左:CASIO fx-71F (2006), 右:fx-5800P (2006)
fx-202P (1976)、fx-502P (1979)、fx-602P (1981)に続き、今回は現行の機種で計算速度を測ってみた。
CASIO fx-71F(180関数、プログラム:最大680バイト): 4,000円(オープン価格)
CASIO fx-5800P(407関数、プログラム:最大28,500バイト): 6,400円(オープン価格)
後継機がfx-72Fとして2014年に発売されているのでfx-71Fは最新モデルではないが、性能はほとんど同じなので現行機種とさせていただく。
fx-71Fは2006年に同じデザインの関数電卓 fx-991ES、金融電卓 FC-200V と一緒に発売された。3兄弟のようなものである。関数電卓とプログラム関数電卓はその後、性能アップとモデルチェンジが行われたが、金融電卓は FC-200V が現在でも最新モデルである。けれどもアメリカとは異なり日本の簿記やファイナンシャルプランナー、会計士の検定試験では金融電卓の持ち込みが禁止されているので、それほど売れているわけではない。(ただし証券アナリスト試験では使用可)
fx-991ESとfx-71Fの関数電卓としてのいちばん大きな違いは数学自然表示の有無である。(fx-991ESは数学自然表示の電卓)fx-71Fの数字がドットマトリックスでなく7セグメント表示であることからみてもおわかりだろう。また、fx-991ESには微分や定積分計算の機能があるのに対しfx-71Fにはそれらの機能がない。そしてShiftキーを押して機能するキー割り当てを見るとわかるように、行列やベクトル、統計などfx-991ESのドットマトリックス表示を活かした計算機能がfx-71Fには備わっていない。
左からfx-991ES、FC-200V、fx-71F(クリックで拡大)
fx-202P (1976)のときと同じ定積分の問題を同じアルゴリズムで計算させてみる。長方形近似を使ってこの計算を行うわけだ。
この面積を求めるわけである。
現時点で最新、最上位モデルの関数電卓 fx-JP900 だとあっという間に高精度の答が表示される。
fx-71F (2006)での計算
プログラムのサイズは70バイトほどになった。言語はCasio Basicだ不必要な演算が一部含まれているが fx-202P でのプログラムと同じにするためなので気にしないでほしい。
プログラムリストは改行してあるが、電卓上では1行表示でプログラムの終わりまで矢印キーで右にスクロールさせる。プログラムの編集はしづらい。
計算結果
ループ1回につき0.4秒。fx-202Pよりも計算時間が8.56分の1に短縮されている。
そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると71秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は82.6パーセント。
三角関数1回の計算にかかる時間は0.168秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-202Pよりも計算時間が8.49分の1に短縮されている。
fx-5800P (2006)での計算
プログラムはfx-71Fと同じなので省略。ただし複数行表示で縦スクロールが可能なのでfx-71Fよりはプログラムの編集を楽に行なえる。
Casio Basicを学んでみたい方はブログ仲間の「やすさん」がお書きになっている「Casio Basic入門 -目次-」を参照されるとよい。電卓に付属しているマニュアルよりもはるかに詳しく解説されている。
ただしfx-5800Pではこのプログラムのコロン「:」の箇所を改行に置き換えて計算を行なっている。コロンもサポートされているが1つのコマンドとして解釈されるので改行を使ったほうが速度向上が見込めるそうだ。このことは「やすさん」からコメント欄を通じて教えていただいた。
計算結果
ループ1回につき0.154秒。fx-202Pよりも計算時間が22.6分の1に短縮されている。
そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、1000回の分割で計算すると63秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は58.4パーセント。
三角関数1回の計算にかかる時間は0.045秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-202Pよりも計算時間が31.7分の1に短縮されている。)
まとめ
fx-202Pの計算速度を1とし、各機種の速度改善を率(倍数)であらわすと次のようになった。いちばん下の2つはスマートフォンアプリである。
所有している電卓や電卓アプリ、エミュレータなどはこれまでにたくさん記事を書いているので、興味のある方は「iPhone、携帯、電卓」というカテゴリーからお読みいただきたい。
関連記事:
日本初のプログラム関数電卓: CASIO fx-201P (1976)、fx-202P (1976)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/55c4832a2ca95087960c2ec0e532b1e6
世界初の手帳型プログラム関数電卓 CASIO fx-502P (1979)、fx-602P (1981)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/fdc21158802ddaef862956805b0195f2
