見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

南の島の厳しい生活

2009-01-06 22:00:52 | 離島の風景
石垣島の中心部には、コンクリートやブロックの平屋根の立方体家屋が目立つ。

昔ながらの情緒豊かな赤瓦屋根の家は、ところどころに点在するほどになり、
沖縄情緒を求めてきた観光客にとっては寂しい風景だが、
「赤瓦屋根の家は、板に瓦を乗せているので、瓦を抑えているしっくいが古くなって雨漏りもし易くなるし、数年置きに取り替える必要もある。それは大変です」と地元の人は言う。
「何と言っても、コンクリートやブロックの家にしてから、台風の怖さが減った。昔は台風が近づくたびに震えていたですよ」





だから、多くの家が周囲に強いフクギを植えた。
防風林の役目を果たすために。

今でも、赤瓦屋根の昔の家や神社の周囲には、太く頑丈な幹とつやつやした緑の葉を茂らせたフクギの並木が見られる。
台風を避けるために家を低くし、頑丈な塀や生垣で周囲を囲った。



最初、立方体で無機質な石垣島の家並を見たとき、近年の流行で住居を変化させた街の姿だと思ったのは誤解だった。
立方体家屋の多くの窓に無機質さを助長させるかのような格子が張り巡らせてあり、よほど物騒な地域なのかと思ったのだが、金属の格子は、泥棒避けの防犯柵ではなかった。

幼稚園

2Fに滞在中のゲストハウス

幼稚園にも、ゲストハウスの窓も、格子か雨戸が常備されている。
すべては、台風の被害を防ぐためのものだったのだ。
暴風に吹き飛ばされて舞う看板や木々やその他様々な物体からガラスを守るための防護柵となる。
石垣島に訪れる台風の多くは、島の上に長く滞在する。
その間に吹き荒れる勢いは、時に風速70メートル!

「台風が去った後は、街の景色が一変しますよ」と教えてくれたのは、路線バスの運転手さん。
「3年前の大型台風が来たときは、新しく建てたばかりの自分の家が震えました。あれほど恐ろしい経験は初めてでした。」
「年寄りは、台風が近づいたら生鮮品の買い物はしません。停電が何日も続きますから、冷蔵庫は使えなくなりますからね」

島の北端まで行こうと乗った路線バスには、他に乗客が誰もいなかった。
石垣島の路線バス5日間乗り放題で2千円という破格のチケットを買った。
1時間に1本程度のバス路線だが、島の端から端まで1往復すればそれで元がとれてしまう。

バスの運転手さんは、車内マイクを頭から外し、過ぎ去る景色ごとに丁寧に解説してくれた。
島の生活、島の文化、自分の家族のことなどなど。

バス停には待つ人はいないが、それにしてもこんなにしゃべっていていいのかと心配になる頃、バス運行時間表を取り出して自分の腕時計を確認しながら言った。
「ゆんたく(おしゃべり)していると、つい時間を忘れてしまっていけない。遅れるのはいいけど、予定時間より早く停留所を通り過ぎたら大変ですから」

バスが、時刻表より早く行ってしまったという苦情が、バス会社に来ることがある。
1時間に一本程度しか走らないので、逃したらタクシーを呼ぶしかない。
タクシー代の請求書が会社に回ったこともある。

「だから、私は電波腕時計を買ったんですよ。苦情が来ても、自信を持って『あなたの時計が遅れていたんですよ』と主張できますからね」と運転手さん。
それにしても、1時間走って、誰も乗る人のいないバス路線の運転手はそれなりに気苦労があるに違いない。

観光客の多くは、団体バスかレンタカーで移動し、地元の人は家族団らんを家で過ごすためか、年末年始の路線バスは独占状態だ。
そして、どの運転手さんも驚くほど饒舌で人懐こくて、親切だった。

「ここで降りて岬の灯台まで行ってくればいいさ。ちょうどいい頃に終点から戻ってくるから。ちょっと遅れても大丈夫だよ。待っているから。あ、もし何かあったらこの携帯に電話してください」と、運転手さんは名刺をくれた。



もうひとつの疑問に答えてくれたのもバスの運転手さん。
多くの家の屋上に大きなタンクが置いてある。
「水タンクですよ。以前は、水不足で断水が続くので、断水に備えて屋上のタンクに水を溜めていたんです。数年前に大きな貯水ダムができてからは、改善されましたが、島はずっと渇水に悩まされてきました」
南の島の生活は思ったよりずっと厳しい。



それでも、南の島の魅力は、もちろんたくさんある。
「植えれば、自然に成長してどんどん実がなる」とトロピカル・フルーツ・プロジェクトを進行中なのは、滞在中のゲストハウス「ココちゃん」のガーデン。

「でも、熟すまで待っているとカラスに取られるので、パパイヤもバナナも青いうちにとるんです」とは、富山出身の濱さん。
昨年、神戸出身の奥さんと二人でゲストハウスを始めたばかりだ。

お二人も暖かい南の島の気候に魅力を感じてやってきた。
既存の家族用アパートを、何日もかけて壁紙を張り、ふすまを開き戸に替え、自分たちでリフォームした。
愛犬のプードル「ココちゃん」を命名したゲストハウスは、まるで自分の家で過ごすかのような居心地の良さだ。
もう滞在して一週間以上になる。

今日は、ようやく半袖で歩く陽気になった。

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