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「宇宙がわかる17の方程式―現代物理学入門:サンダー バイス」
内容紹介
数式が明かす宇宙の豊かな秘密。万有引力、マクスウェル方程式から、相対性理論、超弦理論まで、明快にして美しくもある方程式の数々―。それは、自然界の仕組み・法則を解明しようとした知性の結晶に他ならない。無機的と見られがちな数式に潜む豊かで深遠な宇宙の法則を、エピソードをまじえて簡潔に語る、早わかり現代物理学入門。2006年8月刊行。
理数系書籍のレビュー記事は本書で218冊目。
もともとオランダ語で書かれた本なのだそうだが、翻訳の元になった英語版は「The Equations: Icons of Knowledge: Sander Bais」として2005年に出版されていた。アムステルダム大学の理論物理学者による一般向け物理学入門書だ。今回「世界を変えた17の方程式:イアン・スチュアート」との比較の意味で読んでみた。
全体で190ページあるが、小型本なので情報量としては少ない。週末にまとまった時間が取れれば読み終えられる分量だ。
紹介されている17の方程式は次のとおり。(リンクはそれぞれウィキペディアの記事)
1 興亡の方程式(ロジスティック方程式)
2 力学と重力(ニュートンの運動方程式と万有引力の法則)
3 電磁気力(ローレンツ力の法則)
4 局所的保存則(連続の方程式)
5 電気力学(マクスウェル方程式)
6 電磁波(波動方程式)
7 孤立波(コルトベーク‐ド・フリース方程式)
8 熱力学(熱力学の三法則)
9 気体分子運動論(ボルツマン方程式)
10 流体力学(ナヴィエ‐ストークス方程式)
11 特殊相対性理論(相対論的運動学)
12 一般相対性理論(アインシュタイン方程式)
13 量子力学(シュレーディンガー方程式)
14 相対論的電子(ディラック方程式)
15 強い力(量子色力学)
16 電弱相互作用(グラショー‐ワインバーグ‐サラム・モデル)
17 弦理論(超弦作用)
全体的な満足度は100点満点中65点というところだった。感じたことを箇条書きすると次のようになる。
よかった点:
- 現代物理学を構成する分野にどのような種類があり、どのような関係でつながっているかを大まかに知ることができる。
- 場の量子論、素粒子物理学、超弦理論など高度な物理学で使われる方程式が「鑑賞」できる点。相対性理論や量子力学の方程式は見たことがあるけれども、最先端の物理学で導かれた方程式を見てみたいという方にはうってつけだ。
不満が残った点:
- 説明が簡潔過ぎて一般読者にはほとんど理解できないと思った。「簡潔」と言っても易しく書きなおしているわけではなく、専門用語が多く含まれた「無駄のない記述」になっている。理数系の大学生ならば難なく読めるが、一般読者には2~3割しか理解できないだろう。
- 対象読者がわからない。本の体裁は「一般読者向け」であるが、記述内容は一般書のレベルをはるかに超えている。この本の「はじめに」の中で「本書の目的は、正確な意味での数学を教えることでも物理学を教えることでもない。」と宣言しているが、だとしたら「説明」の部分は誰のために書いたの?と思えてしまうのだ。
- 記述の論理的なつながりがずさんだと思った。専門用語を使った説明が簡潔過ぎるために、一般読者には文章ごとの論理関係がわかりにくくなっている。専門家にとっては自明な「行間を埋める知識」が不足しているからだ。
- 盛り上がり、高揚感に欠けている。読者の関心を引き出すためには「話の積み上げ」が必要で、それにはある程度長い文章で説明することが必要だ。本書は各章に割り当てられているページ数が少ないために、せっかく話が盛り上がりかけても中途半端に終わってしまっている。
- なぜ最初に「ロジスティック方程式」が紹介されるのか意味不明。この方程式は生物学系、人口統計学系のものだ。本書は現代物理学への入門書なのになぜこの方程式を取り上げているのかについての説明がない。
- 科学史本、科学者の伝記本としてはお粗末過ぎ。もう少し詳しく調べて、ていねいに書いてほしかった。
