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週刊 お奨め本
2012年11月11発行 第524号
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『化石の分子生物学』 更科功
¥760+税 講談社(講談社現代新書) 2012/7/20発行
ISBN978-4-06-288166-1
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『ジュラシック・パーク』覚えてますか?
琥珀の中の蚊が吸った恐竜の血から、DNAを取り出すという壮大な設定。
いかにも本当に実現できちゃいそうな気がしませんでしたか?
実際のところ、どうなんでしょう。
琥珀からDNAって取り出せるものなんでしょうか。
琥珀以外の化石からはどうでしょう。
というような疑問に本書は答えてくれる。
それ以外の疑問にも。
いやー、スリリングでドラマティック!
読みながら引き込まれましたよ!
本書の幕開け、第一章はネアンデルタール人について。
現生人類はホモ・サピエンス。だけ。
地球上に人類は一種類しかいない。
けれどそれはほんの三万年ほど前からのこと。
人類が誕生したのは約七百万年前。以来、人類はおよそ二十種類ほどいたらしい。
新しい人類が生まれては滅び、生まれては滅んで、最後に残ったのがホモ・サピエンスというわけだ。
ホモ・サピエンスと同時代を生きた最後のもうひとつの人類がネアンデルタール人。ネアンデルタール人の化石からDNAを取り出し、ヒトのゲノムと照合すると…。
こんなことまで、DNAから分かっちゃうんだ!
という驚きの結論が導き出されます。
帯にも書いてあることだから、ここでも書いちゃっていいかな。
> 結論としては、全面的ではなかったにせよ、ネアンデルタール人と現生人類のあいだで交配はおこなわれたのだ。(32頁)
> 私たち日本人も、ネアンデルタール人の遺伝子の一部を、からだの中に受け継いでいるのである。(33頁)
『エイラ地上の旅人』(ジーン・アウル著 ホーム社)の世界だ!
↑ 発行人のお気に入りの古代ファンタジー大河小説。未完(T_T)。
古代DNA研究ってすごい!
この後、第二章ではフランス革命で幽閉されたルイ十七世が本人であったか(替え玉説が根強く残っていた)。
第三章では剥製やミイラからのDNA取り出しについて。
第四章は縄文人の人骨から取り出したDNAを。
第五章ではいよいよジュラシック・パークの夢、コハクからDNAが取り出せるかどうか!
本書のなにがおもしろいって、導き出された結論ももちろんだけど、そこに至るまでの過程。
化石からDNAを取り出すための手順が懇切丁寧に書かれてるんですよ。
実に具体的。
これがまた一筋縄ではいかない。
化石は何千年も何万年も、ヘタすると何億年も地層の中に埋まってるわけで、そのあいだに他の生物(おもに微生物)のDNAが混入してしまう。
かなり保存状態のいい化石でも、取り出されたDNAの90%以上はほかの生物のもの。平均的には99%以上が混入したほかの生物のDNAって、ひえ~。
ようやく取り出したDNAから、ほかの生物のものを取り除いていく地道な作業…。しかも、おめあてのDNAの正体がわかってないんだから、それこそ手さぐり。
ああ、なんだかめまいがしそう。なんてステキ!
こういう作業をコツコツと続ける人ってすごいですよね。うっとりです(*^_^*)。
太古の昔、どんな生物がいたのか、どんな姿で、どんな生きかたをしていたのか。それを教えてくれるのが化石。
化石のなかにある古代DNAや化石タンパク質、そして今生きている生物のDNAから過去を知ろうとする試み。
分子古生物学者たちのたゆまぬ努力の末に、導き出された新発見。あるいは未だ結論の出ない謎への果て無き挑戦。
ロマンです~~。
あ、ルイ十七世とか縄文人とか、化石じゃないじゃん、とお思いでしょうが、これらもすべて、「古代DNA」と呼ぶそうです。
「死んだ生物の遺骸はすべて化石」なんだそうで。
…専門用語って不思議だ。
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化石の分子生物学――生命進化の謎を解く (講談社現代新書) |
更科 功 | |
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