ゆふづつのゆふべに君をたづねきて野にひそむ身の夢を語りき

ゆふづつのゆふべに君をたづねきて野にひそむ身の夢を語りき　　　　揺之

渚にてちひさきかひをひろひつつ君思ふ身のあはれなるかな

渚にてちひさきかひをひろひつつ君思ふ身のあはれなるかな　　　　揺之

ねぬなはの苦しきこひの思ひ出にせめて月夜のあふせをねがふ

ねになはの苦しきこひの思ひ出にせめて月夜のあふせをねがふ　　　　揺之

こひわびて死ぬる思ひをうたへどもかへる心もなく去りにけり

こひわびて死ぬる思ひをうたへどもかへる心もなく去りにけり　　　　揺之

嘘をつく君の顔から眼をそらし窓の向こうの青空を見る

嘘をつく君の顔から眼をそらし窓の向こうの青空を見る　　　　揺之

ひこばえのまだあきらめぬ心もて地に倒れ伏す身を立て直す

ひこばえのまだあきらめぬ心もて地に倒れ伏す身を立て直す　　　　揺之

蝉の羽の薄き情けを恨みてはこひのおもひに泣く我が身かな

蝉の羽の薄き情けを恨みてはこひのおもひに泣く我が身かな　　　　揺之

こひに病みあふぐ月夜にうつたへて思ふ人をぞうらむ夜半かな

こひに病みあふぐ月夜にうつたへて思ふ人をぞうらむ夜半かな　　　　揺之

しづかにも窓辺に立ちて月を見る君はうれひをきのふに捨つる

しづかにも窓辺に立ちて月を見る君はうれひをきのふに捨つる　　　　揺之

くりかへし結ぶしらつゆとこしへの神のちぎりの美しきかな

くりかへし結ぶしらつゆとこしへの神のちぎりの美しきかな　　　　揺之