40年来の愛聴盤の一枚である。
ラヴェルの音楽は緻密でありながら透明感のある、また多様な感情が色彩豊かに繰り広げられる。
パリ音楽院管弦楽団を指揮するクリュイタンスは、ベルギー生まれだそうだ。
世紀末から20世紀初頭に、多様で革新的な芸術的変革のなかにあり、ラヴェルはその才能を存分に発揮させたのだろう。
彼が最後に残した管弦楽曲「ボレロ」はあまりにも有名だが、一つのテーマを管弦楽の巧みな変化だけで構成するという、大胆な試みだった。
彼が創造したその緻密なガラス細工が、実はすぐそこまで迫っていた戦火を予言していたかのよう、などとに感じるのは大袈裟だろうか。
いずれにせよクリュイタンスの名演は、ラベルの神髄を正攻法で今に伝えている。