![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/b0/dbe05b562f434782a405d73c89205016.jpg)
「現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ」をどうにか読み終えた。このレベルの教科書になると下巻のほうが難しいというわけでもなかった。けれども僕の理解度としては第4章、第5章が80%、第6章、第7章が60%止まり。もっと基礎的なことをしっかり学んでから、いつかまた学びなおしたほうがよさそうだ。
それでもなお、ハッとさせられる記述がときおり見つかり、読んでよかったなと思うこともあった。理解度が相対的に高かった第4章と第5章についてである。
上巻についての記事で紹介したように、この教科書は現代的視点に立った量子力学の中級者向けの本である。著者の桜井純先生は1933年に東京で生まれ、終戦後の高校時代にアメリカからの留学生招請の選考に合格し、その後アメリカの高校、大学で物理学を学んだ。
先生が渡米されたのは1949年のこと。当時敗戦国日本の高校生が渡米するのは非常にめずらしいことだった。その後、ハーバード大学卒、コーネル大大学院、カリフォルニア大学(UCLA)の教授を歴任、素粒子物理学の分野で幾つかの独創的理論を提出した。1982年にCERNに出張中49才で急逝された。この教科書は先生の没後に弟である桜井明夫先生(物理学者、京都産業大学理学博士)が先行して出版されていた英語版の教科書を和訳したものだ。日本語版が出版されたのは1989年のこと。
この下巻では著者の得意とした対称性の理論をはじめ、量子力学における近似法、同一種類の粒子系(ヤングの図式やクォーク模型)、散乱理論などが原理と実用を密着させて論じてある。その明快な記述は量子力学への理解を深めるのに役立つであろう。巻末には訳者増補として、幾何学的位相に関し、解説を加えられている。
現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ:目次
第4章:量子力学における対称性
- 対称性、保存則、縮退
- 非連続的対称性、パリティ、すなわち空間反転
- 非連続的対称操作としての格子上の平行移動
- 時間反転の非連続的対称性
第5章:近似法
- 時間を含まない摂動論:縮退のない場合
- 時間を含まない摂動論:縮退のある場合
- 水素様原子:微細構造とゼーマン効果
- 変分法
- 時間に依存するポテンシャル:相互作用表示
- 時間を含む摂動論
- 古典的輻射場との相互作用への応用
- エネルギーのずれと崩壊による幅
第6章:同一種類の粒子
- 置換対称性
- 対称化の要請
- 2電子系
- ヘリウム原子
- 置換対称性とヤングの図式
第7章:散乱理論
- リップマン - シュウィンガー方程式
- ボルン近似
- 光学定理
- アイコナール近似
- 自由粒子の状態:平面波と球面波
- 部分波の方法
- 低エネルギー散乱と束縛状態
- 共鳴散乱
- 同一種類の粒子と散乱
- 散乱における対称性の考察
- 時間を含む散乱の定式化
- 非弾性電子 - 原子散乱
- クーロン散乱
付録A:シュレーディンガーの波動方程式 - 基本的解の要約(再掲)
訳者増補:断熱変化と幾何学的位相
訳者あとがき
「現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/b4/b56bc91c32ed4371650982de131244f9.jpg)
「現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/67/9697b7260be916fb184c5d597369016d.jpg)
「演習現代の量子力学―J.J.サクライの問題解説」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/de/eff64af454ce1803bd706de70954ca61.jpg)
-------------------------------------
2014年4月に追記:
上巻の第2版が刊行された。
「現代の量子力学(上) 第2版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/ae/a4b7c79a206850fa6ae929d19e99bc4d.png)
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2015年6月に追記:
下巻の第2版が刊行された。
「現代の量子力学(下) 第2版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/63/24327f955306cd7cc5c29009740d83f4.png)
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2019年11月に追記:
演習書の第2版が刊行された。
「演習 現代の量子力学 第2版」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/4f/3277e53d0b6dc9f35030a2bebd29b621.png)
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2022年5月に追記:
上巻の第3版が刊行された。
「現代の量子力学(上) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/5f/4a0822e6251516bb657cdcb134688323.png)
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2023年6月に追記:
下巻の第3版が刊行された。
「現代の量子力学(下) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/35/a29136cb5e87fcfeaa14670d54d2e843.png)
英語版は2020年9月に第3版が刊行された。
「Modern Quantum Mechanics 3rd Edition: J.J.Sakurai, Jim J.Napolitano」(Kindle版)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/01/7a8ce6f8c9eeb60c47b00c834ec86e19.png)
関連記事:
初版と第2版の違いは次の記事を参照していただきたい。
発売情報:現代の量子力学(上) (下) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/798f43e65b60d75143ee875bccc1be69
