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週刊 お奨め本
2010年５月16日発行 第394号
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『高砂コンビニ奮闘記 悪衣悪食を恥じず』 森雅裕
￥1,500＋税 成甲書房 2010/1/30発行
ISBN978-4-88086-258-3
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君知るや、彼の名を。
1985年、『モーツァルトは子守唄を歌わない』で江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。ちなみにこのとき、東野圭吾が『放課後』で同時受賞。
その後、順調(？)に新作を発表するが、担当編集者とことごとく喧嘩し、出版社を敵に回し、著作は絶版とされ、ここ十年ほどは事実上休筆状態だった。
ミステリ作家としてデビューしたが、ミステリに留まらない幅広い作風を持ち、ファンからの評価は高く、熱心なファンも多い。
が、業界からは認められない。
文壇を締め出される前から、森雅裕は刀鍛冶に手を染めていた。
現在、日本刀関連の金具つくりや彫刻をしているとのことだが、なにしろ需要の少ない世界なので、生活の糧には程遠い。
家賃を滞納し、ホームレス目前だった森が、かろうじて仕事を得たのがコンビニMニSトップ。
人手不足で、とにかく応募してくる奴は全部入れろ、使えない奴だったら辞めさせりゃいい、という勢いのおかげで採用されたとのこと。
というわけで、十年ぶりに森雅裕が出した新作は、コンビニ勤務体験記だった。
十年ぶりだろうがなんだろうが、なんといっても森雅裕。
相変わらずアクの強い性格、失礼極まりない口ぶり、だけど真面目な仕事っぷり。なにをやらせても能力がある、だから無能な人間に対する苛立ちがあるのかな…。
コンビニ勤務経験者にとっては、「わかるわかる、そうそう！」と思えるだろうし、逆に「普通こんなんじゃないよ、ひでぇよ、この店！」かもしれない。
未経験者でもコンビニ利用者ではあるはずだから、「裏ではこうだったのか！」とか「私が普段行くコンビにも実はこう!?」と驚愕するかもしれない。
コンビニって今の時代、ぜんぜん利用せずに生きるのは難しいくらいのものだから、誰でもが関心を持って読める内容になっています。
しかしこの店はあまりにも異常かもしれない…。けっきょく閉店してしまうのも無理ないかもなぁ…。
来店客がひどい、店長がおかしい、店員が個性的すぎる（ちょっと言葉選んでみました）。でもいちばんおかしいのは、コンビニチェーンの本部なんじゃないか。
それにしてもこのクレーマーたちって。え、どこもこんなもん？ コンビニの客ってこんなひどい連中ばかりじゃないよね？
思わず、読了後はコンビニで店員さんに対してねぎらいの言葉をかけたくなりますよ。
なにを書いても達者な文章で読ませる森雅裕。
コンビニ体験記は、随所に現れる森ぶりにハラハラしつつも、基本的にはわりと気楽に読める。シニカルな笑いがちりばめられている。
しかしそれで油断していると。
最終章で森の面目躍如とも言うべき不満爆発大会に突入。
過去の出版社＆編集者との軋轢、信頼していた人からの裏切り、生活苦、etc…
なかでも悲しいのが、小説のための資料ダンボール百五十箱を処分した件りだ。
いつか小説家として復帰する日のために用意してあった資料を捨てることは、作家生命の終わりを意味する…。森は、この本を最期に完全に文章の世界と縁を切るつもりなのかもしれない。
東京新聞（発行人の地域では中日新聞）掲載の書評欄に「最近は彫金に力を注ぐ。コンクールへの出品にも意欲を見せる」とあるが、それは小説に見切りをつけ、彫金一本に絞るという意味なのだろうか。
あまりにも悲しい。
作品が悪くて作家として続かないというなら仕方がないが、よいものを書き、読者に支持されているのに、人間関係が下手なばかりに作家生命を断たれるなんて、そんなことがあっていいのだろうか。
森の著作は現在、ことごとく絶版になっている。乱歩賞受賞作ですら。
今、読めるのは、本作だけ。
読者の皆さん、お願いです。読んでください。
できれば買ってください。
このメルマガで紹介したところでどれだけの効果があるかはわからないけど、わずかなりとも貢献したい。声を上げずにいられない。
