毎年12月10日、スウェーデンのストックホルムでアルフレッド・ノーベルの命日に行われるノーベル賞の授賞式の日程にあわせて、今年から「とね日記賞」というのを発表することにした。
これはその年に僕が読んだ物理学書、数学書の中から自分にとってためになった本、この分野を勉強している学生や社会人にお勧めする本を物理学、数学、啓蒙書に分けてそれぞれ1~2冊発表する。今年出版デビューされた科学ファンの方々のための新人賞や、あと贈り物にふさわしい本ということでクリスマス賞というのも設けておこう。とね日記賞はメダルも賞金も授賞式もないありがたくも何ともないがそれでよいのだ。
- とね日記物理学賞
物理学の教科書、専門書から選考。
- とね日記数学賞
数学の教科書、専門書から選考。
- とね日記啓蒙書賞
科学、数学の分野の一般向け書籍から選考。
- とね日記新人賞
アマチュアの物理学、数学ファンによる書籍出版デビューを応援する賞。
- とね日記クリスマス賞
クリスマスプレゼントにふさわしい本を選考。
2009年以前に読んだ本は自動的に選考対象から外されるし、どんなに良書であっても僕が読んでいなければ対象外。今のところ洋書も対象外。何より僕の学習進度や理解度や感性にも影響される。とね日記賞はこのように選考基準がきわめてアンフェアなものだ。
今年の前半は集合、位相、多様体、微分幾何学、位相幾何学、群・環・体、ルベーグ積分、関数解析の分野の数学書を、後半は量子力学を中心とした物理学書を読んだ。中には読まなくてもよかったなと思えたのが2冊ほどあったが、それ以外は学ぶ価値のある本ばかり。2週間ほどかけて選考した。
それでは発表しよう。2010年の「とね日記賞」は以下のとおりだ。(書籍名と画像はそれぞれ紹介記事にリンクさせておいた。)
* 物理学賞
森田正人、森田玲子著:「相対論的量子力学」
受賞理由: 量子力学より先の分野へ進むきっかけを与えてくれた教科書。数式展開が省略されていず、学部学生向けなのでとても理解しやすい。希少本なので復刊を期待しているという意味も込めて決めさせていただいた。
* 数学賞
保江邦夫著:「ヒルベルト空間論」および「数理物理学方法序説(日本評論社)」シリーズ
受賞理由: 数学は単に物理学を学ぶため、解くための道具、そして物理法則の表現手段だという理解から物理学の定式化をするもの、物理法則の正当性を裏付ける役割を持つということに目覚めさせてくれたのがヒルベルト空間を学んだことだった。自分にとって「物理数学」から「数理科学」への転換点となり、数学を学ぶ強い動機づけとなった。同じような本には「ヒルベルト空間と量子力学:新井朝雄」という良書もあるが、分量も手ごろで読みやすい保江先生の著書に決めさせていただいた。「数理物理学方法序説(日本評論社)」と合わせてお読みになるとよい。また「ヒルベルト空間論」は希少本なので復刊を期待しているという意味も込めている。
* 啓蒙書賞
吉田伸夫著:「光の場、電子の海―量子場理論への道」
受賞理由: 量子力学より先の量子場の理論、素粒子物理学をてっとり早く、そして正確さを犠牲にしないで学ぶことができた。もちろん量子力学以前の物理学についても書かれている。著者の深くて広い学識や人間性を感じさせる。わかりやすさと学問性、読みやすさのバランスがとれた良書である。とはいっても科学書に親しんでいない一般の方には難しいと思われる人も多いかもしれない。
* 新人賞
中西達夫著:「悩めるみんなの統計学入門」
受賞理由: 自分と同じように会社員をしながらついに出版にこぎつけられたことに刺激を受けさせていただいたこと、苦手意識をもっていた統計学へのトラウマを取り除くきっかけとさせていただいた。対象読者は著者が想定してるよりも広いと思った。多くの方に読んでいただきたい。
* クリスマス賞
ルイス・キャロル著:「不思議の国のアリス・オリジナル(全2巻)」
ミヒャエル・エンデ著:「はてしない物語」
受賞理由: クリスマスプレゼントに本をとお考えの方にはこの2冊をお勧めすする。「不思議の国のアリス・オリジナル(全2巻)」は装丁が金色で美しいので、読まなくても「小物」として喜ばれるだろう。「はてしない物語」は「数学的、理系的」要素を含んだファンタジー小説。ご自分でお読みになりこの本の深さ、楽しさを紹介できるようになってから贈ったほうがよいと思う。
最後になったが、根岸英一先生、鈴木章先生、ノーベル化学賞受賞おめでとうございます!