それでもなお、ハッとさせられる記述がときおり見つかり、読んでよかったなと思うこともあった。理解度が相対的に高かった第4章と第5章についてである。
上巻についての記事で紹介したように、この教科書は現代的視点に立った量子力学の中級者向けの本である。著者の桜井純先生は1933年に東京で生まれ、終戦後の高校時代にアメリカからの留学生招請の選考に合格し、その後アメリカの高校、大学で物理学を学んだ。
先生が渡米されたのは1949年のこと。当時敗戦国日本の高校生が渡米するのは非常にめずらしいことだった。その後、ハーバード大学卒、コーネル大大学院、カリフォルニア大学(UCLA)の教授を歴任、素粒子物理学の分野で幾つかの独創的理論を提出した。1982年にCERNに出張中49才で急逝された。この教科書は先生の没後に弟である桜井明夫先生(物理学者、京都産業大学理学博士)が先行して出版されていた英語版の教科書を和訳したものだ。日本語版が出版されたのは1989年のこと。
この下巻では著者の得意とした対称性の理論をはじめ、量子力学における近似法、同一種類の粒子系(ヤングの図式やクォーク模型)、散乱理論などが原理と実用を密着させて論じてある。その明快な記述は量子力学への理解を深めるのに役立つであろう。巻末には訳者増補として、幾何学的位相に関し、解説を加えられている。
現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ:目次
第4章:量子力学における対称性
- 対称性、保存則、縮退
- 非連続的対称性、パリティ、すなわち空間反転
- 非連続的対称操作としての格子上の平行移動
- 時間反転の非連続的対称性
第5章:近似法
- 時間を含まない摂動論:縮退のない場合
- 時間を含まない摂動論:縮退のある場合
- 水素様原子:微細構造とゼーマン効果
- 変分法
- 時間に依存するポテンシャル:相互作用表示
- 時間を含む摂動論
- 古典的輻射場との相互作用への応用
- エネルギーのずれと崩壊による幅
第6章:同一種類の粒子
- 置換対称性
- 対称化の要請
- 2電子系
- ヘリウム原子
- 置換対称性とヤングの図式
第7章:散乱理論
- リップマン - シュウィンガー方程式
- ボルン近似
- 光学定理
- アイコナール近似
- 自由粒子の状態:平面波と球面波
- 部分波の方法
- 低エネルギー散乱と束縛状態
- 共鳴散乱
- 同一種類の粒子と散乱
- 散乱における対称性の考察
- 時間を含む散乱の定式化
- 非弾性電子 - 原子散乱
- クーロン散乱
付録A:シュレーディンガーの波動方程式 - 基本的解の要約(再掲)
訳者増補:断熱変化と幾何学的位相
訳者あとがき
「現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/b4/b56bc91c32ed4371650982de131244f9.jpg)
「現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/67/9697b7260be916fb184c5d597369016d.jpg)
「演習現代の量子力学―J.J.サクライの問題解説」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/de/eff64af454ce1803bd706de70954ca61.jpg)
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2014年4月に追記:
上巻の第2版が刊行された。
「現代の量子力学(上) 第2版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/ae/a4b7c79a206850fa6ae929d19e99bc4d.png)
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2015年6月に追記:
下巻の第2版が刊行された。
「現代の量子力学(下) 第2版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/63/24327f955306cd7cc5c29009740d83f4.png)
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2019年11月に追記:
演習書の第2版が刊行された。
「演習 現代の量子力学 第2版」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/4f/3277e53d0b6dc9f35030a2bebd29b621.png)
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2022年5月に追記:
上巻の第3版が刊行された。
「現代の量子力学(上) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/5f/4a0822e6251516bb657cdcb134688323.png)
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2023年6月に追記:
下巻の第3版が刊行された。
「現代の量子力学(下) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/35/a29136cb5e87fcfeaa14670d54d2e843.png)
英語版は2020年9月に第3版が刊行された。
「Modern Quantum Mechanics 3rd Edition: J.J.Sakurai, Jim J.Napolitano」(Kindle版)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/01/7a8ce6f8c9eeb60c47b00c834ec86e19.png)
関連記事:
初版と第2版の違いは次の記事を参照していただきたい。
発売情報:現代の量子力学(上) (下) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/798f43e65b60d75143ee875bccc1be69
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/f1/3df56743783cdedc140efe0b22b285d3.jpg)
アマゾンで検索しましたが、それらしいのが見つかりません。まさか8月1日出版の「ケンシロウの時間旅行 小学生編」のことではないですよね??
台風の雨と風、強くなってきましたね。戸締りに気をつけて寝ることにいたしましょう。