月が改まったので甲子園Review は最後にする。プロ向きを前提としたベストナインは誰か、これがReview最終日のテーマだ。
◇まず投手、候補者は次の通り(*印は左腕)。
秋田教良(光星学院)、歳内宏明(聖光学院)、吉永健太朗(日大三)、釜田佳直(金沢)、原樹理(東洋大姫路)、青山大紀(智弁学園2年)、白根尚貴(開星)、*松本竜也(英明)、北方悠誠(唐津商)
球の速さでは釜田、北方が双璧だろう。釜田は甲子園ではバックスイングに向いながら上体がガクン、ガクンとギアが入るようにのけ反っていたが、アジアAAA選手権のパキスタン戦ではその悪癖が収まり、現在の澤村拓一(巨人)のような軽い“反り”になっていた。
パキスタンは恐ろしく弱いチームだった。そういう相手には速さよりコントロール重視で行こうと決めたことが悪癖解消につながったのだろう。反動は野球選手にとって最も手強い敵。それに打ち勝つ光明が少しだけ見えた。
左腕では松本が圧倒的によく見えた。投手の5大要素を挙げろと言われれば、即座に<投球フォーム、スピード、コントロール、変化球のキレ、上背まで含めた体の強さ>が頭に浮かぶが、松本はその5つをすべて持っていた。右左に関係なく、今大会ナンバーワンと言ってもいいと思う。
◇捕手はまず肩の強さに注目した。イニング間で2秒をコンスタントに切ったのが次の選手たち。
本田幸輝(鶴岡東2年)、山下勇斗(作新学院1年)、近藤健介(横浜)、皆川健太(習志野)、戸嶋一貴(龍谷大平安)、阿部悠二(柳井学園)、高城俊人(九州国際大付)、久永純也(神村学園)
ここには入らないが、肩に一定の強さがあり、キャッチング、バッティングもよかったのが石川亮(帝京1年)と道端俊輔(智弁和歌山)の2人。以上10人の中で最終候補まで残したのが近藤、皆川、高城の3人。アジアAAA選手権まで見れば、ジャパンのホームを死守した近藤を推したくなるが、捕手は走者に当たり負けしないことも重要。初戦で敗退したが攻守+体格のよさで高城を選出した。
◇内野手の各ポジションは次の選手たちを候補にした。
■一塁手…金子凌也(日大三2年)、松山大志(習志野1年)、早津勇人(日本文理2年)、小林義弘(山梨学院大付2年) ■二塁手…佐藤優太(白樺学園2年)、板崎直人(作新学院)、阿部健太郎(帝京2年) ■三塁手…田村龍弘(光星学院2年)、石井一成(作新学院2年)、横尾俊建(日大三)、渡辺雄貴(関西) ■遊撃手…北條史弥(光星学院2年)、佐藤竜一郎(作新学院)、松本剛(帝京)、宮内和也(習志野)、加藤新次(関商工)、幸田健斗(徳島商)、永江恭平(海星)、稲垣翔太(明豊)
一塁部門には下級生が集中したが、金子が準決勝・関西戦の途中でショートを守っているように、将来的にポジションが確定しているわけではない。そういう一時凌ぎの場所として一塁は考えられているようだ。
二塁部門にも下級生が多かった。職人気質の多いポジションなので、せめて若い世代を選んで華々しさを演出したい、と選出するこちら側に色眼鏡があったことは否めない。
三塁は田村と横尾の存在感が圧倒的。アジアAAA選手権で全日本の4番を打った横尾が格から言ってもナンバーワンであることは論を待たない。
遊撃は候補者が多い。最も素質に富み、現時点の力量も上位の選手ほど、監督は遊撃に置きたがる。そういう好選手揃いの中でも守備のよかった佐藤がよく見えた。ドラフト候補の松本は自らのエラーが大逆転負けの引き金になったことがあまりにも印象を悪くしている。
◇外野手は走攻守のバランス+強打を頭に置いて次の選手たちを候補にした。
川上竜平(光星学院)、畔上翔、高山俊(ともに日大三)、高橋大樹(龍谷大平安2年)、北川倫太郎(明徳義塾)、龍幸之介(九州国際大付2年)
強打が印象に残り、走守もいい川上、高山の2人は問題なく選出。あと1人を畔上、高橋、北川の3人で迷い抜いた。打つ形なら畔上だが、甲子園でスランプが長すぎた。北川は2本塁打が強烈にインプットされたが、凡打のときの印象がよくない。初戦で敗退したが、左中間への特大ホームランで度肝を抜いた高橋が最終的に残った。
2011年・選手権ベストナインは次のように決定した。
右投手 釜田 佳直(金沢・右両・178/77)
左投手 松本 竜也(英明・左左・193/78)
捕 手 高城 俊人(九州国際大付・右右・176/79)
一塁手 金子 凌也(日大三2年・右左・180/75)
二塁手 阿部健太郎(帝京2年・右左・176/70)
三塁手 横尾 俊建(日大三・右右・176/86)
遊撃手 佐藤竜一郎(作新学院・右左・180/68)
外野手 川上 竜平(光星学院・右右・181/80)
高山 俊(日大三・右左・181/78)
高橋 大樹(龍谷大平安2年・右右・180/75)
以上の顔ぶれを見ても、今大会が“東高西低”だったことは否めないようだ。