最新のグラフ電卓 CASIO fx-CG50 (2017)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/931887855b489997d262031d02ae0ac5
ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
1つ気になる点があります。
":"記号ですが、fx-5800Pでは"区切り文字"と銘々されていて、改行と同等の扱いになっていて、":" 記号無しでも同等に動作します。
fx-5800Pでは、":" が Goto/Lbl ループの中にあると、Casio Basic特有の Gotoの内部実装のため、いちいち区切り文字を解釈しているので、その分時間がかかる恐れがあります(区切り文字の処理時間についてはまだ検証していませんが...)。
fx-71F で ":" が必要となれば、コードの共通化のために fx-5800Pでも残すべきだとは思いますが、fx-71Fでも ":" が改行と同等であれば、区切り文字無しだと少し速くなるかも知れません。
ところで、私のブログのご紹介を頂き、ありがとうございます。Casio Basic についてまだ100%完全に把握していないところがあります。例えばリスト機能、極座標など、私がプログラミングで殆ど使わない機能は手つかずなので、いずれ詳細な動作を検証してゆくつもりです。
Casio Basic で科学技術計算だけをさせるのは勿体ないと考えていて、より日常で使えるプログラムを作れる程度には Casio Basic はよく出来ているというのが私の主張です。
従って、電卓のおまけの言語というよりも、構造化プログラミング可能な開発環境としての Casio Basic と見たときに、その使い方が意外に知られていないように感じているのが、私のブログの原動力になっています。
日本語だけでなく英語のサイトやブログを探しても、私が望むレベルでの解説が無かったのも、ブログを続けてゆく理由です。これまで日本語で発信してきた内容を英語でも発信しようとやっていますが、なかなか進んでいません。
英語を読んだり英文和訳に比べて、英語を書くというのはノンネイティブな私には、それなりに労力がかかって思うように進みません。
http://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-460.html
とねさんの英文記事は、いつも私のブログの英語記事の参考にさせてもらっています。
fx-5800Pではコロンを使わず改行を使ってプログラムを記述、実行していました。速度に影響を与えるかはわかりませんでしたが、プログラムの見やすさという観点からそうしていたわけです。教えていただきありがとうございました。
fx-9860GII、fx-CG20、fx-FD10 Proのほうがもっと速度向上しているのですね。ベンチマークテストのためだけに買うのはもったいないと思い、まだ購入には至っていません。それにしても、次のページは本当によく調べていらっしゃるので感心しました。オーバークロックしてしまうなんて、本当のオタクです。w
fx-9860GII のオーバークロック - Ftune 2 -
http://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-153.html
fx-CG20 の概要
http://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-511.html
それに英語でも解説されているのですね!すごい!僕の算盤操作の手順の英語記事はすでにパターン化しているので。。。もう少しいろいろな文章をちゃんと書いていきたいです。
> fx-9860GII、fx-CG20、fx-FD10 Proのほうがもっと速度向上しているのですね。
実際問題、fx-9860GII がノーマルでも処理速度は速いので、お勧めです。
> ベンチマークテストのためだけに買うのはもったいないと思い、まだ購入には至っていません。
私も fx-9860GII を買うまでには、かなり葛藤がありましたが、買ってしまうと 次に fx-CG20 を調べたくなって買ってしまいました。
これら2機種は、アドインプログラムと言って、Cで書いたプログラムを走らせることができて、カシオから SDKが提供されています。一応C++が使えるので、この点も魅力的なんです。
予算ですが、最近C#なるものを2ヶ月ほど味見してみましたが、これは組み込み用途でなければ、結構良い言語だと気がつきました。初めてC#で作ったWindowsソフトをソース付きで公開しています。
http://egadget2.web.fc2.com/archives/Src_files/MyClock.html
> それにしても、次のページは本当によく調べていらっしゃるので感心しました。
そう言って頂けると、とても嬉しいです。
> オーバークロックしてしまうなんて、本当のオタクです。w
最高の褒め言葉です\(^_^)/
fx-CG20 の後継機として、fx-CG50 が欧米でごく最近発売が開始されました。国内では販売されるかどうか、発売されたとしても1年以上先になる可能性もありそうです。
海外出張の機会に入手したいな、と思っています。
市場原理とはいってもカシオがお膝元の日本市場をあまり相手にしていない感じは、チョット寂しい限りですね。
fx-9860GII SDというSDカードがサポートされている機種もありますね。いつもこれとSDカードなしの安いほうのと迷ってしまうわけです。SDカードを使う局面があるのかどうかわかりませんけど。
> fx-CG50が登場するらしい
うぁ~!カッコいい!これ絶対に欲しいです!!!
