とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
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「地頭力」と企業の採用活動について想う

2008年04月05日 11時05分56秒 | 日記

先日NHKの「クローズアップ現代」で「地頭力」を重視する企業の採用活動について取り上げていたが、まことに陳腐であった。「地頭力(じあたまりょく)」とは「富士山を動かすにはどうすればよいか?」のように突拍子もない質問、正解のない質問にどのように斬新な答を短時間で導きだせるかというような能力、ゼロから自分で答えを導き出せる能力のこと。斬新な発想が求められる現代のビジネス環境で、企業が望んでいるのはこうした「地頭力」を持った人材なのだという。

ゲストで呼ばれた糸井重里氏は「企業側の悲鳴のようなものが聞こえる。」と控えめにコメントしていたが、2度も同じコメントを発言されていたことから想像するに、内心では「こんなことに踊らされる企業のほうこそもっとしっかりしてくれよ!」と言いたかったのではなかろうか。そんな発言をしてしまったら番組が成り立たなくなるので言うのを控えただけなのだと僕は思った。

企業も含めて日本社会はとかくブームに踊らされがちである。企業の採用担当者は気づいているだろうか?斬新な発想ができる人材は貴重だが、そういうタイプは定着しにくいということを。また、斬新な発想というのはあてずっぽうであってはならず、その分野の専門知識があってこそ斬新であり得るということを。

高度成長期に日本企業が存続できたのは、おおむね日本人が従順で、忍耐強く、勉強熱心でチームワークを重視していたからだ。「地頭力」を前面にすえた設問では転職予備軍社員、一匹狼社員を増やすだけだと僕は思う。せいぜい設問の1割程度に「地頭力系」はおさえたほうが中期的、長期的に見て会社のためだと僕は思うのだ。

「富士山を動かすにはどうすればよいか?」について採用された学生の回答は、「富士山を円錐形とみなして体積を計算して、トラックで土砂を30億回運ぶ」というものだった。僕にしてみれば、これこそ凡庸きわまりない「教科書的模範回答」だと思えてしまう。その会社がこの設問を「地頭力ビジネス書」から丸写しして使ったのだろうということが容易に想像される。

批判的なことばかり書いてしまって生産的でないので、番組で取り上げられた3つの設問について僕だったら次のように回答するだろうということで紹介しておく。


設問1:「富士山を動かすにはどうすればよいか?」

回答案1:このように地頭力ブームに迎合した設問をしてしまう企業の採用姿勢に陳腐さを感じます。もっとましな設問をお願いします。富士山を動かすことを考える前に会社を動かすためにはどうしてよいか設問にしてほしいです。とことわった上で会社を動かすためどうすればよいか斬新な回答をする。

回答案2:隣の山と名前をつけかえればよい。

回答案3:放っておけばよい。なぜなら毎年自然に数センチずつ動いているのだから。

回答案4:富士山を取り残して地球を移動させればよい。

回答案5:国民全体を洗脳して、隣の山を富士山だと信じ込ませればよい。

回答案6:国語辞典を編纂しなおして「動かす」という動詞と「静止している」という動詞の意味を交換して新しい日本語として定着させる。


設問2:「ドラえもんのポケットがあったら、あなたは何を取り出したいですか?」

回答案1:もうひとつドラえもんのポケットを取り出し、同様のことを繰り返して世界中をこのポケットで満たして、世の中の難問をすべて解決してあげたい。

回答案2:いじめを受けている子供、虐待を受けている子供を見つけ出す装置。子供を救うことがドラえもんの使命です。

回答案3:ドラえもんや鉄腕アトムを取り出して、世の中の紛争をすべて解決したい。

回答案4:地球型惑星を取り出して、国連に働きかけて人類移住計画を推進する。

回答案5:もちろんタイムマシンとテレポーテーション装置でしょう。タイムマシンがあれば悲惨な事件や事故が未然に防げるようになるから。けれどもそれが人間の歴史をどう変えてしまうかは不明ですが。

回答案6:年金問題をすべて解決してしまう装置。

回答案7:「富士山を動かす装置」を取り出します。(上記設問をした企業に対する皮肉です。)


設問3:「五大陸のうちひとつを消滅させるとすると、あなたはどの大陸を選びますか?」

回答案1:地球環境保護が最優先される中、このような設問をすること自体、非常に軽率で品性を欠いていると思いますので回答に値しません。最近ニュースで取り上げられた小学校の卒業文集で「国会議事堂を爆破しそうな人は?」という不適切なランキング集が掲載されていた事件を思い起こしました。応募を辞退させていただきます。


新学期がはじまり、大学4年生はリクルートスーツに身を固めて就職活動をはじめているようだ。リクルートスーツもワンパターンの典型で「地頭力」を望んでいる企業の方針とは真っ向から矛盾しているが、これも日本的な現象、風物として定着しているからしかたがない。僕が採用担当者だとしたら、リクルートスーツ以外の服装で面接に望む社員を採用したいところだ。紋付袴や振袖を着てこられたらびっくりしてしまうだろうが。。。

最後に僕のほうから企業の採用担当者に「地頭力」を試す設問を投げかけてこの記事を締めることにしよう。


設問:リクルートスーツ以外で、どのような服装で面接に来る学生を採用したいですか?

誤解のないように付け加えておくがもちろん「地頭力」や斬新な発想を僕は否定しているわけではありません。自由な発想は生きていく上でとても大切なことは言うまでもないことです。


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2 コメント

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Re: 確かに (とね)
2008-04-05 12:56:39
千京さん

まさに「一休さん採用計画」なんでしょうね!(笑)
ただのブームなんでしょうけれど、ついついコメントしたくなって記事にしてしまいました。

動画見れるようになってよかったです!
返信する
確かに (千京)
2008-04-05 12:32:58
動画の方はインストールできたので、無事、
見ることができるようになりました。
ありがとうございます。

この問題をテレビで見て、私も見ていて
同様のことを思いました。
なんかおかしいなあと。

一休さんが受けに来て、とんちで
回答したら、地頭力ありなのかと。
返信する

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