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週刊 お奨め本
2013年10月13日発行 第572号
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『アルビノを生きる』 川名紀美
¥2,200+税 河出書房新社 2013/6/30発行
ISBN978-4-309-02191-1
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アルビノ。先天性白皮症。
メラニンの生合成に関わる遺伝情報の欠損により先天的にメラニンが欠乏する病気。
メラニン色素が足りないために肌が白く、髪や体毛は白や褐色、金色。
目の色も青や茶色、灰色で、視覚障害を伴うことが多く、紫外線に弱い。
本書はアルビノの人々を取材したノンフィクション。
発行人がアルビノという言葉を知ったのは、小説『アイオワ野球連盟』(W・P・キンセラ・著)にて。もう二十年以上前だなあ。つか、この小説に出てくるのは、本当のアルビノじゃなかったけど。ていうか、主人公は「違う」と主張していた。今回、本書を読んで、症状のレベルが違うだけでやっぱアルビノだな、と思いましたけど。
当時はまだアルビノという病気について漠然としか知らなかった。まさか、日本で、いまだにこんな状態だとは知らず、本書を読んでびっくりした。
本書では、日本で今を懸命に生きるアルビノの人々を紹介している。
中心になっているのは、石井更幸という男性。
「白い旅人」というサイトを立ち上げ、全国のアルビノの人たちに情報を発信し、お互いの交流の場を作りあげていく。気が付けば全国のアルビノの人々をつなぐ中心的な人物に。
「世間に対してみっともねえ」「うちの血統にはこういう子はいない」
祖父から存在を否定され、兄に疎まれ、小学校ではいじめられた。
弱視のために黒板の文字が読めず、勉強についていくことも難しい。
なによりも、「アルビノ」という病名を知らず、自分がなぜ人と違っているのかがわからなかった。
自分が何者なのか知りたいと、大学病院で何度も検査を受け、ついに診断結果を手に入れたのが25歳のとき。
「OCA1aチロシナーゼ陰性型白皮症」
日本では、一万人から二万人に一人の割合で生まれるといわれている。が、正確なところはわからない。医学的な診断を受けていない人も多いから。
劣性遺伝で、両親とも保因者である場合に、アルビノの子供が生まれることがある。保因者自体は、日本人50~70人に一人と推定されている。けっこうありふれているんですね。発現率が低い。
アルビノと一口で言っても、その症状はいくつかに分かれる。
共通する症状としては、メラニン色素が不足しているということで、紫外線に弱く、日焼けしやすい。日焼けで体中水ぶくれになることも。
有色人種の場合は、見た目が異なる。この見た目で、日本ではイジメにつながることも多い。
視覚障害があるひとも多い。
前出の石井更幸のほかにも何人も、生涯を紹介している。
当然のことながら、いろんな人生を送っている。
多数派の人々も、一人ひとりの人生はそれぞれ違う。
アルビノの人たちも、イジメを受けた人もいれば、友人に恵まれた人もいるし、勉強ができなかったひともいれば、成績優秀な人もいる。
共通するのは、アルビノという病気に負けずに、懸命に生きているということ。
日本では、まだアルビノという症状を知る人は少ない。
何の根拠もなく、早死にすると言われた人もいる。
医師ですら、病名を知らないことが多い。
理不尽な差別を受けることもある。
家族、親族、教師、級友、勤務先の無理解に、通りすがりの人の視線に、傷つけられながら、立ち向かう人たち。
> 「人とちがうことは武器になる。アルビノに生まれたのは僕の奇跡です。それを市場で活かしたい」(110頁)
> アルビノに生まれたことで、毎日なにかしら苦しい思いをすることに変わりはない。
> しかし、アルビノとともに訪れる幸せというのも、意外と多いような気がするのだ。(150頁)
ここで取り上げられているのはアルビノという病気だけれど、それに限らず、すべての人がどんな理由であれ、本人に責任のない問題で理不尽な目にあうことのないように、あるべき社会を目指していけたら。
> 少数派として生を受ける子どもたち。
> 彼らが自分らしい人生を全うできるように、変わらなくてはならないのは私たち多数派のほうだ。(10頁)
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アルビノを生きる | |
川名 紀美 | |
河出書房新社 |
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