
左:CASIO fx-201P (1976), 右:fx-202P (1976)
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2019年6月10日に追記:
その後、Konan16様からコメント欄を通じて日本初のポータブル・プログラム関数電卓はSHARP PC-1001 (1973)だということを教えていただいた。つまりCASIO fx-201P (1976)、fx-202P (1976)は「カシオ初の~」ということになる。詳細はこの記事の最後をお読みいただきたい。
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待ちに待ったfx-202P (1976)。ようやく落札することができた。fx-201P (1976)のほうは数年前に入手していたので、これで2つとも揃った。仲良く記念撮影。
何がポイントかというと「日本初のプログラム関数電卓」ということなのだ。これ以前にもプログラム電卓は出てはいたが関数付きではなかった。
201Pは電源を切ると自分で入力したプログラムは消えてしまう。202Pのほうはプログラム保護回路が入っているので消えない。
「世界初」、「日本初」といってもいろいろある。関数電卓、プログラム電卓について年代順にはこのようになる。
世界初の卓上プログラム電卓 CASIO AL-1000 (1967): 価格328,000円。12.3Kg。(詳細)
世界初の卓上プログラム関数電卓 HP-9100A (1968):価格5000ドル。(詳細)
世界初のポータブル関数電卓 HP-35 (1972):価格395ドル。(詳細)
日本初の卓上関数電卓 CASIO fx-1 (1972):価格32万5千円(詳細)
日本初のポータブル関数電卓 CASIO fx-10 (1974):価格24,800円。(詳細)
日本初のポータブル・プログラム関数電卓 CASIO PRO-101 (1976), CASIO fx-201P (1976), fx-202P (1976), CASIO PRO fx-1 (1976)(動画)
世界初の手帳型プログラム関数電卓 CASIO fx-501P (1979), fx-502P (1979):(紹介記事)
日本初のポータブル・プログラム関数電卓のところに4機種書いたのは、どれも同じ年に発売されたからだ。順番はこのページの次の写真を参考にした。

CASIO PRO-101 (1976):4万9800円。256ステップ。(詳細1、詳細2)
CASIO fx-201P (1976):2万9000円。127ステップ。電源を切るとプログラムも消えた。(詳細1、詳細2)
fx-202P (1976):3万9千円。fx-201Pにプログラム保護回路を内蔵したもの。(詳細)
PRO fx-1はPRO-101に磁気カードリーダーがついた機種(詳細)(動画)
厳密に言えばPRO-101が日本初なのだろうけど、これら4機種は同じ年に発売されたのでどれも日本発と言ってよいだろう。PRO-101の「PRO」は「プログラム」ということなのだろう。
fx-201Pとfx-202Pのサイズはこれくらい。

同じ年に発売されたfx-19 (1976)はプログラミング機能がない関数電卓だ。以前「70年代の関数電卓:CASIO fx-10 (1974)、fx-15 (1975)、fx-19 (1976)」という記事から動画付きで紹介している。この電卓はその後、近所に住んでいる知人に譲ってしまったのだが、写真を撮るために借りてきた。以下、写真をクリックすると拡大する。
デザインがよく似ていて左がfx-19だ。2の平方根を計算するとどちらも瞬時に表示される。有効桁数に違いがあるのがわかる。

次に2の立方根。どちらも0.5秒くらいで表示されるが有効桁数は8桁。指数・対数、べき乗関数の計算速度、有効桁数は同じだった。計算回路が同じだと思われる。

三角関数とその逆関数には大きな違いが見られた。fx-19では1秒かかり、fx-201Pでは1.5秒もかかる。有効桁数はfx-201Pのほうが1桁多い。写真はsin 35°の計算結果。

せっかくなので簡単なプログラムを作って計算速度を調べてみた。操作マニュアルはネットを探しても見つからないが、幸いこの電卓をお持ちの方が、次のようなページで説明してくださっているから、プログラミングも含めて必要な操作方法は学ぶことができた。
CASIOの古いプログラム関数電卓 fx-201P
http://kyoro205.blog.fc2.com/blog-entry-496.html
fx-201Pでのプログラミング (1)
http://kyoro205.blog.fc2.com/blog-entry-499.html
fx-201Pでのプログラミング (2)
http://kyoro205.blog.fc2.com/blog-entry-500.html
カシオ CASIO fx-201P 修理 奇妙なプログラム言語
http://keikato.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/auto.html
実に奇妙なプログラム方法だ。プログラム言語というより、キーを押す手順をそのまま記録するマクロのようなもの。編集モードではキーステップの挿入や削除もできず、上書きされてしまうので、修正したいときはいったん全部消してから入力しなおすのがいちばん早い。それに7セグメント表示だと、何のキーのことが表示されているのかさっぱりわからない。
とりあえずベンチマークは長方形近似を使い、この定積分の計算をfx-202Pでしてみることにした。

