かがみの孤城 辻村深月
辻村さんの小説は、これが3冊目くらいかな・・・?
以前読んだ小説と、あんまり相性が良くなかったので(面白くないってわけじゃなかったのだけれど、どうも読みながら、引っかかる処や、んーーって思う処があって) 数年読んでいなかったのです。
でも、これは凄く良かったという評判を、周りから聞くことが多かったので、久しぶりにダメ元で(すいません)読んでみようか・・・と思って手に取りました。
今回は、最初から、ぐっと引き込まれて、読んでいる最中に引っかかる処とかは無く、最後には、ちょっとほろっとさせられ、読書後の後味も良くて、現在まさに闘っている渦中の学生の子、そして大人の人、多くの人に読んでもらいたいなーと思うとても良い本でした。
多分、辻村さんが、まだ学生の頃の気持ちを忘れずにいつつも、子供を持つ母になって親の側の気持ちと、両方を表現できる事によって、こういう素晴らしい作品が書けたのかなーとも思ったりします。
登場人物が割と多めなのですが、書き分けが上手いのか、それぞれのキャラが立っており、かつ名前も覚えやすいので、すんなりと読むことが出来ました。これも結構凄い事ですよね。
★以下、ネタバレ全開で、あらすじと感想を書いています★
主人公は、中一のこころ。
同じクラスになった、意地悪な力を持ってる女子の一方的な嫉妬のせいで、いじめを受けて、学校に行けなくなって、引きこもりになってしまいます。
こりゃー、学校行くの怖くなるよなあ・・・、こうなってしまうのも解るなあ・・と思いました。
学校内だけじゃなくて、家まで仲間を引き連れてやって来て、出てこいよー!って脅すだなんて、唖然としましたよ。
そして、担任のイダ先生もねー。後半になってまでも、その意地悪女子の肩を持つっていう・・・。
そんなこころが、かがみの向こうの世界に行って、7人の仲間と交流する内に、(すぐ仲良くなって打ち解けるんじゃなくて、そこに至るまでに、色々とあるのが、すごく良かったです。)勇気をもらえるようになったり、励まされたりして、成長していくんですよね。
そこに来てる子たちは、様々な事情があって、やっぱり学校に行けてない子が殆どで、リオンっていうハワイにいるイケメン中一だけは違う事情なんだけどね。
後に、このかがみの世界を作ったオオカミ様が、リオンの13歳で亡くなった、お姉ちゃんだったことが解ります。
ここに来てる女子は、主人公の中一の安西こころ(2006年)、1992年に中三のポニーテールでバレー部だった、活発な女子アキ(井上晶子=将来の喜多嶋先生)、ピアニストとして夢破れた2020年の中二のフウカ(長谷川風歌)。
アキがフリースクールの優しい喜多嶋先生と、もしかして同一人物かも?ってのは、フレーバーティーをくれる処で、気がついたのですが、時間枠が違うっていうのは、最後まで私は気がつかなかったです。
男子は、言葉遣いがちょっと変わってる、ウォークマン好きな長久昴(スバル)1985年に生きていて、両親と離れて暮らしている。
唯一、こころと同じ時代を生きる水守理音(リオン ハワイで寮生活を送る)、ゲームが大好きな政宗青澄アース(マサムネ 2013年)、惚れっぽい、いじられがちな嬉野遥(ウレシノ 2027年)
途中で、マサムネからの依頼で、三学期の最初の日、学校に行くことになります。
みんなも来るなら!って勇気を振り絞って登校するのですが、他のメンバーに会えませんでした。
これがきっかけになって、それぞれが別の時代を生きる同じ中学の生徒だということが解ります。
中盤くらいかな・・・?178ページに、ウレシノが「みんなバカにしてるじゃないか、僕のこと」って言うシーンがあります。
最初アキが好きで、次にこころ、そしてしばらくこころが来てない間に、フウカに乗り換えた?ウレシノに、私も内心呆れながら読んでいたのですが、そんなウレシノが本音をぶちまけるシーンで、はっとさせられました。
確かに、彼の言う通りだった。
いじられキャラの彼の事を、軽く見てしまっていたんですよね・・・ ごめんよ、ウレシノ・・・
