とね日記

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クリスマス・ピッグ: J.K.ローリング

2021年12月19日 16時50分00秒 | 小説、文学、一般書
クリスマス・ピッグ: J.K.ローリング」(Kindle版

内容紹介:
ジャックとぬいぐるみは、一緒に魔法の旅をはじめます。失われたものを取りもどし、一番の親友を見つけるために。J.K.ローリングが『ハリー・ポッター』のあとに初めて書いた児童書です。
ジャックは、小さい頃にもらったブタのぬいぐるみが大好きです。良いことがあっても悪いことがあっても、ぬいぐるみはいつもジャックのそばにいました。ところが、ある年のクリスマスイブ、恐ろしいことが起こります――ぬいぐるみがいなくなったのです。それでも、クリスマスイブは、起こるはずのない奇跡が起こり、叶うはずのない願いが叶い、あらゆるものに命が宿る日です――もちろん、ぬいぐるみにも。ジャックがクリスマスにもらった新しいブタのぬいぐるみ(消えた宝物のかわりにやってきた、口うるさい子ブタです)は、大胆な計画をくわだてました。ジャックと新しいぬいぐるみは、一緒に魔法の旅をはじめます。失われたものを取りもどし、ジャックの一番の親友を見つけるために。

2021年10月12日刊行、368ページ

著者:
著者のJ.K.ローリングは、記録的ベストセラーであり多数の賞を獲得した『ハリーポッター・シリーズ』の著者。世界中で愛読された本シリーズは、これまで累計5億部以上を売り上げ、80カ国語に翻訳された。8部作の映画は大ヒットを記録。チャリティーのために出版された副読本が3冊ある。『クィディッチ今昔』と『幻の動物とその生息地』の売り上げは〈コミック・リリーフ〉、〈ルーモス〉に寄付され、『吟遊詩人ビードルの物語』の売り上げは〈ルーモス〉に寄付された。著者は『幻の動物とその生息地』に着想を得て、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の脚本を執筆。この作品を皮切りとして、5部作の映画シリーズの公開が始まった。J.K.ローリングはまた、『ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部』の舞台も手掛けている。この作品は、2016年夏にロンドンのウェストエンドで初演され、2018年春にはブロードウェーでも上演された。2012年、J.K.ローリングはウェブサイト〈ポッターモア〉を開設。このサイトでは様々なコンテンツや記事、J.K.ローリングによる書下ろし作品を楽しむことができる。J.K.ローリングは一般書『カジュアル・ベイカンシー 突然の空席』を執筆したほか、ロバート・ガルブレイスのペンネームで犯罪小説を発表している。これまで、大英帝国勲章、レジオンドヌール勲章、ハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞など、いくつもの賞を受賞してきた。



先日発表した「とね日記賞2021」でクリスマス賞として授賞させていただいた児童書である。クリスマス賞というのはクリスマスプレゼントにふさわしい本に贈る賞のことだ。読んでもいないのに紹介するのはよくないと思いKindle版を読んでみた。

1年に1冊くらいのペースで児童書を読むことにしている。子供の頃に読んだ本を読み返すこともあれば、原作が洋書の場合は英語版で読み直すこともある。そうすればふだんは目にすることがない言葉や表現を知ることができるし、オーディオブックを使えばリスニングの学習としても使うことができるからだ。

今回紹介するのは「クリスマス・ピッグ: J.K.ローリング」(Kindle版)だ。10月に発売されたばかりの人気本である。

原作は『ハリーポッター・シリーズ』の原作者のJ.K.ローリング、日本語訳は同シリーズを翻訳された松岡佑子さんだ。友人やお子さん、自分へのクリスマスプレゼントにどうぞ。日本語版と英語版のAmazonの読者レビューをお読みになれば、素晴らしい作品だということがおわかりになるだろう。

物理学書、数学書であればネタバレを気にせず紹介できるのだが、児童書や(そして映画)をネタバレさせずに紹介するのは難しい。本書は児童書とはいえ368ページもある大作で読み応えはじゅうぶんある。小学校高学年以上でないと読み通すことはできないと思った。

主人公はジャックという少年。小さいころからお気に入りのブタのぬいぐるみと一緒で、一時も離れることなく過ごしていた。彼はかけがえのないその友人を「DP」と呼んでいる。幼いころ「The pig(ザ・ピッグ)」を上手に発音できず「Dur pig(ダー・ピッグ)」と発音していたためDPになったというわけだ。長年一緒に過ごしていたため、DPは色あせ、耳はちぎれている。何度も洗濯をしたのでボロボロになっている。それでもジャックはDPのことが大好きなのだ。

表紙にかわいらしいブタと手をつないでいるジャックの姿があるが、このブタはDPではない。どこも破れていないし色も鮮やかである。このブタは「クリスマス・ピッグ」。クリスマスプレゼントとしてもらったぬいぐるみだ。物語の後半でCP(Christmas pig)と呼ばれることになる。ジャックはCPと一緒に、いなくなったDPを探す冒険にでかけるところなのだ。それがこの表紙の意味である。

DPがいるのになぜジャックはCPをもらうことになるのか?そしてなぜDPはいなくなってしまったのか?冒険に行くのにジャックはなぜパジャマを着ているのか?それらは本書の最初のほう、冒険に出るシーンまでで明かされる。

大部分が冒険物語である。彼らが向かった先はどこなのか?そしてそこではどのようなモノと出会い、何がおこるのか?また、そこには「敵」がいるのだろうか?失われた友をどのようにして探すのだろうか?このような想いを抱きつつ読み進むことになる。

児童書だからもちろんハッピーエンドだ。しかし、この本は「ああ、よかった!」で終わるように単純ではない。何かを得れば、何かを失うことになる。それは現実の人生でもよくあることだ。Amazonの読者レビューに「感動して自然と涙が出てきました。」とか「最後は感動しましたが、とにかく深く考えさせられる内容でした。」と書かれているが、その感動は単なるハッピーエンドということではない。

クリスマスイブには奇跡がおこる。しかし、その奇跡で得られたものはクリスマスイブ以降には持ち越すことができないのだ。それでも奇跡を体験する前と後では確実に何かが変わっている。これがこの物語に深みを与えているのだと僕は思った。

これ以上書くとネタバレになってしまうから、やめておくことにしよう。大人でもじゅうぶん楽しめる作品である。


お買い求めになる方は、こちらからどうぞ。

クリスマス・ピッグ: J.K.ローリング」(Kindle版
The Christmas Pig: J.K.Rowling」(Kindle版
 

このほかAmazon.co.jpからはドイツ語版スペイン語版韓国語版を、Amazon.frからはフランス語版を購入することができる。

【総集編】J. K .ローリング『クリスマス・ピッグ』インタビュー: YouTubeで再生 関連動画


(字幕付)『クリスマス・ピッグ』J .K .ローリングの朗読(再生時間12分): YouTubeで再生


関連記事:

「ハリー・ポッター」シリーズの英語版、そしてフランス語版と日本語版
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トムは真夜中の庭で : フィリパ・ピアス
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クリスマス・ピッグ: J.K.ローリング」(Kindle版


その1 ダー・ピッグ
その2 置き忘れ
その3「捨ててよいモノ」
その4「失って困った」
その5「嘆かれないモノの荒野」
その6「愛しいモノの町」
その7「最愛のモノの島」
その8「失」の巣
その9 わが家に

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