんと美しいのだろうと、思う。

何もかもがある。


ゆふばえにうれひうすれて見る空のかなたにおはすふしぎなるもの    揺之





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夏、豊かなる牧場

2018-02-26 03:09:32 | 絵画


アルバート・ピンカム・ライダー(1847-1917)、アメリカ。


豊なる牧場というタイトルだが、風景は寂しそうだ。

荒れ地のような風景に、ただ一頭の牛が描かれている。

画面の外にほかの牛がいるのかもしれないが、画家はなぜただ一頭しか描かないのか。

迷いゆく時代のきざしを感じているのか。

それとも、豊かに見えて本当は激しく貧しいこの世界の寂しさを、感じているのか。


あめつちのはてにかすかになりわたる時のうれひを聞くか人の世    揺之





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家畜商

2018-02-17 03:17:24 | 絵画


エリオット・デインジャーフィールド(1859-1932)、アメリカ。


牛を鞭打っている人間が、まるで傷のようだ。

鞭を打たねばこんな商売はできまい。だが、そういうものである自分を痛く苦しんでいる自分もいる。

それでもやらねばならないとき、人は時に、自分がまるごと、何かの傷のようなきついものになるのである。


ころさねば食えぬ生業せおひつつけふも鞭打つおのれの影を    揺之






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自画像

2018-02-06 03:05:44 | 絵画


ジュリアン・オルデン・ウィアー(1852-1919)、アメリカ。


自画像というが、まるで他人を描いているようでもある。

風景画家は自分をも風景のように描くのかもしれない。

いったいこれはだれなのだと、画家自身が疑問を持っているようだ。

実に、それは本当の自分ではなかったのだ。


たそかれの声をかすかにききとめてわれのをはりはかくおとづれむ    揺之






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