小関順二公式ブログ

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対照的な光星学院の2人のドラフト候補

2012-03-26 07:09:15 | 2012年センバツ

◇3月25日(日曜日)晴れ・寒~い

センバツ大会/甲子園球場

光星学院3-0北照

  昨年秋の優勝校にして、今大会でも有力校の1つに数えられている光星学院が苦戦した。実績がそれほどない北海道勢が相手なので「油断した」「甘く見た」と言われることが多いと思うが、北照の左腕、大串和弥(2年・左投左打・173/69)が単純によかった。バックスイング途中の上体のねじれが気になるくらいで、フォームに悪いところがないのである。

 戦力が整わない学校の言い訳に「うちは私立と違うから」「うちは(私立でも)有力選手を授業料免除で呼ぶことができないから」があるが、大串は合理的なフォームを追求して完成すれば、変化球の精度が上がるし、全般的なコントロールも充実する、と教えているようだ。

 それは即ち、ドラフトで指名されるくらいの素質がなくても、やる気のある指導者との共同作業さえ実現できれば、到達できるピッチングの境地、と教えているようでもある。ちなみに、大串は中学時代、軟式野球の全国大会に出場しているので無名の中学生だったわけではない。緻密なコントロールを生みだす合理的なフォームは、140キロのストレートを投げるより、追求することが可能な世界、くらいの感覚でご理解いただきたい。

 大串とは正反対の選手が光星学院の4番北條史弥(遊撃手・右投右打・178/73)だ。プロから注目されていながら、合理的なバッティングフォームを追求せず、素質まかせのバッティングを繰り返している、という意味で書いている。昨年秋の明治神宮大会でもそう思ったが、ひと冬越えれば変わってくると思ったので、これまであまり指摘しなかった。しかし、さすがに書かないとまずいだろうと思わされた。

 強い反動をつけて一本足に移行する始動、さらに何かに追い立てられるように性急なステップ、これはストレート狙い以外の何ものでもない。たまたまこういう打ち方をしているわけではない。すべてのボールに対して性急な始動とステップを繰り返しているのだ。

 この日の結果は4打数1安打。1本は2打点つきの二塁打である。何だ、悪くないじゃないか、と言わないでほしい。

  [1]内角ストレート(ストライク)[2]真ん中高めストレート(ファール)[3]外角低めストレート(ボール)[4]内角108キロ縦割れカーブ(引っ張ってファール)[5]内角低めストレート(ボール)[6]内角低めストレート(引っ張ってファール)[7]カーブ⇒下からしゃくってレフト前へポトンと落とす二塁打。

  この打席の内容を見ると、ストレートでも内角球に苦労し、真ん中から外のボールは引っ張る気持ちが強すぎて捉えきれていない。さらに、変化球の対応にも苦労していることがわかる。マスコミは“坂本勇人(巨人)2世”と煽るが、坂本の高校時代はこれほど性急なタイミングの取り方をしていなかった。

 この北條にくらべると、もう1人のドラフト候補、田村龍弘(捕手・右投右打・173/78)は昨年秋よりよくなった。この日の第1打席、無死二、三塁の場面で犠牲フライを放っているが、確実に外野フライを打とうと捕手寄りでボールを捉え、強い押し込みでなるべく飛距離を出して三塁走者を迎え入れようとしているのである。

 相手投手のクイックモーションに対して、タイミングの取り方が早くなるのは直してほしいが、無走者のときはゆったりと始動してステップを出し、緩急に対応して、できるだけ捕手寄りでボールを捉えようとしている。

 守りに注目すると、ボールを捕ってから投げるまでの時間が秋より速くなった。イニング間の二塁送球タイムは1.86秒というのがあり、5回には二盗を企図する走者を落ち着いた送球で刺している。昨年秋には見られなかった田村のよさである。


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