とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

場の量子論に再チャレンジ

2013年06月02日 11時41分48秒 | 物理学、数学

場の量子論は昨年9月に「ワインバーグ場の量子論(4巻):量子論の現代的諸相」で落ちこぼれて以来、軽いトラウマになっていたので勉強を中断していた。

日本語に訳されている本の中では「場の量子論:F. マンドル, G. ショー」がお勧めだ。こちらは何とかついていけた。

マンドルの本が出る前から次の2冊は場の量子論の「入門書」かつ「独習書」として定評だったので、もう一度チャレンジするために先週から読み始めている。この2冊は若干のずれはあるがほぼ同じテーマで進行しているので両方を章ごとに併読している。

坂井先生の本は教科書、柏先生の本はほとんど数式ばかりの演習書だが、問題の解法を読み解きながら物理現象の理解もできるように構成されている。計算過程が詳しく書かれているので僕のような独学派にとっては非常にありがたい。

両方とも手ごろな厚さで(500ページ以上あるような教科書よりは)ストレスを感じない。この2冊は互いの良いところを補い合っていて相性は良いと思うのだ。

場の量子論:坂井典佑


内容
場の量子論を簡明、かつ平易に解説した教科書。場の量子論の中で最も重要と思われる事項に絞って簡潔に記述。ファインマン図形の方法を身に付けられるように、簡単なスカラー場の理論を中心的な例にとって解説する。

出版社による本の紹介ページ
http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2212-0.htm


新版 演習場の量子論:柏太郎


内容
場の理論事始め、経路積分法、有効作用と近似値、ゲージ場の量子論など、場の理論を基礎から解説したテキスト。練習問題つき。新しい問題および最近の参考文献を加える。

出版社による本の紹介ページ
http://www.saiensu.co.jp/?page=book_details&ISBN=ISBN978-4-7819-1148-9&YEAR=2006

この本については2010年10月あたりから2012年3月にかけてT_NAKAさんがとても詳しい記事を書いていらしゃるようだ。

テーマ「演習 場の量子論」のブログ記事 (T_NAKAの阿房ブログ)
http://teenaka.at.webry.info/theme/facc7ac4b2.html

僕のほうは今日現在、坂井先生の本のほうは第4章の「経路積分の量子化」の中の「グラスマン数」の手前、柏先生の本のほうは第2章の「量子場入門」の中の「ディラック (Dirac) 場」あたりを読んでいる。

解析力学から導かれるオイラー-ラグランジュ方程式や正準交換関係、特殊相対論か導かれるローレンツ変換、量子力学から得られるハイゼンベルクの運動方程式や粒子の生成、消滅演算子、演算子の間で成り立つ交換関係や反交換関係など、それまでに解明された物理法則を満たすように場の方程式を量子化して記述すると、光子などのボース粒子についてはクライン-ゴルドン場、電子などのフェルミ粒子についてはディラック場となる。クライン-ゴルドン場は1成分の実数のスカラー場、ディラック場は4成分の複素数のベクトル場だ。

クライン-ゴルドン場はボース型の交換関係で、そしてディラック場はフェルミ型の交換関係で量子化しなければならないことが導かれる。量子化されたそれぞれの場がそこで生成・消滅し得る粒子の種類と結びついていることが理解でき、自然法則のつながりの奥深さを感じることができた。

ウィキペディアによると場の量子論の起こりは次のように説明されている。1927年から1928年、ポール・ディラックによる古典電磁気学の量子化、オスカル・クライン、パスクアル・ヨルダン、ユージン・ウィグナーおよびウラジミール・フォックによる生成消滅演算子が形成され、場の量子論の原型をヴェルナー・ハイゼンベルクとヴォルフガング・パウリが創った。これは後に、ディラック方程式と同等であることが判明する。

相対論的な場の量子論に至ることになるディラック方程式をディラックが提唱したのは1928年のこと。リチャード・P・ファインマンはラジオの修理に熱中した少年時代を過ごしていて、日本では「昭和」が始まったばかりだった。当時の世界情勢や日本の置かれた状況を想像すると同じ時代にこのような研究がされていたことはイメージしにくい。ディラックが1928年に予言した陽電子は1932年に発見され、同じ年に日本では五・一五事件が起き、日中戦争や第二次世界大戦に向けて突き進んでいた。


それぞれの本の詳細な目次や構成は出版社による紹介ページを参照してほしい。

読み終えたらそれぞれ記事を書くつもりだ。

少年老い易く学成り難し。頑張ろう!

