「連続群論入門 (新数学シリーズ18):山内恭彦、杉浦光夫」(Amazonで検索)
ひと月ほど前「目で見る美しい量子力学:外村彰」の記事の最後で『さて次は「量子現象の数理:新井朝雄」の「第4章:量子力学における対称性」に取りかかりたいところだが、そのための準備として「連続群論入門:山内恭彦、杉浦光夫」を読むことにした。」と予告したとおり、あれからこのコンパクトな数学書を地道に読み進めていた。総ページ数200ページだが小型本の割に文字がぎっしり詰まっているので読み応えがある。
連続群、つまりリー群やリー環そしてそれらの表現論への入門書として、本書は初版が刊行されてから50年を経ているものの、今でも古さを感じさせない素晴らしい入門書なのだ。かなり長い間絶版の状態が続いていて高値で取引されていた。僕はボロボロな状態の古書を「運良く」8千円で購入できたのだが、ほどなく4千7百円で復刊されてしまった。つまり運が悪かった!
培風館から50年前に刊行されたこの「新数学シリーズ」は、一見科学新興社のモノグラフ的な印象を受けるが良書が多い。特に「群論入門(新数学シリーズ 7):稲葉栄次」と「ルベグ積分入門(新数学シリーズ23):吉田洋一」は入手困難な絶版本ではあるが特にお勧めだ。
数学のこのあたり、つまり連続群は、素粒子物理学の対称性や超対称性などを理解するためには必須なので、遅かれ早かれ学んでおいたほうがよい。昨年読んだ「連続群論:保江邦夫」にくらべて本書はずっと難しくて数学的に厳密に記述されている。
入門書であるにもかかわらず、僕にとっては難しかった。全体の構成やあらましはもちろん理解できたが未消化な部分が多い。きちんと内容紹介できるレベルに達しないうちに読み終えてしまった。
幸いなことに、そして紹介記事としては「卑怯」なのだがアマゾンに、的確なレビューが投稿されているので、そちらを参考にしていただきたい。
連続群論への素晴らしい入門書, 2004/2/14
By susumukuni (東京都)
レビュー対象商品: 連続群論入門 (新数学シリーズ (18)) (単行本)
本書は、連続群論を初めて学習される方への格好の入門書である。 線型リー群の表現及びそのリー環の表現との関連、回転群SO(3)とローレンツ群O(1,3)の表現、球関数の理論などが、200ページ程で簡潔に解説されている。
先ず、「連結リー群の表現が、そのリー群と局所同型な単連結群(即ち、普遍被覆群)のリー環の表現に還元される事」、及び「単連結リー群のリー環の任意の表現は、対応するリー群の表現の微分表現として得られる事」の2点が、本書に述べられている極めて重要な事実であることに気付かれるであろう。
この事から、古典群の表現の最も基本的な例として本書で扱われている、「回転群の表現が、その普遍被覆群Spin(3)=SU(2)のリー環su(2)の表現に還元される事」、また「ローレンツ群の単位元の連結成分、即ち固有ローレンツ群、の表現が、その普遍被覆群SL(2,C)のリー環sl(2,C)の表現(更に、sl(2,C) はsu(2) の複素化であるからsu(2)の表現)に還元される事」が、極めて自然に理解されると思う。
更に、最終章の球関数の理論では、「ラプラスの球関数がSO(3)の既約表現の表現空間として、球面ラプラシアンのスペクトル分解を導く」ことの明確な根拠が与えられており、等質空間上の正則表現を既約表現に分解することがフーリエ展開の本質であることの「一つの原型」が、この様な入門書のレベルで提示されていて感心させられる。
本書の初版発行は1960年であるが、その内容は決して古くなっていない。 連続群論には、ポントリャーギンの本、村上先生の本(「連続群論の基礎」)、新しいものでは小林・大島両先生の本(「Lie群とLie環」)など、更に本格的な特徴ある好著が多いが、今後それらのどれに進まれる場合にも、先ず本書を出発点とされるのが良いと強くお薦めできる。
理解が浅いままでは悔しいので、この夏は物理学寄りの本でもう少しこの分野を追求してみることにした。「量子現象の数理:新井朝雄」の「第4章:量子力学における対称性」にはなかなか戻れないけれど、まあいいとしよう。
関連ページ:
本書の演習問題についてのメモがkame_mathさんのブログにある。
http://www2.accsnet.ne.jp/~kamey/others/
Lie群とLie代数
http://research.kek.jp/people/hkodama/Math/LieGroup.pdf
リー群とリー代数(その1)
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/lee01.htm
リー群とリー代数(その2)
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/lee02.htm
リー群とリー代数(その3)
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/lee03.htm
リー群(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E7%BE%A4
リー環(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E7%92%B0
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「連続群論入門 (新数学シリーズ18):山内恭彦、杉浦光夫」(Amazonで検索)
目次
第1章:序論
- 一次写像
- 一次写像の合成、逆写像
- 二次元回転、直交変換
- 単純変形、対称写像
- 一般の一次写像、無限小写像
- n次行列
- 行列の指数函数
第2章:回転群とその表現
- 回転群
- 二次元特殊ユニタリ群と回転群
- 既約表現の構成
- 不変積分と指標
- クレブッシュ・ゴルダンの法則
第3章:線型リー群とそのリー環
- 線型リー群とそのリー環
- 連結成分
- リー群の表現とリー環の表現
- リー環su(2)の表現
- 局所同型群
第4章:ローレンツ群とその表現
- ローレンツ群の連結成分
- 固有ローレンツ群の表現
第5章:球函数
- 球函数による展開
- ラプラスの球函数
ひと月ほど前「目で見る美しい量子力学:外村彰」の記事の最後で『さて次は「量子現象の数理:新井朝雄」の「第4章:量子力学における対称性」に取りかかりたいところだが、そのための準備として「連続群論入門:山内恭彦、杉浦光夫」を読むことにした。」と予告したとおり、あれからこのコンパクトな数学書を地道に読み進めていた。総ページ数200ページだが小型本の割に文字がぎっしり詰まっているので読み応えがある。
連続群、つまりリー群やリー環そしてそれらの表現論への入門書として、本書は初版が刊行されてから50年を経ているものの、今でも古さを感じさせない素晴らしい入門書なのだ。かなり長い間絶版の状態が続いていて高値で取引されていた。僕はボロボロな状態の古書を「運良く」8千円で購入できたのだが、ほどなく4千7百円で復刊されてしまった。つまり運が悪かった!
