「集合への30講:志賀浩二著」
「群論への30講:志賀浩二著」の次に読んでみたのが「集合への30講:志賀浩二著」である。期待は裏切られなかった。集合論ってこんなに面白んだっけ?と思わせてくれるのがこの本だ。
志賀先生の「数学30講シリーズ」は大学レベルの数学を(理系の)高校生や社会人にも理解できるほど身近かなものにしてくれる。自分で証明したり問題が解けるようになるわけではないが「(数学の)概念を理解したい」という要望にこれほど応えてくれる本はめずらしい。はしがきにも書いてあるように通勤電車で読める数学書なのだ。読み物風の教科書といった感じである。センス豊かな数学の感性を生き生きと伝えているシリーズだ。
僕が子供の頃、「集合」はまだ小学校算数の学習課程に含まれていた。今なら中学や高校で習うのだろう。ベン図を描いたりド・モルガンの法則を覚えたりしても僕はっとも面白くなかった。つまりそれは「餃子の皮だけを食べさせられる」ようなものだったからなのだとこの本を読んで気付いたのだ。
集合論は「無限の数」や「無限集合の濃度」について考えると、とらえがたく不思議な世界が開けてくるのだ。自然数が無限に続くことはご存知だろうが、自然数と整数はどちらのほうがたくさんあるのだろうか?分数(有理数)と自然数はどうであろうか?分数(有理数)と無理数をあわせると実数になるが無理数はどれくらいたくさん存在しているのだろうか?正方形の辺を構成している点の数と正方形自体の面を構成している点の数はどちらが多いのだろうか?
誰しも「無限」ということに一度は思いを馳せたことがあるだろう。集合論は上のような疑問に明解かつ不思議な答を与えてくれるのだ。無限集合どうしの組み合わせ(直積集合やベキ集合)を考えることで「無限」はまた「無限の無限」のように限りなく上に伸びていく階層構造を持ち、さらなる「無限」が存在していることが明らかになってくる。このように「とてつもない無限」を集合論ではどのように扱うのだろうか。この本は明解にこの問いに答えてくれている。
さらに順序集合や選択公理とい考え方を取り入れ、別の角度から無限集合への考察を深めていく。すると無限を扱うこの本の不思議な世界は、私たちがまだほんの入り口に到達したにすぎないということが第30講に近づくにつれて明らかになっていくのだ。
上の質問の回答:理由は本書やこのページを参照。
- 自然数と整数の数は同じ。(両者の濃度は等しい。)
- 分数(有理数)と自然数の数も同じ。(両者の濃度は等しい。)
- 無理数と実数の数も同じ。(両者の濃度は等しい。)
- 正方形の辺と面を構成する点の数は同じ。(両者の濃度は等しい。)
とても楽しめた本だったので、もしかしたら面白いトピックだけ取り上げたのかなと思い、一般の集合論の教科書をチェックしたところカバーしている内容はほぼ一致していた。だから数学科の学生の副読本としても本書はお勧めな1冊であるわけだ。
集合論は現代数学の基礎中の基礎である。数学で扱うあらゆる対象がどのように存在しているのかを研究する分野だからだ。たまには原点に立ち戻ってこのような本を読むのもよいことだろう。
「集合・位相」の教科書でもう1冊紹介するとしたらこの本をお勧めする。
「集合・位相入門: 松坂和夫著」
今日の記事で紹介した本はこちら。
「集合への30講:志賀浩二著」
目次
第1講:身近なところにある集合
第2講:自然数の集合
第3講:集合に関する基本概念
第4講:有限集合の間の演算、個数の計算
第5講:可算集合
第6講:可算集合の和集合と直積集合
第7講:数直線上の可算集合
第8講:実数の構造 - 小数展開
第9講:2進法、3進法、...
