とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

行列の固有値で表される離散的、選択的な自然現象

2009年04月23日 13時04分59秒 | 理科復活プロジェクト

掲載画像は小田垣孝先生のサイトに掲載されている統計力学のJavaアプレットのスクリーンショットなのだが、これは量子力学的にエネルギーの遷移する様子を表現すると調和振動子の現象として説明されることを示している。(アプレットはこちら。)

つまりエネルギーとは連続的に変化するのではなく、このようにとびとびの値をとりながら変化しているわけで、「E = hν」の式であらわされるようにエネルギーが粒子として存在していることがわかり、これが量子力学のスタート地点となった。

エネルギーが変化する様子:


とびとびの値をとりながら変化するエネルギーの値は、量子力学では行列の固有値として求められている。ミクロなレベルでの量子の状態は複素数の波動関数であらわされ、その振動が上記アプレットで見られるような「調和振動」なのだ。(量子力学的な解説はこのページをお読みいただける。)

高校の数学で習う行列の固有値や固有ベクトルは大学レベルの物理学ではこんな不思議な現象の説明に使われることになる。1次変換の拡大方向、拡大率という意味はその導入にすぎない。



多くの粒子がつながった状態で振動している場合、そこにはいくつかの振動パターンが観測される。古典力学系ではこのようにバネにつなげられた3つの球の運動も、力学的な運動方程式(微分方程式)をたてると、それが行列の固有値の問題として解けることがわかる。(この問題と解法はこちら。39ページあたりからお読みいただきたい。)



このような3つの球の連成振動は3x3の行列の方程式であらわされるから固有値も固有ベクトルも3つずつ求められる。振動パターンが3種類なのも固有値の数で説明がつく。

一般化するとN個の球であればNxNの行列の方程式になるわけで、固有値を解として導く固有値方程式はN次のべき関数方程式で求められるから固有値の数はN個となり、振動パターンもN種類となるわけだ。球の数が多いと振動パターンがとても多くなりそうな気がするものだがN種類に限定されることがわかるのは不思議な気がする。

このような振動パターンは「固有振動」と呼ばれている。地球も大きな弾性体であり非常に長い周期で振動していることは地球物理学者の竹内均先生によって計算された。(竹内先生はいちばん長周期である54分の地球自由振動を計算で求めた。)



これが現在知られている地球自由振動のパターンで振動周期は左から54分、26分、12分、4分である。これらも微分方程式から得られる行列の固有値問題の応用だ。

関数をよりどころとして速度や加速度、方向など連続した物理量でとらえる古典的な物理学は一気に、「とびとびな値をとる物理量」や「いくつかのパターンに分類される物理現象」など離散的、選択的な物理現象を説明する近代的な物理学へ発展した。

振動パターンが違うと人はその系全体の現象を違ったものとして判断することがある。バイオリンの音色とピアノの音色の違いは音波の振動パターンの違いだ。それらを人間の耳が区別している理由も同じような行列の固有値に見出すことができそうである。


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2 コメント

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量子化について (量子場君)
2009-04-25 11:35:16
面白い記事の紹介、ためになります。

量子化という概念が非常に奇妙に思います。
なぜ このようになっているのか不思議でしょうがありません。
最近、その本質は、閉じ込め(波動はもちろん)と関係があるように思います。
本来、4次元空間に閉じ込められている(このように限定するのは間違っているかもしれませんが)ことの現れなんじゃないかと思ったりします。

と 思いついたことを書いてみました。

PCの記事も面白いです

返信する
量子場君へ (とね)
2009-04-25 13:23:37
うれしいコメントありがとうございます!

量子化や量子場のことは僕はまだ深く勉強をはじめていませんが、大雑把にかいつまんでみる限りでも不思議な気がしますね。

> 本来、4次元空間に閉じ込められている
> (このように限定するのは間違っている
> かもしれませんが)ことの現れなんじゃ
> ないかと思ったりします。

ユニークな考え方ですね。逆2乗の法則も空間次元が3次元であることの現れですし。

> PCの記事も面白いです

ありがとうございます!PCの記事も先ほどひとつ投稿しました!PC関連の記事一覧のページも近いうちに作ってみようと思います。
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