培風館から50年前に刊行されたこの「新数学シリーズ」は、一見科学新興社のモノグラフ的な印象を受けるが良書が多い。特に「群論入門(新数学シリーズ 7):稲葉栄次」と「ルベグ積分入門(新数学シリーズ23):吉田洋一」は入手困難な絶版本ではあるが特にお勧めだ。
数学のこのあたり、つまり連続群は、素粒子物理学の対称性や超対称性などを理解するためには必須なので、遅かれ早かれ学んでおいたほうがよい。昨年読んだ「連続群論:保江邦夫」にくらべて本書はずっと難しくて数学的に厳密に記述されている。
入門書であるにもかかわらず、僕にとっては難しかった。全体の構成やあらましはもちろん理解できたが未消化な部分が多い。きちんと内容紹介できるレベルに達しないうちに読み終えてしまった。
幸いなことに、そして紹介記事としては「卑怯」なのだがアマゾンに、的確なレビューが投稿されているので、そちらを参考にしていただきたい。
連続群論への素晴らしい入門書, 2004/2/14
By susumukuni (東京都)
レビュー対象商品: 連続群論入門 (新数学シリーズ (18)) (単行本)
本書は、連続群論を初めて学習される方への格好の入門書である。 線型リー群の表現及びそのリー環の表現との関連、回転群SO(3)とローレンツ群O(1,3)の表現、球関数の理論などが、200ページ程で簡潔に解説されている。
先ず、「連結リー群の表現が、そのリー群と局所同型な単連結群(即ち、普遍被覆群)のリー環の表現に還元される事」、及び「単連結リー群のリー環の任意の表現は、対応するリー群の表現の微分表現として得られる事」の2点が、本書に述べられている極めて重要な事実であることに気付かれるであろう。
この事から、古典群の表現の最も基本的な例として本書で扱われている、「回転群の表現が、その普遍被覆群Spin(3)=SU(2)のリー環su(2)の表現に還元される事」、また「ローレンツ群の単位元の連結成分、即ち固有ローレンツ群、の表現が、その普遍被覆群SL(2,C)のリー環sl(2,C)の表現(更に、sl(2,C) はsu(2) の複素化であるからsu(2)の表現)に還元される事」が、極めて自然に理解されると思う。
更に、最終章の球関数の理論では、「ラプラスの球関数がSO(3)の既約表現の表現空間として、球面ラプラシアンのスペクトル分解を導く」ことの明確な根拠が与えられており、等質空間上の正則表現を既約表現に分解することがフーリエ展開の本質であることの「一つの原型」が、この様な入門書のレベルで提示されていて感心させられる。
本書の初版発行は1960年であるが、その内容は決して古くなっていない。 連続群論には、ポントリャーギンの本、村上先生の本(「連続群論の基礎」)、新しいものでは小林・大島両先生の本(「Lie群とLie環」)など、更に本格的な特徴ある好著が多いが、今後それらのどれに進まれる場合にも、先ず本書を出発点とされるのが良いと強くお薦めできる。
理解が浅いままでは悔しいので、この夏は物理学寄りの本でもう少しこの分野を追求してみることにした。「量子現象の数理:新井朝雄」の「第4章:量子力学における対称性」にはなかなか戻れないけれど、まあいいとしよう。
関連ページ:
本書の演習問題についてのメモがkame_mathさんのブログにある。
http://www2.accsnet.ne.jp/~kamey/others/
Lie群とLie代数
http://research.kek.jp/people/hkodama/Math/LieGroup.pdf
リー群とリー代数(その1)
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/lee01.htm
リー群とリー代数(その2)
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/lee02.htm
リー群とリー代数(その3)
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/lee03.htm
リー群(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E7%BE%A4
リー環(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E7%92%B0
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目次
第1章:序論
- 一次写像
- 一次写像の合成、逆写像
- 二次元回転、直交変換
- 単純変形、対称写像
- 一般の一次写像、無限小写像
- n次行列
- 行列の指数函数
第2章:回転群とその表現
- 回転群
- 二次元特殊ユニタリ群と回転群
- 既約表現の構成
- 不変積分と指標
- クレブッシュ・ゴルダンの法則
第3章:線型リー群とそのリー環
- 線型リー群とそのリー環
- 連結成分
- リー群の表現とリー環の表現
- リー環su(2)の表現
- 局所同型群
第4章:ローレンツ群とその表現
- ローレンツ群の連結成分
- 固有ローレンツ群の表現
第5章:球函数
- 球函数による展開
- ラプラスの球函数