第10講:実数の集合
第11講:一般的な設定へ
第12講:写像
第13講:直積集合と写像の集合
第14講:濃度
第15講:濃度の大小
第16講:連続体の濃度をもつ集合
第17講:連続体の濃度をもつ集合(つづき)
第18講:ベキ集合の濃度
第19講:可算集合を並べる
第20講:順序集合
第21講:整列集合
第22講:整列集合の性質
第23講:整列集合の基本定理
第24講:順序数
第25講:比較可能定理、整列可能定理
第26講:整列可能定理と選択公理
第27講:選択公理のヴァリエーション
第28講:選択公理からの帰結
第29講:連続体仮設
第30講:ゲオルグ・カントル
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「群論への30講:志賀浩二著」の次に読んでみたのが「集合への30講:志賀浩二著」である。期待は裏切られなかった。集合論ってこんなに面白んだっけ?と思わせてくれるのがこの本だ。
志賀先生の「数学30講シリーズ」は大学レベルの数学を(理系の)高校生や社会人にも理解できるほど身近かなものにしてくれる。自分で証明したり問題が解けるようになるわけではないが「(数学の)概念を理解したい」という要望にこれほど応えてくれる本はめずらしい。はしがきにも書いてあるように通勤電車で読める数学書なのだ。読み物風の教科書といった感じである。センス豊かな数学の感性を生き生きと伝えているシリーズだ。
僕が子供の頃、「集合」はまだ小学校算数の学習課程に含まれていた。今なら中学や高校で習うのだろう。ベン図を描いたりド・モルガンの法則を覚えたりしても僕はっとも面白くなかった。つまりそれは「餃子の皮だけを食べさせられる」ようなものだったからなのだとこの本を読んで気付いたのだ。
集合論は「無限の数」や「無限集合の濃度」について考えると、とらえがたく不思議な世界が開けてくるのだ。自然数が無限に続くことはご存知だろうが、自然数と整数はどちらのほうがたくさんあるのだろうか?分数(有理数)と自然数はどうであろうか?分数(有理数)と無理数をあわせると実数になるが無理数はどれくらいたくさん存在しているのだろうか?正方形の辺を構成している点の数と正方形自体の面を構成している点の数はどちらが多いのだろうか?
誰しも「無限」ということに一度は思いを馳せたことがあるだろう。集合論は上のような疑問に明解かつ不思議な答を与えてくれるのだ。無限集合どうしの組み合わせ(直積集合やベキ集合)を考えることで「無限」はまた「無限の無限」のように限りなく上に伸びていく階層構造を持ち、さらなる「無限」が存在していることが明らかになってくる。このように「とてつもない無限」を集合論ではどのように扱うのだろうか。この本は明解にこの問いに答えてくれている。
さらに順序集合や選択公理とい考え方を取り入れ、別の角度から無限集合への考察を深めていく。すると無限を扱うこの本の不思議な世界は、私たちがまだほんの入り口に到達したにすぎないということが第30講に近づくにつれて明らかになっていくのだ。
上の質問の回答:理由は本書やこのページを参照。
- 自然数と整数の数は同じ。(両者の濃度は等しい。)
- 分数(有理数)と自然数の数も同じ。(両者の濃度は等しい。)
- 無理数と実数の数も同じ。(両者の濃度は等しい。)
- 正方形の辺と面を構成する点の数は同じ。(両者の濃度は等しい。)
とても楽しめた本だったので、もしかしたら面白いトピックだけ取り上げたのかなと思い、一般の集合論の教科書をチェックしたところカバーしている内容はほぼ一致していた。だから数学科の学生の副読本としても本書はお勧めな1冊であるわけだ。
集合論は現代数学の基礎中の基礎である。数学で扱うあらゆる対象がどのように存在しているのかを研究する分野だからだ。たまには原点に立ち戻ってこのような本を読むのもよいことだろう。
「集合・位相」の教科書でもう1冊紹介するとしたらこの本をお勧めする。
「集合・位相入門: 松坂和夫著」
今日の記事で紹介した本はこちら。
「集合への30講:志賀浩二著」
目次
第1講:身近なところにある集合
第2講:自然数の集合
第3講:集合に関する基本概念
第4講:有限集合の間の演算、個数の計算
第5講:可算集合
第6講:可算集合の和集合と直積集合
第7講:数直線上の可算集合
第8講:実数の構造 - 小数展開
第9講:2進法、3進法、...
第10講:実数の集合
第11講:一般的な設定へ
第12講:写像
第13講:直積集合と写像の集合
第14講:濃度
第15講:濃度の大小
第16講:連続体の濃度をもつ集合
第17講:連続体の濃度をもつ集合(つづき)
第18講:ベキ集合の濃度
第19講:可算集合を並べる
第20講:順序集合
第21講:整列集合
第22講:整列集合の性質
第23講:整列集合の基本定理
第24講:順序数
第25講:比較可能定理、整列可能定理
第26講:整列可能定理と選択公理
第27講:選択公理のヴァリエーション
第28講:選択公理からの帰結
第29講:連続体仮設
第30講:ゲオルグ・カントル
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