とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
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次は「相対論的量子力学」の読み比べにしよう

2010年10月26日 00時05分41秒 | 物理学、数学
次に読むのを数学書にしようか物理学書にしようか迷ったが、結局「相対論的量子力学」というタイトルのついた2つの教科書を読み比べることにした。

相対論的量子力学とは電子など光速に近い速度で運動する粒子を量子力学的に扱うために、アインシュタインの特殊相対性理論を導入して量子力学を拡張したものだ。その結果、陽電子をはじめとする反粒子(反物質)の存在が導かれた。

量子力学 II:猪木慶治、川合光」にも相対論的量子論の説明は含まれているが、残念ながら未消化に終わってしまったので、この分野に特化した教科書で再挑戦というところ。「再敗北」にならなければよいが。(笑)

相対論的量子論は量子力学の教科書の応用部分として含まれていることもあるし、基礎的項目として量子場の理論の教科書に含まれていることもある。前者の例としては、もちろんこの分野の先駆者であるディラックの「量子力学」があり、また「量子力学(II):小出昭一郎」にも相対論的量子力学が説明されている。

読み比べとして僕が選んだのは「相対論的量子力学 (共立物理学講座):森田 正人, 森田 玲子」と「相対論的量子力学:西島和彦」の2冊。前者はレア本で今日現在アマゾンのマーケットプレイスで1万6千円の値段がつけられている。両方とも200ページくらいで物理学の教科書としては薄い。

 

同じタイトルの本であっても、ターゲットとしている読者のレベルやカバーしている内容が若干異なるのでそれぞれ目次を紹介しておこう。(森田先生の教科書のほうがずっと入門者にやさしく、西島先生の教科書はより発展的な内容が含まれている。)

相対論的量子力学 (共立物理学講座):森田 正人, 森田 玲子」:読後のレビュー記事

第1章:特殊相対性理論
- 慣性系
- 特殊相対性理論
-- 光速度不変の原理
-- 特殊相対性理論
- 4次元時空(ミンコフスキー空間)
- ローレンツ変換
- 相対論的力学

第2章:電磁場の古典論
- マクスウェルの電磁理論
-- エネルギー保存則
-- 運動量保存則
- ポテンシャルとゲージ
-- ローレンツ・ゲージ
-- クーロン・ゲージ
- マクスウェル方程式の共変性
- 輻射場と調和振動子
- 直線偏光と円偏光

第3章:相互作用がない場合のディラック方程式
- クライン・ゴルドンの波動方程式
- ディラック方程式
- ディラックのガンマ行列の性質
- ディラック方程式の相対論的不変性
- ディラック方程式の平面波解
- 角運動量とディラック方程式の球面波解

第4章:電磁場がある場合のディラック方程式
- 電磁場ばある場合のディラック方程式
- 非相対論的近似
- 水素原子の相対論的とり扱い
- 空孔理論と荷電共役理論
-- Diracの空孔理論
-- 荷電共役理論

第5章:場の量子論
- 輻射場の量子化
- Dirac場の量子場
-- 相互作用がない場合
-- 電子と光子の相互作用
- 時間を含む摂動論

第6章:光子と物質との相互作用
- 輻射場と物質との相互作用
-- 原子からの光の放出
-- 光の吸収
- 双極輻射
- 電気的双極輻射に対する選択則
- 電子による光の散乱
- 多重極遷移
- ゼーマン効果

第7章:コンプトン散乱
- コンプトン散乱のための摂動計算
- コンプトン散乱の遷移行列要素
- コンプトン散乱の散乱断面積

付録A:3次元ベクトルの演算記号
付録B:γ行列とトレース
- γ行列の代数
- γ行列のトレース
付録C:双一次共変量
付録D:粒子数表現
- 粒子数表現
- 生成および消滅演算子(ボーズ粒子、フェルミ粒子)
- 粒子数表現での物理量
- 場の演算子
- 場の演算子を用いたハミルトニアンと運動方程式
- 第2量子化:場の量子化

相対論的量子力学:西島和彦」:読後のレビュー記事

第1章:Dirac方程式
 - 自然単位
 - 非相対論的量子力学
 - Klein-Gordon方程式
 - 荷電粒子に対するKlein-Gordon方程式
 - Dirac方程式の導入
 - Weyl方程式の導入
 - Dirac方程式の相対論的共変性
 - Dirac行列の性質
 - 自由粒子に対するDirac方程式
 - 静電磁場におけるDirac方程式
 - 負エネルギー解の物理的解釈 
 - 中心的静電場におけるDirac方程式の解
 - 断面積の定義
 - 外場によるDirac粒子の散乱
 - 電子 - 電子散乱
 - 空孔理論におけるDirac粒子の散乱

第2章:電磁場の量子論
 - 古典電磁力学の正準形式
 - 電磁場の量子化
 - 電磁場と電子との相互作用
 - 摂動論

第3章:電磁場の量子論の応用
 - 輻射の放出と吸収
 - 摂動論の改良と共鳴散乱
 - 光電効果
 - Thomson散乱
 - 非相対論的近似における光子の散乱
 - Klein-Nishinaの公式

第4章:散乱の一般論
 - 散乱問題と因果律
 - 散乱振幅の部分波展開
 - Born近似
 - S波散乱の例題
 - effective rangeの理論
 - S行列と束縛状態
 - Fredholm理論の応用
 - 重心系と実験室系
 - スピン依存力
 - 同種粒子
 - Lippmann-Schwinger方程式
 - 組み替え反応の理論

付録
A.時間反転


ネット上には相対論的量子力学を学ぶためのホームページやPDFファイルが公開されているので、このような資料で勉強されるのもよいだろう。

EMANの量子力学(第4部「相対論的量子力学」)
http://eman-physics.net/quantum/contents.html

相対論的量子力学入門(倉澤先生による講義資料)
http://physics.s.chiba-u.ac.jp/~kurasawa/#lecture

相対論的量子力学(物理のぺーじ?)
http://members3.jcom.home.ne.jp/nososnd/qu/qu.html

相対論的量子力学(坂井先生による資料)
http://www.th.phys.titech.ac.jp/~nsakai/rqm80128.pdf

余談であるが、「電子のスピン」は相対論を持ち出さなくても、つまり相対論的量子力学におけるディラック方程式を持ち出さなくても(通常の線形な)量子力学の範囲で導き出すことができるそうだ。このあたりのことは「EMANの物理学」の以下のページを参考にされるとよい。

非相対論的にスピンを導く(シュレーディンガー方程式の線形化)
http://eman-physics.net/quantum/linearize.html


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