秋の野に風に揺れつつ立つ君をとほくに見つつ声をしのびき

秋の野に風に揺れつつ立つ君をとほくに見つつ声をしのびき　　　　揺之

浜辺にてあはぬかひをぞたしかめてかなはぬこひのあかしかと見る

浜辺にてあはぬかひをぞたしかめてかなはぬこひのあかしかと見る　　　　揺之

吾がなししきのふの罪を思ひつつうれひの月を見し夜明けかな

吾がなししきのふの罪を思ひつつうれひの月を見し夜明けかな　　　　揺之

君が家をもとめゆきつつ振り向けばとほくにみゆる夕映えの山

君が家をもとめゆきつつ振り向けばとほくにみゆる夕映えの山　　　　揺之

君の目にあはきうれひのもれいでてくちびるをかみしばしもだせり

君の目にあはきうれひのもれいでてくちびるをかみしばしもだせり　　　　揺之

吾が心明かき月夜の野をまよひ去り行く人のおもかげをおふ

吾が心明かき月夜の野をまよひ去り行く人のおもかげをおふ　　　　揺之

窓辺にて月を浴みつつ君思ひ眠れぬ夜にため息をつむ

窓辺にて月を浴みつつ君思ひ眠れぬ夜にため息をつむ　　　　揺之

こひに泣く我が身あはれと身を照らす月さへうらむ秋の長き夜

こひに泣く我が身あはれと身を照らす月さへうらむ秋の長き夜　　　　揺之

かたこひの長きうれひをしのびつつ小窓によりて見る夜半の月

かたこひの長きうれひをしのびつつ小窓によりて見る夜半の月　　　　揺之

草笛を吹きつつ風にたよりせむ野に君を待つひとりのゆふべ

草笛を吹きつつ風にたよりせむ野に君を待つひとりのゆふべ　　　　揺之