山中にたれ見ることもなきて咲くちひさき百合のしづかな思ひ

山中にたれ見ることもなきて咲くちひさき百合のしづかな思ひ　　　　揺之

亡き人のゆくへ知るやと子はとひて空の星かとこたへてもみる

亡き人のゆくへ知るやと子はとひて空の星かとこたへてもみる　　　　揺之

あまのかはあふぎ見つれば見も知らぬ清き心の降る心地する

あまのかはあふぎ見つれば見も知らぬ清き心の降る心地する　　　　揺之

あかつきの星を拝みてけふの日のうれひをしのぶすべをたづねむ

あかつきの星を拝みてけふの日のうれひをしのぶすべをたづねむ　　　　揺之

さざなみのあはだつ岸にひとりたち海風にとくはてなき思ひ

さざなみのあはだつ岸にひとりたち海風にとくはてなき思ひ　　　　揺之

ぬばたまの夜の小道をひとりゆきあふぐまなこに星空の降る

ぬばたまの夜の小道をひとりゆきあふぐまなこに星空の降る　　　　揺之

踏まれても踏まれてもまた立ち上がる草は人よりえらきものかな

踏まれても踏まれてもまた立ち上がる草は人よりえらきものかな　　　　揺之

ぬばたまの夢の裏にも君を見てとほき心にかなしみおぼゆ

ぬばたまの夢の裏にも君を見てとほき心にかなしみおぼゆ　　　　揺之

くちびるにいつはりを塗り幻のさいはひを食ふ悲しみの人

くちびるにいつはりを塗り幻のさいはひを食ふ悲しみの人　　　　揺之

この春に咲かぬ花をぞ見とがめて訳をたづねて知るうれひかな

この春に咲かぬ花をぞ見とがめて訳をたづねて知るうれひかな　　　　揺之