fx-CG50ってこれですよね。fx-JP900のデザインを踏襲しているところが気に入りました。なぜ国内では販売しないのでしょう??(涙目)
fx-CG50が登場するらしい
https://akatuki-724.blogspot.jp/2017/01/fx-cg50.html
CASIO fx-CG50
https://edu.casio.com/products/graphic/fxcg50/
fx-9860GII SD では、SDカードはプログラムを保存するメディアとしてしか機能せず、SDカード上のプログラムを実行させられないという制限があります。但し、バックアップメデイアとしては、いちいちPCに接続するよりは手軽です。
fx-9860GII や 9860GII SD をPCリンクさせるソフトウェア FA-124 がカシオから提供されていますが、そもそも古いソフトでSD保存ほどの手軽さはありません。
一方、例えばfx-CG20/10 では、USBケーブルでPCに繋ぐと、まるで電卓が外部ドライブかのように、エクスプローラでファイル操作が出来て、非常に手軽になっています。SD対応が欲しいとは思わないかも知れません。
fx-CG50もこのあたりは踏襲していると思います。
教えていただきありがとうございます。SD対応のがそのようなものでしたら、高いお金を払って買うほどではないみたいですね。
fx-CG50を注文してしまったのでfx-9860GII への関心は少し落ちてきたのが今日の状況です。
同じベンチマークを FX-603P はもとより、他のカシオ製プログラム電卓で実施しています。
そこで、関数処理についてはとねさんのベンチマークをそのまま使っております。
とねさんがお持ちのカシオ初プログラム電卓 fx-201P も同じベンチマークで測定データがあるので、同じもので揃えました。
FX-603P で単純加算プログラムはFX-502P の3.3倍、関数処理は502Pの7.6倍と結構高速化しています。
以下は、ご参考まで...
なお、私の興味の対象は、搭載されているプログラミング言語がどのように変遷してきたのかにあり、処理速度だけでなく言語そのものの位置づけや能力が、どのような進化(場合によっては退化)の道をたどって、現在に至っているのか? といったあたりをベースに最新の状況や将来への予測などできたら楽しいな、という企画です。温故知新というわけです。
これまでに、以下3シリーズについてまとめています。現状 On-going です。
FX-502P から FX-603P;
https://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-696.html
fx-4000P から fx-4850P;
https://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-698.html
CFX-9850GC PLUS;
https://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-695.html
ベンチマークってすごく楽しいですよね。3つの記事を読ませていただきました。Casio CFX-9850GC PLUSに惹かれます。カラー液晶なのですね。こういうのは初めて見ました。
fx-603Pは相場価格が高く、いまだ入手には至っていません。fx-502Pやfx-602Pの相場価格も僕が入手したときより上がっているのと、状態のよいものが少なくなっているように思います。
fx-1なのですが、以前15万円で出品されていたものが買い手がつかず、同じ人が5万円で出品していた時期がありました。それでも買い手がつかず、その後その人は10万円で出品して買い手がつかず、その方の出品はいまはありません。
そのかわりに他の方が15万8400円で出品しています。若干、状態に難があるようです。
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/x605002398
5万円のときに買っておけばよかったかなと少々心残りです。
ライブラリ頂きました。ありがとうございます。
昔のモデルを調べるのは、なかなか楽しいものです。
ご興味を持たれた CFX-9850GC PLUSですが、3色カラーという、コントラストが低く応答も遅い代物で、当時としては苦肉の策のディスプレイです。
このモデルは、現在の主流のCasio Basic が完成する直前の言語が搭載されている点で、面白い立ち位置なんです。
ところで、fx-1 は価値のあるものなのですね。