とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

とね日記賞の発表!(2015年): 物理学賞、数学賞、他

2015年12月10日 00時00分00秒 | とね日記賞

毎年12月10日、スウェーデンのストックホルムでアルフレッド・ノーベルの命日に行われるノーベル賞の授賞式の日程にあわせて「とね日記賞」を発表している。今年で6回目。

ノーベル賞を僕がもらう見込みはどうもなさそうだ。それならば自分で賞を作って「あげる側」になってしまえ!という思いつきだ。

「とね日記賞」はその年に僕が読んだ物理学書、数学書の中から自分のためになった本、この分野を勉強している学生や社会人にお勧めする本を物理学、数学など各分野に分けてそれぞれ1~2冊発表する。あとテレビドラマ賞や贈り物にふさわしい本としてクリスマス賞というのも設けている。

たとえ名著と言われる本であっても僕がその価値を理解できなければ受賞できない。昨年以前に読んだ本は自動的に選考対象から外されるし、どんなに良書であっても僕が読んでいなければ対象外。今のところ洋書も対象外。何より僕の学習進度や理解度や好みに影響される。

メダルも賞金も授賞式も晩餐会も舞踏会もないから、ありがたくも何ともなく、主観に満ちたアンフェアな賞である。

- とね日記物理学賞
 物理学の教科書、専門書から選考。

- とね日記数学賞
 数学の教科書、専門書から選考。

- とね日記工学賞
 工学(特に電子工学)の教科書、専門書から選考。

- とね日記教養書賞
 一般向け書籍から分野別に選考。

- とね日記文学賞
 ジャンルを問わない小説、文学書から選考。

- とね日記新人賞
 書籍出版デビューを果たしたアマチュアが書いた本から選考。

- とね日記功労賞
 科学史への貢献、ライフワークを完結されたような本から選考。

- とね日記テレビドラマ賞
 テレビドラマの中からいちばんよかったものを選考。

- とね日記クリスマス賞
 クリスマスプレゼントにふさわしい本を選考。


この1年で読んだ本は昨年と同様25冊で、次の本を読んだ。通算264冊~288冊目。(参考:「200冊の理数系書籍を読んで得られたこと」)

- 電気通信物語―通信ネットワークを変えてきたもの:城水元次郎
- 現代数学への招待:多様体とは何か:志賀浩二
- 見えざる宇宙のかたち:シン=トゥン・ヤウ、スティーヴ・ネイディス
- スーパーシンメトリー ― 超対称性の世界:ゴードン・ケイン
- 基礎の固体物理学: 斯波弘行
- 東大教授が語る、東大新入生のための数学ブックガイド
- ガロア理論の頂を踏む: 石井俊全
- 数学の言葉で世界を見たら: 大栗博司
- 固体物理の基礎 全4巻: アシュクロフト、マーミン
- 超ひも理論をパパに習ってみた: 橋本幸士
- 「知」の欺瞞:アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン
- 二重螺旋 完全版: ジェームズ・D. ワトソン
- クォーク 第2版: 南部陽一郎
- DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで: ジェームズ・D. ワトソン
- DNA (下)―ゲノム解読から遺伝病、人類の進化まで: ジェームズ・D. ワトソン
- 原子・原子核・原子力―わたしが講義で伝えたかったこと:山本義隆
- 福島の原発事故をめぐって― いくつか学び考えたこと:山本義隆
- トポロジー入門: 松本幸夫
- 知識ゼロからの異常気象入門:斉田季実治
- ゴム弾性(初版復刻版):久保亮五
- 数学の大統一に挑む:エドワード・フレンケル
- 気象キャスター寺川奈津美 はれますように~未来はきっと変えられる
- ゴムはなぜ伸びる?:伊藤眞義


それでは2015年の「とね日記賞」を発表しよう。(書籍名と画像は本の購入ページにリンクさせておいた。)


* 物理学賞

ゴム弾性(初版復刻版):久保亮五



授賞理由: 今年は物性物理学の教科書を何冊も読んだので「固体物理の基礎 全4巻: アシュクロフト、マーミン」も候補に上がっていた。しかし僕にとっては久保先生が若き研究者だった頃にお書きになったこの本のインパクトが強く、年月を経ても価値の損なわれない名著であることから授賞させていただいた。ゴムは金属バネのようにフックの法則に従わないし弾性のしくみも全く違う。そのことを定性的に説明し熱力学、統計力学的なモデル化によって計算して解明した研究成果をまとめた本。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

ゴム弾性(初版復刻版):久保亮五
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c3b0c788cdcdd1087798179f3dfed0f8