この面積を求めるわけである。

現時点で最新、最上位モデルの関数電卓 fx-JP900 だとあっという間に高精度の答が表示される。

メモリー割り当てとアルゴリズムはこのようにした。

この電卓の流儀でプログラムするとこのようになる。最大128ステップ組めるのだが、これだけで68ステップ使ってしまった。

実行結果が表示されたところ。(10分割で計算した例)

分割数を変えて実行した結果がこちら。正確な値は0.738642998である。

とにかく遅い。1000分割では58分もかかっている。ループ1回につき3.5秒だ。原因は三角関数の計算に時間がかかっているためだと思われる。
sinとcosの箇所をスキップ(計算省略)して100分割で実行したところ63秒で計算が終わってしまった。計算を省略しないときが348秒だったので、全計算時間の82パーセントが三角関数に使われていることになる。
1回のループでsinとcosの計算はそれぞれ1回ずつ行われている。sinの計算1回あたりにかかる時間は1.43秒だ。fx-19と比べたときマニュアル操作で測った時間とほぼ一致した。
計算がこれほど遅くてもただの関数電卓よりはずっとましだ。パソコンがなかった当時、繰り返し計算が必要な科学技術計算をするときには、とても役に立っていたのだろう。
今回のテストはこれでおしまいにするが、プログラム関数電卓は後継機をいくつか持っているので、近いうちに同じ計算をしてその後の技術発展を確認したい。
所有している電卓や電卓アプリ、エミュレータなどはこれまでにたくさん記事を書いているので、興味のある方は「iPhone、携帯、電卓」というカテゴリーからお読みいただきたい。
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2019年6月10日に追記:
その後、Konan16様からコメント欄を通じて日本初のポータブル・プログラム関数電卓はSHARP PC-1001 (1973)だということを教えていただいた。つまりCASIO fx-201P (1976)、fx-202P (1976)は「カシオ初の~」ということになる。
SHARP PC-1001 (1973)
1973年に発売された関数計算用・電子計算尺<ディジタル・ルール>。
三角関数。逆三角関数、双曲線関数、対数、指数など15種の関数がワンタッチキー操作で即座に求められる。さらにプログラム機能が付いており最高64ステップのプログラム機能が使える。
129,000円。
また翌年のには後継機のSHARP PC-1002 (1974)が発売されている。
SHARP PC-1002 (1974)
PC-1001と同様、15種の組込み関数及び12種の組込みプログラムを装備し、科学技術計算がワンタッチでできた。また、64ステップのプログラム機能が付いており、複雑・高度な反復計算が可能で、測量、土木、統計、科学技術分野で使用された。
149,000円。
SHARP PC-1001、PC-1002詳細1: Sharp's early desktop calculator(このページの下のほうに掲載)
http://www.dentaku-museum.com/calc/calc/1-sharp/1-sharpd/sharpd.html
SHARP PC-1001詳細2: Kyoro's Room
http://kyoro205.g.dgdg.jp/cgi/calcdb.cgi?k=PC%2D1001
Sharp PC-1001でプログラミングのテスト
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関連記事:
世界初の手帳型プログラム関数電卓 CASIO fx-502P (1979)、fx-602P (1981)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/fdc21158802ddaef862956805b0195f2
現行のプログラム関数電卓 CASIO fx-71F (2006)、fx-5800P (2006)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/745d3cb41a88d8fd317bb6488ccf695c
最新のグラフ電卓 CASIO fx-CG50 (2017)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/931887855b489997d262031d02ae0ac5
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fx-501Pは正規に発売されていた頃、新品でお買いになったのですね。
HP 35sは僕も買いましたが、昨年までは新品のものが6000円台で買えましたが、いまでは8700円。たしか1万円くらいまで販売価格が上がったと思います。