このようなわけで、お読みになるのであればこの本は「方程式鑑賞用」、「方程式ギャラリー」なのだと割りきったほうがよいだろう。
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「宇宙がわかる17の方程式―現代物理学入門:サンダー バイス」
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1 はじめに
自然界の言語――数学 / 方程式 / 流行りの定説 / 法則と秩序 / 単純な方程式と複雑な方程式
変数と定数 / 鳥の目で見る / 本書をどのように読めばよいか / 「目次の地図」
2 多用される数学的道具
数学的階層性 / 量に関する言葉――変数、関数、場 / 逆の発想
変化を表わす言葉――微分 / 差を足し合わせること――積分
3 興亡の方程式 ロジスティック方程式
歴史的ノート / ある帝国の衰亡
4 力学と重力 ニュートンの運動方程式と万有引力の法則
非線形動力学とカオス / ニュートンの遺産 / アイザック・ニュートン
エネルギー保存則 / 科学の三角関係
5 電磁気力 ローレンツ力の法則
ヘンドリック・アントーン・ローレンツ / ベクトルの掛け算
6 局所的保存則 連続の方程式
遅い流動
7 電気力学 マクスウェル方程式
ジェームズ・クラーク・マクスウェル / 力くらべ / 線形性
磁気単極子――あるべきか、あるべきでないか / 電磁エネルギー
8 電磁波 波動方程式
エーテル
9 孤立波 コルトベーク‐ド・フリース方程式
コルテヴェークとド・フリース
10 熱力学 熱力学の三法則
歴史的ノート / 遂行不能任務 / エントロピーと情報
11 気体分子運動論 ボルツマン方程式
歴史的ノート / 創発的性質
12 流体力学 ナヴィエ‐ストークス方程式
ナヴィエとストークス
13 特殊相対性理論 相対論的運動学
アルバート・アインシュタイン / マクスウェル対ニュートン
14 一般相対性理論 アインシュタイン方程式
七つの予言
15 量子力学 シュレーディンガー方程式
エルヴィン・シュレーディンガー / 光子――光の粒子 / 位置‐運動量の二重性
16 相対論的電子 ディラック方程式
量子電気力学 / ポール・ディラック / 場の量子
17 強い力 量子色力学
歴史的ノート / ラグランジアン / 漸近的自由性
18 電弱相互作用 グラショー‐ワインバーグ‐サラム・モデル
歴史的ノート
19 弦理論 超弦作用
歴史的ノート / 時空の究極的構造 / ブレーンとM理論
20 バック・トゥ・ザ・フューチャー 最終的展望
単位
訳者あとがき
[著者] サンダー・バイス(Sander Bais)
オランダ・アムステルダム大学で教鞭をとる理論物理学者。量子論から超弦理論までを守備範囲とするが、科学の楽しさ・物理的の面白さを多くの人々に伝える活動にも専念。
[訳者] 寺嶋英志(てらしま・ひでし)
1941年、旧満州・奉天生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。海外での石油探鉱・開発に30年間従事したのち退職。現在、日本エネルギー経済研究所客員研究員。浜松大学非常勤講師。主なる訳書に、J・カスティ 『プリンストン高等研究所物語』、J・K・レイドラー 『宇宙はなぜ美しいのか』、M・ダネージ 『世界でもっとも美しい10の数学パズル』(いずれも、青土社)ほか。
内容紹介
数式が明かす宇宙の豊かな秘密。万有引力、マクスウェル方程式から、相対性理論、超弦理論まで、明快にして美しくもある方程式の数々―。それは、自然界の仕組み・法則を解明しようとした知性の結晶に他ならない。無機的と見られがちな数式に潜む豊かで深遠な宇宙の法則を、エピソードをまじえて簡潔に語る、早わかり現代物理学入門。2006年8月刊行。
理数系書籍のレビュー記事は本書で218冊目。