そして、その流れで、リオンだけは学校に通えていて、ハワイでサッカーやってるってことが明るみになり、みんな同じ不登校だとばかり思っていたのに、違った事で、なんだか場が白けます・・・。
ウレシノは二学期から頑張って学校に行くも、喧嘩でボロボロになって、また戻って来ます。
こういう子、いますよね。あからさまにイジメのターゲットになってるってわけじゃないけれど、でも、いじられてる、って、本人にとっては、とても辛いことでイジメと同等で。
私が一番ジーンと来たシーンは、最後の方で、スバルがマサムネに、「ゲームを作る事」を約束します。
マサムネが、ホラ吹きって言われる原因となった、「ゲームクリエーターと知り合い」という口癖が、将来、本当になるって事ですよね。
それにしても、アキは家庭内で、そんな義父にセクハラを受けていたなんて・・・。あの後、彼女が頑張って学業に取り組み、立派なカウンセラーになって、子供たちを救う人になっているとは・・・ 涙。
みんな違う時代に生きる、パラレルワールドで、かがみの中の世界でだけ、繋がっていた仲間たち。
ウレシノとフウカは7つ違いだけど、まあ、あのウレシノの事だから、また違う子好きになっちゃって、この2人がくっつくことは無いかもしれませんね。
こころと、リオンは、もしかしたらいい仲になるかも? でも、こころ、イケメンのリオンだから、また女子にやっかまれないように注意しないとね^^
かがみの孤城 2017/5/11 辻村深月
辻村さんの作品は色々感じるものがありますもんね。私も初期の作品はまだ読んでいないものも多いです。でも何だかいろいろえぐられそうで躊躇してます^^;
この作品は辻村さんがお母さんになったから書けた作品なんだろうなと思いました。
いろんなところに伏線が張られていて見事でした。
こころとリオンが出会うラストに救いを感じました。
中学生くらいの頃って、本当に学校が戦場みたいな子も沢山いるんですよね・・・。
働いてからも、大人になってからも、やっぱり色々あるけど、あの時期は特にね・・。
こころが、こんな風になったらいいなあ・・・って思っていたのと、同じような事が現実に起きそうな、リオンとのラストでしたが、それこそ、こっそり仲良くしないと、やっかまれて、意地悪されそうで心配です
私も近年辻村深月さんの作品に苦手意識を持ち、読めなくなっていました。
しかしこの作品が本屋大賞を受賞したのを知った時、これはぜひ読もうという気になり久しぶりに読みました。
真田美織は最悪だと思いました
そしてイダ先生の酷さも印象的でした。
ウレシノは私も次々と女の子に惚れていく人で軽く見がちになっていましたが、軽く見られることに強いストレスを感じていたのが印象的で、気をつけなければいけないと思いました。
こころのことはずっと応援しながら読んでいましたが唯一、母親に対して「こころの好きに過ごさせてほしい」と胸中で語る場面は母親のほうが正しいと思いました。
母親なら不登校の娘が昼間どこかに行っているのを知ればとても心配になると思います。
喜多嶋先生の正体を知った時は感動的な気持ちになりました
あんなに勝手だった子がこんなに立派な人になったのかと思い、今の穏やかで包み込むような雰囲気は学生時代の辛い日々によってもたらされたのだなと思いました。
そちらも物流や交通が混乱していたようですね・・・
まだまだ、被害やその後の後始末やら大変な場所が多く、ニュースを見る度に、辛くなります・・・。
そして、この本ですが、
はまかぜさんも、近年、辻村さんの作品が少し苦手になっていたとは、知りませんでした。
私は「冷たい校舎・・」が、苦手意識を作ってしまった作品でした。
以前、感想アップしていたのですが、ファンの方からクレームが来まして、下書きに戻しちゃいました。
>母親なら不登校の娘が昼間どこかに行っているのを知れば
これは不安になりますよね。まさか外には出ず、部屋から別の世界に行ってるなんて、夢にも思ってないだろうし^^
分厚い本ですが、色々な年代の人に(特に若い子たちに)読んでもらえたら良いなーと思う良い本でした。