> HP電卓の良いところは同僚が勝手に持ち出しても「あれ?これ計算出来ないじゃないか」と返してくるところですね。
そんなことがあったのですか。w
今回の記事での計算ですが、次回はfx-502Pとfx-602Pで試す予定です。fx-501Pや502Pは確かに遅いですが、それでも速度改善はされているのだと少し期待しています。
大好物のプログラム電卓ネタをありがとうございます。
確か高校の時、友達がfx-202Pを学校に持ってきて、一緒にプログラムをあれこれ作って遊んだのが思い出されます。お金持ちの息子で買って貰ったというのを強烈に覚えています。
キーステップ記録型のプログラミング法自体はfx-502P/602Pにも引き継がれていますよね。
関数計算に0.5秒程度とのことですが、fx-5800Pでは数ミリ秒程度なので、せいぜい100倍程度の向上です。この違いを大した速度向上もしていないと見るのか、単四電池のみで稼働することを加味して大した進歩だと見るのか、判断基準によって見方が異なるでしょう。
なお、fx-5800Pでは制御コマンドが10~30m秒程度と結構遅いことも分かっています。
http://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-152.html
Goto/Lbl コマンドはfx-5800P、fx-9860GII では制御構造が複雑になると大きな速度低下があります。このあたりは、Casioの方から内部仕様を詳細に教えてもらっています。
http://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-169.html
ここまで詳しく教えてくれるカシオには、正直シビレました。
古い命令との互換性を重視する設計方針のためにGoto/Lblを特別な内部実装にして、速度には目をつぶったというわけです。代わりに一般的なBasicコマンド (Do、While, Forなど)を使えば速度の問題は無いというソリューションもそつなく提供してくれています。
新しいほど速いわけでもないという面白い事例です。
fx-202Pの時代だと、Goto/Label は単に単純なスタック操作だけでしょうから、きっと関数計算よりも早いのでしょうね。
歴代のプログラム関数電卓での速度比較の結果は、とても楽しみにしています。
どういたしまして。
それにしてもfx-5800P使い込んでいらっしゃいますねぇ。リンクで記事を紹介いただき、ありがとうございました。帰宅してからじっくり読ませていただきます。
さしあたり同じベンチマークでのテストはfx-502P, fx-602P, fx-71F, fx-5800Pあたりを予定しています。あとfx-602Pはスマホアプリでもやってみます。本の紹介記事の合間に時間を見つけてやってみます。調べていただいたfx-5800Pの「クセ」を参考にさせていただきますね。
(昨年、3だったか9だったかのキーが、反応しなくなり、修理した。)
コメントありがとうございます。1975年の時点でシャープがプログラム関数電卓を発売していたとは知りませんでした。検索してみたのですが見つけることができませんでした。恐れ入りますが型番などは覚えていらっしゃいますでしょうか?
> その時に買ったfx-201Pは、今も実戦配備です。
それはまた驚きです。現役なのですね!(笑)
シャープのプログラム関数電卓ですが、WebのSharp's early desktop calculator によると以下の通りです。
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PC-1001
1973年に発売された関数計算用・電子計算尺<ディジタル・ルール>。
三角関数。逆三角関数、双曲線関数、対数、指数など15種の関数がワンタッチキー操作で即座に求められる。さらにプログラム機能が付いており最高64ステップのプログラム機能が使える。
129,000円。
修理してまでお使いになり続けるとは、fx-201Pに相当な思い入れがあるのですね。
SHARP PC-1001のことを教えていただき、ありがとうございました。まさしくこれが「日本初」ですね。ブログ記事の最初と最後に追記させていただきました。
記事タイトルと本文の他の箇所に関しましては、他の記事からたくさんリンクを貼っていて、修正が困難なため、現状のままとさせてください。
fx-201pには整数化関数がなかったため、桁あふれを利用(+K1exp10-K1exp10)し整数化することで、最大公約数プログラムができました。えらく興奮したのを覚えています。
電卓は面白いですね。
はじめまして。ツイッターを拝見させていただきました。fx-201Pの実機だけでなくACアダプターやプログラム・ライブラリーもお持ちなのですね。
この時代の関数電卓は、計算結果が出るまでに時間がかかりますから「がんばって計算してるなー」と感じられるのが好きです。水色の蛍光管表示も素敵ですね。
桁あふれを利用した最大公約数プログラムは、グッドアイデアだと思いました。