もともとオランダ語で書かれた本なのだそうだが、翻訳の元になった英語版は「The Equations: Icons of Knowledge: Sander Bais」として2005年に出版されていた。アムステルダム大学の理論物理学者による一般向け物理学入門書だ。今回「世界を変えた17の方程式:イアン・スチュアート」との比較の意味で読んでみた。
全体で190ページあるが、小型本なので情報量としては少ない。週末にまとまった時間が取れれば読み終えられる分量だ。
紹介されている17の方程式は次のとおり。(リンクはそれぞれウィキペディアの記事)
1 興亡の方程式(ロジスティック方程式)
2 力学と重力(ニュートンの運動方程式と万有引力の法則)
3 電磁気力(ローレンツ力の法則)
4 局所的保存則(連続の方程式)
5 電気力学(マクスウェル方程式)
6 電磁波(波動方程式)
7 孤立波(コルトベーク‐ド・フリース方程式)
8 熱力学(熱力学の三法則)
9 気体分子運動論(ボルツマン方程式)
10 流体力学(ナヴィエ‐ストークス方程式)
11 特殊相対性理論(相対論的運動学)
12 一般相対性理論(アインシュタイン方程式)
13 量子力学(シュレーディンガー方程式)
14 相対論的電子(ディラック方程式)
15 強い力(量子色力学)
16 電弱相互作用(グラショー‐ワインバーグ‐サラム・モデル)
17 弦理論(超弦作用)
全体的な満足度は100点満点中65点というところだった。感じたことを箇条書きすると次のようになる。
よかった点:
- 現代物理学を構成する分野にどのような種類があり、どのような関係でつながっているかを大まかに知ることができる。
- 場の量子論、素粒子物理学、超弦理論など高度な物理学で使われる方程式が「鑑賞」できる点。相対性理論や量子力学の方程式は見たことがあるけれども、最先端の物理学で導かれた方程式を見てみたいという方にはうってつけだ。
不満が残った点:
- 説明が簡潔過ぎて一般読者にはほとんど理解できないと思った。「簡潔」と言っても易しく書きなおしているわけではなく、専門用語が多く含まれた「無駄のない記述」になっている。理数系の大学生ならば難なく読めるが、一般読者には2~3割しか理解できないだろう。
- 対象読者がわからない。本の体裁は「一般読者向け」であるが、記述内容は一般書のレベルをはるかに超えている。この本の「はじめに」の中で「本書の目的は、正確な意味での数学を教えることでも物理学を教えることでもない。」と宣言しているが、だとしたら「説明」の部分は誰のために書いたの?と思えてしまうのだ。
- 記述の論理的なつながりがずさんだと思った。専門用語を使った説明が簡潔過ぎるために、一般読者には文章ごとの論理関係がわかりにくくなっている。専門家にとっては自明な「行間を埋める知識」が不足しているからだ。
- 盛り上がり、高揚感に欠けている。読者の関心を引き出すためには「話の積み上げ」が必要で、それにはある程度長い文章で説明することが必要だ。本書は各章に割り当てられているページ数が少ないために、せっかく話が盛り上がりかけても中途半端に終わってしまっている。
- なぜ最初に「ロジスティック方程式」が紹介されるのか意味不明。この方程式は生物学系、人口統計学系のものだ。本書は現代物理学への入門書なのになぜこの方程式を取り上げているのかについての説明がない。
- 科学史本、科学者の伝記本としてはお粗末過ぎ。もう少し詳しく調べて、ていねいに書いてほしかった。
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1 はじめに
自然界の言語――数学 / 方程式 / 流行りの定説 / 法則と秩序 / 単純な方程式と複雑な方程式
変数と定数 / 鳥の目で見る / 本書をどのように読めばよいか / 「目次の地図」
2 多用される数学的道具
数学的階層性 / 量に関する言葉――変数、関数、場 / 逆の発想
変化を表わす言葉――微分 / 差を足し合わせること――積分
3 興亡の方程式 ロジスティック方程式
歴史的ノート / ある帝国の衰亡
4 力学と重力 ニュートンの運動方程式と万有引力の法則
非線形動力学とカオス / ニュートンの遺産 / アイザック・ニュートン