* 数学賞

トポロジー入門:松本幸夫」(オンデマンド版



授賞理由: トポロジー(特にホモトピー理論)に入門するための本格的な教科書である。これまで厳密な教科書は読んでいなかったので僕にとってとてもよい経験になった。朝日カルチャーセンターで著者の松本先生の講義を聞くことができたのも今年のハイライトのひとつである。大いに刺激を受けた。(参考記事:「多様体」超入門:現代幾何学が解き明かす「曲がった空間」(朝日カルチャーセンター)

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

トポロジー入門: 松本幸夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bce517a89b400cb9c52f459f41ff195d


* 教養書賞(物理学部門)

見えざる宇宙のかたち―ひも理論に秘められた次元の幾何学:シン=トゥン・ヤウ、スティーヴ・ネイディス




授賞理由: 厳密にいえばこれはカラビ-ヤウ多様体という数学的対象についての本だが、これはカラビ-ヤウ空間として考えれば超弦理論の基礎をなす物理的な実在である。物理学賞として授賞させていただいたのはこのような理由による。超弦理論についての科学教養書でもカラビ-ヤウ空間は取り上げられるが詳しいことは省略されている。この理論を発表した数学者ご自身による著作、それも科学教養書として読めるのはこの本だけである。一般の方から研究者まであらゆる学習レベルの読者にとって示唆に富み、複素多様体の勉強や研究の道しるべとなるに違いない。原書のタイトルは「The Shape of Inner Space(内部空間の形)」。邦題はSpaceを「宇宙」と訳しているが、本書はいわゆる「天文・宇宙」の本ではないのでご注意。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

見えざる宇宙のかたち:シン=トゥン・ヤウ、スティーヴ・ネイディス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/943c5a3cf09a78c3b4e8e933ce379879


* 教養書賞(数学部門)

数学の大統一に挑む:エドワード・フレンケル」(Kindle版



授賞理由: 今年の数学書ではこの本がダントツだった。本書の概要は「NHK数学ミステリー白熱教室」として放送されたので私たちにとってフレンケル教授は「今年の顔」である。数学の深淵な世界を魅力的かつ効果的に伝えるだけでなく現代数学と現代物理学のミステリアスなつながりを多くの視聴者に印象づけた功績は大きいと思う。フレンケル教授は数学嫌いの人をも取り込んでしまう個性と表現力の持ち主だ。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

数学の大統一に挑む:エドワード・フレンケル
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/43ca100e56e15427613b009af55c8f7d


* 教養書賞(工学部門)

電気通信物語―通信ネットワークを変えてきたもの:城水元次郎



授賞賞理由: スマートフォンやパソコンを当たり前のように使っている現在、その有難みはつい忘れがちだ。そもそも人類は「電気」を使ってどのように情報を伝えていたのだろうか?ペリー提督が浦賀に黒船で来航したとき、彼は有線のモールス電信機と蒸気機関車の模型を持ってきていたことをみなさんはご存知だろうか?彼が行なった有線電信のデモンストレーションに江戸幕府どのような反応を示していたのだろうか? 本書はこのような電気通信の始まりからインターネット時代に至るまでの歴史を技術的側面からだけでなく、社会や生活に与えた影響、商用利用や国家戦略の視点から解説した壮大な技術革新の物語である。本書はこの分野の技術者、経営者として生涯を捧げた著者による渾身の作。今ではすたれて使われなくなった技術も発明された当時は先端技術だ。繰り返される発明と問題解決は読む者に驚きを与えてくれる。ビクトリア王朝期に始まった海底ケーブル敷設の歴史、電話交換手の労働問題、固定電話の電話線敷設や自動交換機の発展史が特に面白かった。ぜひお読みになっていただきたい。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

電気通信物語―通信ネットワークを変えてきたもの:城水元次郎
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/00d0368b539939404dfbe2a03eae3114


* 新人賞

気象キャスター寺川奈津美 はれますように~未来はきっと変えられる



授賞理由: 今年の候補にはフレンケル教授と寺川奈津美さんの2名があげられるが、フレンケル教授には数学賞を授賞させていただいたので新人賞は寺川さんに授賞させていただいた。朝日カルチャーセンターで彼女の気象講座も受講させていただいたので僕にとっては本書と合わせてワンセットである。(参考記事:「寺川奈津美の気象講座(朝日カルチャーセンター)」)ひきつづき第2作も期待しているところだ。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

気象キャスター寺川奈津美 はれますように~未来はきっと変えられる
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bd5b4615a4468919445a010183866934


* 功労賞

プリンストン 数学大全(朝倉書店)



授賞理由: 1200ページの大著を翻訳、編集するのは並々ならぬ労力が必要であるだけでなく、企画、翻訳や執筆の調整、校正作業など綿密な打ち合わせと調整が必要だ。監修および翻訳に携わった諸先生方、朝倉書店の関係者の皆様のおかげでこのように素晴らしい本を日本語で読めるようにしていただいたことに感謝したい。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