関連記事:
とねの本棚(蔵書目録)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2949d01bf2f786f7d788c7f191fc3daa
日本の「理科離れ」、「科学離れ」を分析してみた。
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/07d58f2210ee741773b90aa23838c01d
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これはその年に僕が読んだ物理学書、数学書の中から自分にとってためになった本、この分野を勉強している学生や社会人にお勧めする本を物理学、数学、啓蒙書に分けてそれぞれ1~2冊発表する。今年出版デビューされた科学ファンの方々のための新人賞や、あと贈り物にふさわしい本ということでクリスマス賞というのも設けておこう。とね日記賞はメダルも賞金も授賞式もないありがたくも何ともないがそれでよいのだ。
- とね日記物理学賞
物理学の教科書、専門書から選考。
- とね日記数学賞
数学の教科書、専門書から選考。
- とね日記啓蒙書賞
科学、数学の分野の一般向け書籍から選考。
- とね日記新人賞
アマチュアの物理学、数学ファンによる書籍出版デビューを応援する賞。
- とね日記クリスマス賞
クリスマスプレゼントにふさわしい本を選考。
2009年以前に読んだ本は自動的に選考対象から外されるし、どんなに良書であっても僕が読んでいなければ対象外。今のところ洋書も対象外。何より僕の学習進度や理解度や感性にも影響される。とね日記賞はこのように選考基準がきわめてアンフェアなものだ。
今年の前半は集合、位相、多様体、微分幾何学、位相幾何学、群・環・体、ルベーグ積分、関数解析の分野の数学書を、後半は量子力学を中心とした物理学書を読んだ。中には読まなくてもよかったなと思えたのが2冊ほどあったが、それ以外は学ぶ価値のある本ばかり。2週間ほどかけて選考した。
それでは発表しよう。2010年の「とね日記賞」は以下のとおりだ。(書籍名と画像はそれぞれ紹介記事にリンクさせておいた。)
* 物理学賞
森田正人、森田玲子著:「相対論的量子力学」
受賞理由: 量子力学より先の分野へ進むきっかけを与えてくれた教科書。数式展開が省略されていず、学部学生向けなのでとても理解しやすい。希少本なので復刊を期待しているという意味も込めて決めさせていただいた。
* 数学賞
保江邦夫著:「ヒルベルト空間論」および「数理物理学方法序説(日本評論社)」シリーズ
受賞理由: 数学は単に物理学を学ぶため、解くための道具、そして物理法則の表現手段だという理解から物理学の定式化をするもの、物理法則の正当性を裏付ける役割を持つということに目覚めさせてくれたのがヒルベルト空間を学んだことだった。自分にとって「物理数学」から「数理科学」への転換点となり、数学を学ぶ強い動機づけとなった。同じような本には「ヒルベルト空間と量子力学:新井朝雄」という良書もあるが、分量も手ごろで読みやすい保江先生の著書に決めさせていただいた。「数理物理学方法序説(日本評論社)」と合わせてお読みになるとよい。また「ヒルベルト空間論」は希少本なので復刊を期待しているという意味も込めている。
* 啓蒙書賞
吉田伸夫著:「光の場、電子の海―量子場理論への道」
受賞理由: 量子力学より先の量子場の理論、素粒子物理学をてっとり早く、そして正確さを犠牲にしないで学ぶことができた。もちろん量子力学以前の物理学についても書かれている。著者の深くて広い学識や人間性を感じさせる。わかりやすさと学問性、読みやすさのバランスがとれた良書である。とはいっても科学書に親しんでいない一般の方には難しいと思われる人も多いかもしれない。
* 新人賞
中西達夫著:「悩めるみんなの統計学入門」
受賞理由: 自分と同じように会社員をしながらついに出版にこぎつけられたことに刺激を受けさせていただいたこと、苦手意識をもっていた統計学へのトラウマを取り除くきっかけとさせていただいた。対象読者は著者が想定してるよりも広いと思った。多くの方に読んでいただきたい。
* クリスマス賞
ルイス・キャロル著:「不思議の国のアリス・オリジナル(全2巻)」
ミヒャエル・エンデ著:「はてしない物語」
受賞理由: クリスマスプレゼントに本をとお考えの方にはこの2冊をお勧めすする。「不思議の国のアリス・オリジナル(全2巻)」は装丁が金色で美しいので、読まなくても「小物」として喜ばれるだろう。「はてしない物語」は「数学的、理系的」要素を含んだファンタジー小説。ご自分でお読みになりこの本の深さ、楽しさを紹介できるようになってから贈ったほうがよいと思う。
最後になったが、根岸英一先生、鈴木章先生、ノーベル化学賞受賞おめでとうございます!
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とねの本棚(蔵書目録)
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日本の「理科離れ」、「科学離れ」を分析してみた。
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/07d58f2210ee741773b90aa23838c01d
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おめでとうございます!もしかすると回を重ねるうちにこの賞にも価値がでてくるかもしれません。
「悩めるみんなの統計学入門」だけでなく、rikunoraさんのブログは、理数系の高校生、大学生の興味を引き起こすという意味で大きな働きをしていると思います。出版にこぎつけるまでのエピソードもブログ記事で発表されたことにより、今後出版デビューされる方の参考になると思いました。
質のよい科学番組が少ない中、個人がブログで科学の面白さを発信することは大きな意味があると思います。これからもお互い楽しみながら頑張りましょう。
NHKのBS特集には物理学者や数学者の業績と生涯というテーマでシリーズ番組を作って欲しいのになと年末年始の番組をチェックしながら思いました。
おかげさまでノーベル賞受賞の気分を、ちょっぴり味わうことができました!
対象が「アマチュアの物理学、数学ファンによる書籍出版デビューを応援する賞」となっているのが素晴らしい。
受賞した身で言うのもなんですが、私自身、アマチュアの物理学、数学ファンの活動を応援したいと思っています。
来年以降もまた、注目の新人が現れることを期待しています。