エネルギー保存則 / 科学の三角関係
5 電磁気力 ローレンツ力の法則
ヘンドリック・アントーン・ローレンツ / ベクトルの掛け算
6 局所的保存則 連続の方程式
遅い流動
7 電気力学 マクスウェル方程式
ジェームズ・クラーク・マクスウェル / 力くらべ / 線形性
磁気単極子――あるべきか、あるべきでないか / 電磁エネルギー
8 電磁波 波動方程式
エーテル
9 孤立波 コルトベーク‐ド・フリース方程式
コルテヴェークとド・フリース
10 熱力学 熱力学の三法則
歴史的ノート / 遂行不能任務 / エントロピーと情報
11 気体分子運動論 ボルツマン方程式
歴史的ノート / 創発的性質
12 流体力学 ナヴィエ‐ストークス方程式
ナヴィエとストークス
13 特殊相対性理論 相対論的運動学
アルバート・アインシュタイン / マクスウェル対ニュートン
14 一般相対性理論 アインシュタイン方程式
七つの予言
15 量子力学 シュレーディンガー方程式
エルヴィン・シュレーディンガー / 光子――光の粒子 / 位置‐運動量の二重性
16 相対論的電子 ディラック方程式
量子電気力学 / ポール・ディラック / 場の量子
17 強い力 量子色力学
歴史的ノート / ラグランジアン / 漸近的自由性
18 電弱相互作用 グラショー‐ワインバーグ‐サラム・モデル
歴史的ノート
19 弦理論 超弦作用
歴史的ノート / 時空の究極的構造 / ブレーンとM理論
20 バック・トゥ・ザ・フューチャー 最終的展望
単位
訳者あとがき
[著者] サンダー・バイス(Sander Bais)
オランダ・アムステルダム大学で教鞭をとる理論物理学者。量子論から超弦理論までを守備範囲とするが、科学の楽しさ・物理的の面白さを多くの人々に伝える活動にも専念。
[訳者] 寺嶋英志(てらしま・ひでし)
1941年、旧満州・奉天生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。海外での石油探鉱・開発に30年間従事したのち退職。現在、日本エネルギー経済研究所客員研究員。浜松大学非常勤講師。主なる訳書に、J・カスティ 『プリンストン高等研究所物語』、J・K・レイドラー 『宇宙はなぜ美しいのか』、M・ダネージ 『世界でもっとも美しい10の数学パズル』(いずれも、青土社)ほか。
これは、読みたい!!
でも、世界を変える~でもそうですが、17という数字に何か意味があるのでしょうか(^^)。
こちらこそ記事をお読みいただき、ありがとうございます。
なぜ17なのかはどちらの本にも書かれていませんでした。
標準模型の範囲での素粒子の数は17ですが、これとは関係ないでしょうね。
偶然どちらも17なのでしょう。きっと。。。
雑誌「セブンティーン」
「永遠の17歳」
「U-17」17 歳以下サッカー
タロットカード17は「星」
タロットカードには18月,19太陽,21世界もあるけど星が近いのかな。
こういうページを見つけました。
たった1枚に込められたクリエイティブすぎる17個の広告
http://creive.me/archives/2322/
「こんなものまで借りれるの!?意外なレンタルサービスまとめ」の驚いた顔もいいですね。
でも消火器のレンタルて…
このページのことですね。
http://creive.me/archives/2177/
消火器って数年毎に買い換えなければいけないので、レンタルというのもいいかもしれません。
レンタルサーバーというのがあり、僕もさくらのVPSのサーバーを1つ借りていますが、CPU負荷を長時間かける使い方はしてはいけないことになっています。
1日単位でもよいからスパコン並みの超高速Linuxマシンが個人でも借りられればよいのになと思っています。法人や学校向けのサービスはありますが個人用のはまだ見たことがありません。
そろそろ出来ても良いと思うんですが。
> 個人が協力者を集めやすくするサービス
そういう発想は新しい気がします。分散コンピューティング以外の分野にも拡大すればビジネスとして成り立つと思いました。