ポール・ディラック(1902-1984)

  


関連ページ:

ネット上で学んでみたい方は、これらのページをお読みください。

場の理論(東海大学、安江研究室)
http://phys.cool.coocan.jp/physjpn/field.htm

量子場の理論入門(前野先生によるPDF形式のテキスト)
http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/field.pdf

場の量子化と粒子の相互作用(名古屋大学、松原先生のHPの一部)
http://tmcosmos.org/cosmology/cosmology-web/node55.html

一般向け書籍レベルの本で学んでみたい方はこちらがお勧め。

光の場、電子の海―量子場理論への道:吉田 伸夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ea4bc17a6b2c98c1073039d868223f02


関連記事:

場の量子論〈第1巻〉量子電磁力学:F.マンドル、G.ショー
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/08726ab931904f76d9c26ff56d219e53

場の量子論〈第2巻〉素粒子の相互作用:F.マンドル、G.ショー
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/95d908cd752af642964cbff7ea7f0301

大著に挑む (ワインバーグの「場の量子論」)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/95ac4b64aa4eaf70608088006813cbf5


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ひろゆき)
2013-06-03 23:10:19
お久しぶりです。お元気ですか?
たまにブログを見に来ていました。場の量子論の勉強再開ということでコメントします。

坂井さんの本は定評がありまして、私自身先輩から勧められて読みましたが、九後先生のゲージ場の量子論を易しくした感じ(内容も同じ)なので、場の量子論の計算になれていれば、十分読みこなせると思います。ただ、載っている内容の割に本が薄いので、きついところもあるかもしれません。個人的にですが、非可換ゲージ場(BRST量子化)をなんとなくでも理解できればかなりのレベルまで行ったと言えます。

柏先生の演習書は良い本です。モチベーションを保つのが難しいですが、他の場の量子論の本(坂井先生のでもよし)を参考にして計算すればかなり読みこなせると思います。

とりあえず、場の量子論は分量が非常に多いので、ざっと読みでもいい感じです。
返信する
ひろゆきさんへ (とね)
2013-06-03 23:32:25
お久しぶりですね!またコメントいただきありがとうございます。
やはり両方とも良い本なのですね。あとは自分の力量と努力次第ということになります。(笑)
柏先生の「演習 くりこみ群」というのも2008年に出版されていて、幸い昨日ヤフオクで落札することができました。アマゾンでは中古も買えない状況だったのでラッキーでした。

3月始めごろから減量のために毎晩2時間のウォーキングを課しているので読書時間が減っています。(体重も7Kg減りましたので、それはよかったことです。)

勉強も仕事も健康が第一ですので、お互い気持ちのよい汗を書くように心がけましょう。僕の年齢になると健康でいられることの有り難味がよくわかるようになります。
なんだかお節介な返信になってしまいました。
返信する
Unknown (ひろゆき)
2013-06-04 00:04:59
返答ありがとうございます!機会があれば、とねさんとオフでお会いしてみたいです。

場の量子論はとてもとてもフィールドが広いので、全部勉強するというのは不可能です。この先さらに専門的な勉強をなされるのであれば、どこかで折り合いを付ける必要もあるかもしれません(あとから勉強し直す勇気も必要です)。僕自身はくりこみがよく分からなくて、まだわからないまんまです(笑 院でちゃんと勉強する予定です。演習のほうの存在も知っていましたが、なかなか始められていません。

・・・勉強はやっぱり健康じゃないとダメですよね。いいものを食べていないとアタマに入る機会や、吸収度が減ります。僕自身も見直していきたいです。とはいえ、お仕事をなさりながら、順調に好奇心を維持し続けておられる、とねさんには感心です。

お節介だなんて・・・いえいえ、本当にありがたいです。これからもご健康でいてくださいね。


返信する
ひろゆきさんへ (とね)
2013-06-04 01:10:51
「あとから勉強し直す勇気」は確かに大切だし、本当のことですね。

僕のブログは本の紹介がメインなので、次々と新しい本を読み続けることになります。けれども理解しきれなかった本は数ヶ月から1年後くらいに「再読」ということでもう一度読んでレビュー記事を書くのもいいかもしれません。
返信する
ワインバーグ (Aki)
2013-06-05 00:05:06
初めまして。50歳を間近に一念発起して物理の勉強を開始してかれこれ7年近くがたちました。場の量子論は、日置先生の「相対論的量子論」を読んで初めて入口に立てた気がしました。以来この2冊も含めいくつかの本を読みましたが、残念ながらワインバーグには全く歯が立ちませんでした。
ワインバーグと言えば、Cosmologyの翻訳が出たのを機に、原書と翻訳を交互に読み始めました。とねさんは宇宙論をお読みになる予定はありませんか。
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Re: ワインバーグ (とね)
2013-06-05 00:22:17
Akiさんへ

はじめまして。コメントをいただき、ありがとうございます。
Akiさんの学習歴は年齢も含めて僕よりも少し先輩ということになるようですね。社会人という同じ立場で同じ趣味を持っている方がいるのを知ると心強く思います。

ワインバーグは確かに名著のようですが、読んでみて入門者向けではないと僕も感じました。Cosmologyはいずれ読んでみたい1冊ですが、宇宙論については詳しく探していないこともあり、ワインバーグ以外の本で読みたいものがまだないという状況です。
宇宙・天文系ということですと、僕はどちらかというと天体力学や地球物理学などのほうに興味が偏っていますね。

あと時間が足りないのでまったく手が回っていませんが、物理や天文、地球物理学などのコンピュータ・シミュレーションも取り組んでみたい分野です。
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ワインバーグ (Aki)
2013-06-05 23:35:14
さっそくご返事いただきありがとうございます。またコメントさせていただきます。
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Re: ワインバーグ (とね)
2013-06-05 23:41:55
Akiさんへ

どういたしまして。これからもよろしくお願いします。
今日はグラスマン数についてあれこれ考えていました。
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