EDSAC (1949年)
拡大写真
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「アポロに搭載された計算尺(Pickett N600-ES)」という記事で、アポロ司令船に搭載されていたAGC(Apollo Guidance Computer)というコンピュータについて触れた。
1960年代のコンピュータって、いったいどれほどのものだったのだろうか?上記のアポロ誘導コンピュータは初期の集積回路(IC)を数千個使って作られたことがウィキペディアの記事に書かれている。世界最初のコンピュータが開発されたのは1940年代で、真空管が使われていたのだからアポロ計画までの20年の間に格段に進化していたことには違いない。
一般的には世界最初のコンピュータは1946年のENIACであるとされているが、「最初のコンピュータ」というページによると「世界最初」という基準はいくつかあって、どれが最初なのかは微妙なところなのだ。
2017年11月11日に追記:
コメント欄を通じてhirotaさんからご連絡いただきました。現在、世界初のコンピュータはENIACではなくABC(Atanasoff Berry Computer)と考えられているそうです。
1942年、世界初のデジタルコンピューター「ABC」(PCの起源と歴史)
http://www.first-pclife.com/pczatugaku/pcrekisi.html
このページによると、「ノイマン型」で世界最初の「汎用」コンピュータということならば1949年のEDSACが世界最初のコンピュータということになる。「汎用」とは自由にプログラミングできるという意味だ。EDSACは真空管を3000本も使用したケンブリッジ大学が開発したコンピュータで消費電力は12kW、設置面積は20平方メートルだった。(記事トップの写真がEDSAC)それでも17500本の真空管を使い、消費電力が150kWのENIACよりはだいぶ「小型化」されている。
EDSACの詳細:
http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/history/edsac.html
モニター部(クリックで拡大)
プログラムを読み込むためのテープ・リーダー
その他のEDSACの写真はこのページで見ることができる。
EDSACのクロック周波数は500KHzだったので、1秒間にほぼ 50万回の命令を実行できるが、メモリアクセスが遅いため、 実際に1秒間に実行できる命令は、平均すると650回だったという。
1940年代のコンピュータが動く様子など見れるはずもなく、このような資料写真だけでしかわからないのだろうなと思っていたところ、なんとEDSACについてはエミュレータ・ソフトがあることがわかった。無料ソフトである。
EDSAC Simulator
http://www.dcs.warwick.ac.uk/~edsac/
WindowsやLinuxであれば簡単にインストール、実行することができる。素数の計算やハノイの塔などサンプルプログラムも9つダウンロード、実行できるので、EDSACの動作を自分のパソコンで見ることができるのだ。
スペースインベーダーのアニメーション(クリックで拡大)
EDSAC上で開発された三目並べのグラフィカルバージョンである「OXO(○?ゲームのこと)」が画面写真が残っている世界初のコンピュータゲームである。OXOの詳細は次のページを参照いただきたい。
Noughts And Crosses - The oldest graphical computer game
http://www.pong-story.com/1952.htm
ブラウザ上で動くEDSACも見つけた。
ブラウザ上で動くEDSACシミュレータを公開しました
http://d.hatena.ne.jp/nishiohirokazu/20120910/1347256998
EDSAC Simulator on browser
http://nhiro.org/learn_language/EDSAC-on-browser.html
EDSACでのプログラミングは次のページで学ぶことができる。
EDSACのプログラム技法
http://parametron.blogspot.jp/2012/09/edsac.html
http://parametron.blogspot.jp/2012/09/edsac_28.html
http://parametron.blogspot.jp/2012/10/edsac.html
EDSAC Initial Orders and Squares Program (PDF)
http://www.cl.cam.ac.uk/~mr10/edsacposter.pdf
このコンピュータを開発したケンブリッジ大学コンピュータ研究所では1999年にEDSACコンピュータ開発50周年を記念して会議が開催された。
EDSAC 99
http://www.cl.cam.ac.uk/conference/EDSAC99/
2011年1月にはEDSACのレプリカを開発しようというプロジェクトが始まったそうだ。このプロジェクトはその後どうなったのだろう?
電子計算機保存協会はEDSACのレプリカが英国のBletchley Park博物館に設置予定
http://new.go-th.net/Entry/10/
The EDSAC Replica Project
http://www.edsac.org/
このEDSACシミュレータをインストールして、真空管時代のコンピュータに思いを馳せてみてはいかがだろうか?
シミュレータにはJavaアプレットで動くものもあるので試してみるとよいだろう。
EDSAC simulators
http://www.cl.cam.ac.uk/conference/EDSAC99/simulators/
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コメントありがとうございます。
80年代の大学でEDSACプログラミングやタイガー計算機が教えられいたというのは驚きです。
関数電卓やプログラミング電卓が利用可能な時代でしたからね。
「変態学科」は、担当教官の趣味趣向が色濃く押し出された結果だったのですね。でも、今の時代からみるとそのように遊び心たっぷりの授業は羨ましい気がします。
EDSACシミュレータは 教育用なら東京農工大学、数理情報工学科(当時名称)で
80年ごろには動いていたと思います。
わたしはそこのOBですが 強制的にEDSACのプログラミング教わったので
例の IIT (イニシャル・インプット・ルーチン)もちゃんと読めます。(読めました?過去形?)
他に芸もありませんが、タイガー計算機は教わりました。
なんつう変態学科!(笑)