発売情報: プリンストン 数学大全(朝倉書店)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6a6493fc734b8d5aeebb0f057227bd07


* 文学賞

トムは真夜中の庭で : フィリパ・ピアス



授賞理由: 2つの異なる時代を隔ててひとつの空間を共有しながら進む幻想的な世界。児童文学でありながら大人も魅了する名作だと思う。いわゆるSF作品ではない。書店ではほとんど見かけない本なので、ぜひ知っておいてほしいと思い授賞させていただいた。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

トムは真夜中の庭で : フィリパ・ピアス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a8f1223f0242059f6d3a9abe61c26e85


* テレビドラマ賞

この1年は素晴らしいドラマが目白押しだった。大豊作なので選ぶのが大変で授賞候補はこんなにたくさんある。「流星ワゴン」、「問題のあるレストラン」、「デート~恋とはどんなものかしら~」、「ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~」、「戦う!書店ガール」、「天皇の料理番」、 「マザーゲーム 彼女たちの階級」 、「心がポキッとね」、「あさが来た」、「Dr.倫太郎」、「アルジャーノンに花束を」、「表参道高校合唱部!」 、「ナポレオンの村」 、「花咲舞が黙ってない」、「釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~」、「無痛~診える眼」、「コウノドリ!」など。

どれに授賞してもおかしくないのだが、次の2つに決めさせていただいた。

あさが来た



授賞理由: 視聴率27パーセント超えの朝ドラ。家族全員楽しませていただいている。NHKの朝ドラは新人女優の登竜門で、ヒロインに抜擢されるには健康的で明るいという条件が求められる。ヒロインあさ役の波留さんは新人ではないけれども、夏目雅子の再来とも言われているだけに今後のご活躍が楽しみだ。朝ドラは半年続くので「健康的」という条件は大切だ。波留さん、そして出演している俳優の方々には無事乗り切ってほしい。

ヒロインのモデルとなった広岡浅子の関連本はたくさん出ている。検索しやすいようにしておこう。

紙の書籍: Amazonで検索する

Kindle書籍: Amazonで検索する


この番組にあやかって「びっくりぽんそろばん(35000円)」と「パチパチはんそろばん(2400円)」が株式会社ダイイチから販売されている。

びっくりぽんそろばん(天2地5の7玉タイプ)


パチパチはんそろばん(天1地4の5玉タイプ)



そして2つめはこのドラマだ。

釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~



授賞理由: ドラマはとにかく楽しいのがいちばん。三國連太郎さんがお亡くなりになり、もうこのドラマを見ることはできないのかと寂しく思っていたのは僕だけではないだろう。西田敏行さんはスーさん役を引き受けるにあたって相当悩まれたそうだ。いざ新作が始まってみると前作の雰囲気を踏襲しつつ新鮮な感じで、ハマちゃん役の濱田岳さんをはじめ、キャスティングはほぼ完ぺきだと思う。でもスーさんの奥さん役に浅田美代子さんか石田えりさんを起用したら。。。いや、そうしてしまうと旧作のイメージが強過ぎてしまうかもしれない。ということで市毛良枝さんの起用に僕も賛成だ。


* クリスマス賞

アリスとキャロルのパズルランド 不思議の国の謎解きブック

 

授賞理由: クリスマスプレゼントに本を贈りたいのであればこれがいちばん。価格が手ごろなわりに高級感たっぷり。アマゾンのギフトラッピングを使うとよいだろう。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

アリスとキャロルのパズルランド 不思議の国の謎解きブック
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/69d049330b9e82752d583a32d737a3a1



最後になりましたが、今日ノーベル物理学賞を受賞される梶田隆章先生、医学生理学賞を受賞される大村智先生に心からお祝いを申し上げます。

2015年 ノーベル物理学賞は梶田隆章先生、アーサー・マクドナルド先生に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8c8286906a9397277af1f47e7260efe7

先生方の著書、関連書籍を紹介して今年の「とね日記賞」を締めくくることにいたします。

ニュートリノで探る宇宙と素粒子:梶田隆章」(Kindle版
大村智ものがたり~苦しい道こそ楽しい人生」(Kindle版

 


関連記事:

とね日記賞の発表!(2010年): 物理学賞、数学賞、他
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とね日記賞の発表!(2011年): 物理学賞、数学賞、他
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とね日記賞の発表!(2012年): 物理学賞、数学賞、他
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とね日記賞の発表!(2013年): 物理学賞、数学賞、他
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とね日記賞の発表!(2014年): 物理学賞、数学賞、他
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