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「さいはての家」彩瀬まる ネタバレ感想

2020-07-04 | 小説・漫画他

面白かったです!4つ★半

既に発表されている短編を、この本にまとめる際に、少し筆を入れたそうで、もしかしたら、同じ家を舞台にしている、ってことにするために、加筆されたのかしら? そのあたりは解りませんが・・・

こういう、前にどんな人が住んでいたのか?っていうのって、とても興味が湧きます。前の住民だけではなく、その前の前、それよりも前の人はどういう人だったんだろう・・・と代々の人達のこと、考えてしまいます。
以前、万城目さんの本で、賃貸のお店が代々受け継がれて行く様等を描いていて、それも面白く読んだ事がありました。

★今日はネタバレで感想書いています★

時系列で行くと、古い順に はねつき、ひかり、ゆすらうめ、 ままごと かざあな かな。
はねつき の前の年取った男性が、どんな人だったのか、興味あるな。(箱を置いてった元祖? それよりも前の住人?)

5つの短編の中でも、「ゆすらうめ」が、ぐっと来るものがあって、これ一つで映画に出来そうな感じだった。とても心に刺さったです。
「ままごと」も、家族の部分がとても丁寧に深く描かれていてすごいな、と思いました。父親の言った一言で縛られていた事に気がつく次女、ほわんとしていると思っていた長女の変化、家で楽していると思っていた母のこと・・・。
「はねつき」も味わい深かったです。
この3つが好きかな。


はねつき
2015年に書かれていた小説らしく、「あのひとは蜘蛛を潰せない」の時の文体というか、雰囲気を感じる作品でした。
刃物は使わずに箱に入れた後、差ったんですね。良かった。
本作では、かつての住人が残して行った物が入っている天井裏の段ボール箱があって、後のお話で、そのナイフが収められていたので、ほっとしましたよ^^

ゆすらうめ
とても良かったです。短いお話だけど、結構ガツンと来ました。
自分が過去にしてもらいたかったことを、今自分が誰かにしてあげることが嬉しいというの、すごく解ります。
昔の同級生でタクシー運転手をしている清吾が、とっても良い人でした・・・。

かつて自分がいじめられがちだった清吾を、助けた様に見えた発言をしたけれど、それは似たような自分にも、矛先が向かわない様にと自己防衛のためだったことなど、ぶちまけるのですが、
逆に清吾は意外な事を言うのでした。
「俺は何度も、つかもっちゃんを見捨てた」 同じアパートに住んでいて、母子家庭同士だが、その内情は違っていました。息子思いの看護師の母がいる清吾と、息子を放置しまくりのつかもっちゃんの家。

一人ぼっちな彼の事を解っていたのに「あの場所で一番気持ちが解るのはオレだったのに ~ ずっと覚えていた。つかもっちゃんがタクシーにに乗りこんできたとき、神様がくれたチャンスだと思った」
「別になにもしなくていいから家族みたいな感じになろうよ。ベランダの戸を閉じる時に、いつも思ってたんだ、俺とお前が兄弟だったら、こんな風に、苦しくなんないで済んだのにって」

しかし、ヤクザな奴らからの留守電が入っていて、その家を出て行くのですが、いつか戻って来れたら・・・という〆になっていました。

ひかり
不思議な力を持つ老女は、かつて新興宗教の元教祖だった

ままごと
周りに聞いたら、普通で評判も良さそうで、普通に良い彼氏って思われる人が、ストーカーになってしまう経緯を、被害者側の女性の視点で書いているのが新鮮というか・・・ この彼女の気持ちの移ろい等が、とても丁寧かつ解りやすくて、妙に納得してしまいました。
あと、実家の父が事業の成功者で、次女の主人公は父から期待されているが、長女や母は「だめだあいつは」と言われていて・・・。お嬢さん育ちの長女が、父のおぜん立てで、会社でも将来を期待される男性とのお見合い後、家を出て一人で暮らし始めるのだけど、がぜん輝きだすというか、しっかりしてくるんですよね。
最後の方の展開は、警察沙汰にまでなってしまって、そういう方向に話が行っちゃうんだ・・・と、思ったりしました。

かざあな
これは辛い。
今時の子持ちの共働きの男性は、大変ですね。
もちろん、その妻の大変さは、それの何倍も大変なのだけれど。あまり男性の立場に立って考えることが無かったので、逃げたい気持ちも分らんでもないと理解は出来ましたよ。
でも、不運だよね・・・ 会社を辞めることになる経緯とか・・・

あと、いいなあ!と思ったのは、不動産屋さんの方針。アフロの社員に聞いたところ、同期の子にアフリカ系の日本人がいて、その子が目立たないように、みんなそれぞれ個性を前面に出してみようって・・・笑
とても素敵な考えの会社だなあ!

さいはての家、と聞いてイメージするのとは違って、樹木やハーブ等緑が一杯のお庭のある古いお家は、結構魅力的でした。ただ、ネズミの駆除の様子や、鯉がわんさか寄って来て、金魚を食べてしまうシーン等、グロテスクだったり、不気味なシーンがちょっとづつ挿入されているんですよね。それが特徴なのかしら
そういうシーンが無くても私は、この作家さんの書くお話、良いなーと思ったりもするのですが・・。 

さいはての家 2020年01月24日 彩瀬 まる
駆け落ち、逃亡、雲隠れ。
行き詰まった人々が、ひととき住み着く「家」を巡る連作短編集。

彩瀬まるさんの他の本の感想
くちなし
あのひとは蜘蛛を潰せない ほんの5行だけの感想ですが・・・
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4 コメント

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Todo23さん☆ (latifa)
2020-08-01 09:04:14
Todo23さん、こんにちは!
あらまあ・・・今一つだったようですね。
すいません

グサッと来る作家さんっていうの、ありますよね。私にとっては、角田さんとかがそれなんですけれど、最近小説出されてないので残念です。

そうでしたよね!素敵なお家、幾度か拝見させていただいています。
小鳥たちが集まって来るなんて、いいなあ!! 
家の前の電信柱には、もっぱらカラスですよー 泣
たまに、とんびが来ます(とんび大歓迎。カラスが減るので)
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Unknown (todo23)
2020-07-31 16:26:49
こんにちは。
latifaさんの絶賛を見て読んでみました。
ごめんなさい。
読みやすいし、理解はできるのですが、やっぱり彩瀬さんは私にとってグサッと来ない作家さんのようです。
その中で良かったのは「ままごと」と「かざあな」の2編かな。

ちなみに私、築100年超えの家をDIYで修理しながら住んでます。
小さな庭も有って、すずめ、メジロ、ヒヨドリなど遊びに来ますよ。
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苗坊さん☆ (latifa)
2020-07-05 18:47:02
苗坊さん、こんにちは
さいはての家、ネズミや蛇とか虫とか出るのは困りますね。
昔、古い家に住んでいた時、ネズミが出て、大変な目にあった事があります。

不動産屋さん、いいですよね。こういう考えの会社がもっと増えると良いなーと思いました。
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Unknown (苗坊)
2020-07-04 15:11:05
こんにちは。
彩瀬さんが書かれる作品は私も大好きです。
文章が優しくて読みやすい気がします。
こちらで登場する一軒家は一人で住むのにも居心地が良さそうな気がしますが、古すぎて鼠が出るというのは考えちゃいますね^^;
不動産屋さんの方針が結構好きでした。働きやすそうです。
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