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http://www.mag2.com/m/0000099780.html
まぐまぐサイト内では検索がしにくいので、自分の覚えとしてここにもUPしています。
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『高砂コンビニ奮闘記 悪衣悪食を恥じず』 森雅裕
￥1,500＋税 成甲書房 2010/1/30発行
ISBN978-4-88086-258-3
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君知るや、彼の名を。
1985年、『モーツァルトは子守唄を歌わない』で江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。ちなみにこのとき、東野圭吾が『放課後』で同時受賞。
その後、順調(？)に新作を発表するが、担当編集者とことごとく喧嘩し、出版社を敵に回し、著作は絶版とされ、ここ十年ほどは事実上休筆状態だった。
ミステリ作家としてデビューしたが、ミステリに留まらない幅広い作風を持ち、ファンからの評価は高く、熱心なファンも多い。
が、業界からは認められない。
文壇を締め出される前から、森雅裕は刀鍛冶に手を染めていた。
現在、日本刀関連の金具つくりや彫刻をしているとのことだが、なにしろ需要の少ない世界なので、生活の糧には程遠い。
家賃を滞納し、ホームレス目前だった森が、かろうじて仕事を得たのがコンビニMニSトップ。
人手不足で、とにかく応募してくる奴は全部入れろ、使えない奴だったら辞めさせりゃいい、という勢いのおかげで採用されたとのこと。
というわけで、十年ぶりに森雅裕が出した新作は、コンビニ勤務体験記だった。
十年ぶりだろうがなんだろうが、なんといっても森雅裕。
相変わらずアクの強い性格、失礼極まりない口ぶり、だけど真面目な仕事っぷり。なにをやらせても能力がある、だから無能な人間に対する苛立ちがあるのかな…。
コンビニ勤務経験者にとっては、「わかるわかる、そうそう！」と思えるだろうし、逆に「普通こんなんじゃないよ、ひでぇよ、この店！」かもしれない。
未経験者でもコンビニ利用者ではあるはずだから、「裏ではこうだったのか！」とか「私が普段行くコンビにも実はこう!?」と驚愕するかもしれない。
コンビニって今の時代、ぜんぜん利用せずに生きるのは難しいくらいのものだから、誰でもが関心を持って読める内容になっています。
しかしこの店はあまりにも異常かもしれない…。けっきょく閉店してしまうのも無理ないかもなぁ…。
来店客がひどい、店長がおかしい、店員が個性的すぎる（ちょっと言葉選んでみました）。でもいちばんおかしいのは、コンビニチェーンの本部なんじゃないか。
それにしてもこのクレーマーたちって。え、どこもこんなもん？ コンビニの客ってこんなひどい連中ばかりじゃないよね？
思わず、読了後はコンビニで店員さんに対してねぎらいの言葉をかけたくなりますよ。
なにを書いても達者な文章で読ませる森雅裕。
コンビニ体験記は、随所に現れる森ぶりにハラハラしつつも、基本的にはわりと気楽に読める。シニカルな笑いがちりばめられている。
しかしそれで油断していると。
最終章で森の面目躍如とも言うべき不満爆発大会に突入。
過去の出版社＆編集者との軋轢、信頼していた人からの裏切り、生活苦、etc…
なかでも悲しいのが、小説のための資料ダンボール百五十箱を処分した件りだ。
いつか小説家として復帰する日のために用意してあった資料を捨てることは、作家生命の終わりを意味する…。森は、この本を最期に完全に文章の世界と縁を切るつもりなのかもしれない。
東京新聞（発行人の地域では中日新聞）掲載の書評欄に「最近は彫金に力を注ぐ。コンクールへの出品にも意欲を見せる」とあるが、それは小説に見切りをつけ、彫金一本に絞るという意味なのだろうか。
あまりにも悲しい。
作品が悪くて作家として続かないというなら仕方がないが、よいものを書き、読者に支持されているのに、人間関係が下手なばかりに作家生命を断たれるなんて、そんなことがあっていいのだろうか。
森の著作は現在、ことごとく絶版になっている。乱歩賞受賞作ですら。
今、読めるのは、本作だけ。
読者の皆さん、お願いです。読んでください。
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