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週刊 お奨め本
2013年6月23発行 第556号
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『さらば、食料廃棄』
シュテファン・クロイツベルガー&バレンティン・トゥルン(長谷川圭・訳)
¥2,500+税 春秋社 2013/3/20発行
ISBN978-4-393-74153-5
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『世界の食料ムダ捨て事情』 トリストラム・スチュアート(中村友・訳)
¥1,900+税 NHK出版 2010/12/5発行
ISBN978-4-14-081444-4
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食料廃棄とか食品ロスとか、いろんな言い方がありますが。
ひと言で言って「もったいない」。
類書はいろいろ出てますが、今年の本から『さらば、食料廃棄』を。
ついでに補足として『世界の食料ムダ捨て事情』を。『世界の…』は2010年の発行ですが、事情は大きく変わってないから。…変えなきゃいかんのになあ。
本書を読む前から、この問題は気になってて、だからこそこれらの本を読んだわけですが、それにしても、発行人が漠然と感じていた「もったいない」は、とてもじゃないけどレベルが違った。
> ヨーロッパとアメリカでの余剰と廃棄を半分にするだけで、世界の飢餓を撲滅するために必要な量の三倍の食料品を確保できるのだ。(『さらば、食料廃棄』221頁)
半分で三倍!
いくらなんでもひどすぎるだろ、それ。
> 食品の生産には、莫大なエネルギーが費やされている。地球全体の水消費量の約四分の一もの量が、廃棄される運命にある食料品の生産に使用されている。また、世界の気候にも甚大な影響を与え、温室効果ガスのじつに三分の一が、食料品の生産により発生する。(『さらば、食料廃棄』18頁)
バーチャルウォーターも温室効果ガスも、地球環境における喫緊の課題として、対策を講じることが求められてますが、なんだよ、食料廃棄問題をなんとかすれば、かなりの部分なんとかなっちゃうんじゃないの?
だったらなんとかしようよ!
今の時点で、世界の食糧生産(収穫)高をカロリー換算すると、全人類が必要とするエネルギーを三分の一ほど上回っているのだそうだ。公平に分配されさえすれば、世界から飢餓は消える。
これは先進国のあまり物を途上国へ持っていこうということじゃないですよ(そんなことしてる間に傷むし)。
先進国が、必要以上に大量の食品を確保しようとしなければ、途上国の土地でその国の人々が食べるための食品を生産することが可能になる、ということ。
たとえばカメルーンでヨーロッパ向けのバナナ農場をつくれば、単一栽培で土地はやせ、本来だったら土地の人々の口に入る筈だった多様な作物が奪われることになる。
穀物を使ったバイオエタノール開発が、穀物相場を高騰させて物議をかもしたのも記憶に新しい。これだって食料のムダ捨てと同じ。
びっくりしたのは、食料廃棄問題が途上国にも起きているってこと。
これは余剰を捨てるんじゃなくて、インフラが整備されてないために、貯蔵や物流段階で腐らせちゃうことが多いから。
正しい援助をすれば、こんなの簡単に防げるのに!
と、地球規模的な怒りが湧くわけですが、とりあえず身近な問題として、いちばん気になるのは家庭の生ごみ。
と言いたいところだけど、実はけっこう、スーパーとかで廃棄される余剰食品が気になる!
発行人はこれらの本で、「フリーガニズム」という言葉を知りました。フーリガンじゃないですよ(笑)。
スーパーなどで捨てられた、じゅうぶん食べられる食品を回収して食べる運動のこと。
去年5月に『ぼくはお金を使わずに生きることにした』という本をご紹介しましたが、著者のマーク・ボイルがコレでした。
『さらば、食料廃棄』はもともと『テイスト・ザ・ウェイスト(ゴミを召し上がれ)』という映画を補うために書かれた本。
スーパーのゴミ箱の中に、手つかずのクッキーやサンドイッチのパックや容器に入ったままの卵やソーセージやチーズやジャガイモや小麦粉の袋やパスタやドレッシングやテレビディナーが入っている映像は、なんたってインパクトありますもんね。
なんてもったいないんだ!
製造段階の無駄も負けてない。
『世界の食料ムダ捨て事情』の口絵カラー写真のなかの、食パンの耳の山の写真には、「これください!」と本に向かって叫びそうになりましたよ。
パン工場で、サンドイッチを作った後の耳を捨ててるんです。食パンでいちばんおいしいのは耳だと思うんですけどね、私は。近所にこんなパン工場があったら貰いに行っちゃうよ(爆)。
見渡す限りのトマト、オレンジ、ホウレン草の写真も目を剥く。
日本でも過剰生産で値崩れが起きると野菜を潰しちゃったりするのがニュースになりますよね。ううう、もったいない。
アメリカではわりと一般的なフードバンクのシステムが、日本でももうちょっと根付くといいなあ、と個人的には思います。
と、いちいち日本にひきつけて考えちゃうんですけど、だって日本って、食料自給率が39%(カロリーベース)という輸入に頼っていながら、食品ロスもまた高率。
> 日本国内における年間の食品廃棄量は、食料消費全体の2割にあたる約1,800万トン。このうち、売れ残りや期限切れの食品、食べ残しなど、本来食べられたはずの、いわゆる「食品ロス」は500万トン~800万トンとされています。これは、我が国におけるコメの年間収穫量(平成24年約850万トン)に匹敵し、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料援助量(平成23年で年間約390万トン)を大きく上回る量です。また、日本人1人当たりに換算すると、"おにぎり約1~2個分"が毎日捨てられている計算となります。
上記は政府広報より抜粋。
やっぱなんとかせんといかんですよ。
自分では、「私はそんなに捨ててない」と他人ごとのように感じてしまいがちなのだけど、どこの国の人たちも自分の廃棄量は少なく見積もる傾向があるそうです。
思ってる以上に捨ててるのかも。
あなたもそうかもしれませんよ?
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